アパレル業界で私が知ってること(SCM篇3):売れた店に送るっていう考え方は実は間違いなんだよってお話。

 一応SCM構造の後半といいますか、会社から店舗へ、まあ当然その先にはお客様がいるわけですが、こっちの流れだけを取り出すのって本当は良くないというか、前半の仕入れまでの段階で起きた諸問題をここで一旦調整するみたいな感じの事を行うってのがありまして。まあ倉庫物流的な話になるんですけど、倉庫物流の話は書けばキリがなくなるってのがありまして。笑。

 ざっくり言えば、遅れて入荷したり検査で引っかかったりするのを見越して、まあ1~2か月位の余裕を見て(ここは正直商品によります。遅らせたくなくて縫製検査とか引っ掛かりそうな気配がしたら早めに仕入れますし、多少遅れてもいいかなとか縫製等が簡単だったりしたら結構ギリギリにしてもらってたりします。まあ工場や商社によっても変えてたりしますしね)入荷計画を立てます。まあ早いにせよ遅いにせよその通りに入荷する方が珍しいので、余裕を持っておくわけですね。

 とは言え店頭はできる限り適正な在庫量でっていうか、まあ余分なものは置きたくないってのがありますから、まあ売れる時期のちょっと前に店頭展開したいわけです。
 ここら辺の話は、要するに倉庫で寝かせておく必要とかがあるよってだけの話で、店舗毎に箱詰めしてから寝かしておくのが物流の作業的には良いんですけど、まあまとめて送る事ができるものは纏めたいってのがありますから、ここの纏め方とかそういうのも工夫っていうか本社側からの指示の出し方で工夫はしていました。
 まあ、一緒に送りたい商品の入荷が、どうあがいても間に合わないって場合は簡単なんですけど、ひょっとしたら間に合うかもしれないっていう場合は、まあ、決断のしどころです。ぶっちゃけケースバイケースなんですけどね。売場の状態とかそういうのにも影響しますし。そもそもシーズンインしてしまえば売場の状態ってのは毎日データとかで観察するのが重要なお仕事でもありますから、実は案外迷いません。この程度でいちいち迷うようなら仕事が進みませんからね。いや本当にシーズンインしたら決断の連続なんですよ。

 まあ、MD構成をする段階である程度決めておくものであって、ここで改めてやり直すようなものじゃないんですけど、要するに月別や週別MDに合わせて商品を適時適量で送りだすのがSCM的な管理のお話になるんですかね?

 とは言え、思ったより涼しくならないとか、急に初雪が降ったりとか、そういった気象変動による影響ってのが出てくれば計画変更します。これはこれで決断なんですが、正直こういうのもそれほど悩んだりはしません。要は気候の変動によって予定より前ブレするか後ブレするかってのは明白ですから、じゃあこれくらいみたいな量の調整だけですからね。悩んでられるかと。笑。

 そんなのより難しいのは追加投入の考え方の部分です。当時の会社的な考え方としては前週に売れたものをその週の平日中に投入するっていう一週間サイクルが基本でしたから、せいぜい一週間分送ればいいっていうのが基本的な考え方です。

 とは言うものの、単純に売れたものをリカバリーするっていう考え方って実は危険でして。
 例えば、シーズンでSKU1枚売れるか売れないかっていう計画とかのお店もあるんですよ。それが1月目に売れた場合、最初で最後の1枚がたまたまそのタイミングで売れたのか、計画よりも余計に売れた結果なのかってのはこの段階では誰にもわかりません。
 全店舗の売上規模が揃っていたらいいんですけど、売上規模がかけ離れていたりした場合には不都合が生じるんです。
 要するに、1枚売れたから1枚投入するっていう事を売上が小さい店舗でやってしまっていたら、そういう店舗に在庫が流れてしまって、本来売れるはずの店には在庫がなくなるってことになるんですよ。

 冷静に考えたら当たり前の事なんですけどね、これ。本来1枚しか売れないポテンシャルしかないところに2枚送ったのであればプロパー消化率的に50%になります。まあここまでなら普通は想定内の範囲なんですけど、その2枚のうち1枚が売れたからってもう1枚を送ってしまうと、販売ポテンシャル的に考えた場合にはやっぱり2枚余るんです。消化率は33%になります。

 しかも、その送った結果として余った1枚がどこから来ているかって言うと、本来はもっと回転率が高い店舗に送るはずだった在庫から来ているんですよ。シーズン100枚売れるからって店頭にいきなり100枚送るなんてできませんから、売れたら売れたたびに送ってますからね。

 例えばですけど、とあるSKUで、3か月の販売期間、通常店舗(A群とします)60店舗では各1枚が販売計画、投入枚数は2枚と設定するとします。また、優良店舗(B群としましょう)5店舗では各30枚が販売計画、全部は一気に送れませんから基本在庫数量を20枚としましょう。A群は本来なら売り切りで追加しません。B群は、まあ追加します。雑ですけど基本的な考え方としては普通にある話です。

 仮定として、3か月の月ごとの販売予測数比率は一定としましょう。雑ですけど細かくやっても同じような結果ですから簡単にするためにそうします。
 そうするとA群で最初の1か月で1枚売れる確率は1/3です。店舗数として20店舗ですね。

 さて、1か月目に1枚売れたんだから2か月目の最初までにもう1枚送りたくなるのが人情なわけですが、A群では売り切る予定で商品を作って送ってるわけです。B群用の予備在庫があるので送りたくなりますが、それはあくまでもB群で売る為の商品なんです。

 ちなみにA群のそもそもの販売計画合計は60枚、B群の販売計画合計は150枚です。要するにA群合計よりもB群合計の方が2.5倍も売れる確率が高いわけです。

 ここで「早く売れたから」ってな理由でA群に商品を送るって言いますか、そもそも「売れた店に売れた量だけ送る」ってのがいかにヤバい事をやっているかっていうのがうっすらとでも感じて頂ければ幸いです。

 まあ、じゃあ送らないのかって言われたら、実はケースバイケースなんです。予測通りの結果としてたまたま最初に売れたのか、予測が外れた結果として最初から売れたのかっていうのは、他の商品の販売動向や予実管理面や、まあ定性情報が取れたらその定性情報やらで修正していくんですよ。このあたりはPOSデータを読むときにPOSデータの外側のデータと照らし合わせて調整を図るのが楽しいところで、まあ腕の見せ所っていえばいいように聞こえますが、実際のところ自信がなければ情報を集めにかかるだけの話でしかありませんから、丁寧かどうかってのが実は一番重要だったりします。もちろんスキルとかもありますけど、それより丁寧さの方が上回る気がしています。

 まあ、POSデータを読むときにPOSデータ外の情報を使って読み解くってのは個人的には非常に重要な要素だと思っています。ここを理解せずにPOSを読み解こうとしたら確実に失敗しますし、ましてやAIに丸投げなんかしたら悲惨な結果しか出てこないと思いますよ?いやマジで。


 

 

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