アパレル業界で私が知ってること(企画篇)その1:生産量とかのお話。

いきなりもいきなりなんですが、商売事ですから、生産量が先にある程度決まらないと企画はちょっとできにくいです。いや、単体とかで企画はできなくもないんですけど、そもそもどれくらい作るのかが決まらないと製品化は無理です。当たり前なんですけどね。

実は、卸売りの場合、商品の生産量は展示会とかの発注量の積み上げですから企画そのものはできるっちゃできます。生産できない分は製品化しないから無駄になるってだけです。

まあ、無駄になるってだけなら百歩譲ってあきらめりゃいいだけなんですが、例えばコーディネイトが前提の商品で、どれか一つが欠けたら他の商品も売れなくなるなんて場合があったりします。生産前に気づいたらコーディネイト丸々アウトですし、製品化するまで気づかなかったら「これどうやってあわせるんやろ?」とかってなります。当然ですが売れ残ります。

そういう愉快な無駄をなるべく省くために、販売予算を組んでおきます。卸売りの場合は受注の積み上げを予算にすればいいのですが、SPA的に自分たちが店頭管理するって前提ですから、まずは販売予算を組み立てます。

まあ、販売予算をとりまとめるのもお仕事でしたから販売予算のとりまとめしてたりしたんですが、全体予算が決まってるので、営業担当とかによっては辛い予算組みとかされたら露骨に手を抜いてきます。私がいた会社なんかは多ブランド戦略でしたから、ブランド合計と担当地区合計とのマトリックスでつじつまが合わないといけませんから大変っちゃ大変です。全部に目を通している立場からすりゃちゃんとやってる人と適当な人との差が露骨すぎるんですよ。ダメなパターンは店舗にまず割り振ってからブランドに振り分けるってやり方してる場合です。一見合理的に見えるんですけど、ブランドごとの伸び代とか無視しがちなので大抵失敗します。最初から店舗別ブランド別で考えた方が結局は近道なんですよね。

よくあるパターンとしては、前年110%とか言われたら、最近売り上げが低迷している店だろうが売場が変わって面積が増えて売上があがっていようとも全店110%ってのがありました。ひどいのになると店がなくなる予定なのに予算組んでたり、前年途中でオープンした店の前半が予算ゼロ(オープン前の期間は前年実績ゼロですから110%してもゼロです)なんてのもありました。このあたりってひたすら話し合いです。まあ時間切れになる直前にもなれば「任せた♪」って投げつけられることも多かったんですけど、その頃は数字的にもある程度どうでもいいかな?的なところまできてますし、お互い意思疎通は完了してますからつじつま合わせがメインでしたしね。昔から世話になってた先輩とかが営業部長の時は「狂ってるよ?」「適当にやっといて♪」「…次からちゃんとしてくださいね」だけです。中身の確認すらなしです。まあ、部長クラスともなれば各店舗の詳細は把握しきるのが難しいのか、店舗の拡大縮小やら出退店は私の方が詳しかったってものあります。いや知らなかったら出荷できませんから。それなりに毎日見ている方が詳しくなるのは当然ではあります。

さて、月別ブランド別予算を集計して、金額とランク別の店舗数を出します。それから前年実績の内容を考慮しながら、月別シーズン別、プロパー/マークダウンの売上比率を計算しておいて、シーズン別プロパー販売金額をだしてそれを想定消化率で割り戻したら生産予定金額が出てきます。

並行して実績でのアイテムバランスも出しておきます。一応は月別をキーでだすんですけど、同時にピークや売上が低下したりしたタイミングを知りたいので、週単位で集計して、グラフ化しておきます。まあ、このあたりはピボットテーブルとかピボットグラフなしにはとてもじゃないけどやれたもんじゃありません。ですので同じ仕事している人用のExcel研修会は数度おこないました。OJTとOff-JTの間くらいのスタンスで、実データを利用してシミュレーションするっていう、わりかし実践型でやってました。組織が変更されて業務集約された際には部下にも即座に教えました。

さて、プロパー消化率の設定ですが、これはマークダウン時の消化率も考慮します。プロパーメインの販売で、マークダウンで売れないブランドってのもあるんですよ。フォーマルよりだったりしたらそういう傾向がでます。細かい話をしたらプロパーでは売れてたけどマークダウンで売れない商品ってのは結構あります。ですので、マークダウンで売れる商品はプロパー消化率は比較的低めに、マークダウンが苦手な商品はプロパー消化率を高めに設定していました。当然ですね。プロパーで勝負する場合は原価率を高めに、マークダウンで勝負する場合は原価率を低めに設定しておくことで、利益率そのものはある程度なら平準化させられます。実際はもっと細かくやってましたけど、大きくはそんな感じでした。おもしろいもので最終の残品ロスを減価償却的に組み込めば、プロパー消化率が50%だけどマークダウンでの消化率が高いブランドは黒字化しやすいですし、逆にプロパー消化率が60%でもマークダウンでの消化率が低いブランドでは案外黒字になりにくかったりもしますから、このあたりはいろいろな工夫で乗り切りました。

企画段階で特に関係者に言い続けていたのは「プロパー消化率が60%目指すってことは、40%は残してもいいって事だ」って事です。この40%は、全部が全部ではありませんが、言ってみればチャレンジ枠です。新商品を作る枠ですね。まあ、それ以外が100%消化するわけじゃありませんが、チャレンジ枠でも0%消化なんてわけでもありません。一応金額はせいぜい全体の15%程度に抑えますが、商品点数比率なら大体30%程度にはなります。ここは、浅く広くで売り切れ御免です。

もう一つ強く意識していたのは「全社合計(平均でもいいんですけど)」が持票プロパー消化率以上であればいいので、単品での良し悪しは結果論としてすなおに受け止めておくってことです。

軽めにまとめれば

1:店頭販売予算から目標消化率を加味して生産・投入予算を決定する。

2:アイテムごとの販売時期は前年データを見ながら単品ごとに事前に想定しておく。

3:プロパー/マークダウン比率がブランドによって(商品によってもですが、最低限として)異なるので、ブランドごとでプロパー消化率の目標値は決定する。

あたりが数字的な生産量の決定方法です。実発注はここに店舗ランクごとの店舗数や、サイズバランス、アイテムバランスや企画コンセプトなんかを総合的に考慮して単品の生産量を決めていきます。これはこれで面白いので次回具体的な事例とか書きながら細かく書いてみたいと思います。



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