アパレル業界で私が知ってること 余談。アパレル業界のリストラは割と大きな落とし穴があるよね?

 アパレル業界っていうか、アパレル商社の立て直しっていうのが困難な理由として、わりとみんながはまり込む大きな落とし穴があるからじゃないのかな?ってのを思ってたりします。
 いやなんで急にそんな話をし始めたかって言うと、単純にデータ分析の話を進めていく中でそういやこういう事とかがあったなーってのを思い出したからです。枝葉の部分を思い出したら幹のところも思い出した的な感じです。

 さて、アパレル商社がリストラに向かうまでの道筋そのものは割と一つしかありません。
 端的に言えば売上規模と会社規模が合致しなくなった、以上。です。
 はい、アパレル業者に限った話でもなんでもありませんね。でも、ここに至るまでの過程がアパレル業独特のものがあって、そこをきっちり認識しておかないとリストラって失敗します。まあ思い出したので書いておこうってお話です。

 そもそも売上規模と会社規模が合致しなくなったといっても、既存アパレル企業の場合、売上規模が大きくなったという理由で潰れることはありません。あんまり労働集約型ではありませんから。ですので、逆パターンの方がほとんどになります。要するに会社規模に比べて売上が低くなったって場合ですね。

 この段階でアパレル商社内には大抵2つの問題が生じています。不良在庫とプロパー消化率です。っていうか、不良在庫以外の理由でアパレルが潰れたってのはほとんど聞いたことがありませんけど。小売とかだったら不良在庫を原価未満で売り捌いて最後はB/S的に潰れたってのはあると思いますけど、結局元になるのは不良在庫の存在です。フロー的に不良在庫を抱えてたパターンですね。

 ということで、まず一つ目の落とし穴がここで生じます。新規商品のプロパー消化率を高めると同時に過年度商品をマークダウンでもなんでもいいから捌いてしまわないといけないというジレンマじみた事を両立させる必要が生じるんです。案外ここを甘く考えているリストラクチャリングは溢れまくってます。
 まあ、実のところ、この落とし穴を回避する方法論はいくつもあったりします。アウトレットモールや社販なんてのが典型例です。まあどちらもやりすぎたらやっぱりプロパー販売に影響はするんですけど、比較的影響を抑える事は可能です。
 ちなみに、私個人の経験では、過年度在庫を縮小しまくった結果、アウトレットへ流せる商品が無くなって結果的にアウトレットを閉店したなんてこともあったりで、まあ良し悪しだよなーって思ったりしたもんです。必要な時に必要なだけ捌くってのができないんですよね。苦笑。

 さて、こうやって在庫が減ったとします。そうするとすぐに次の落とし穴が待ち受けています。すぐに、です。気づいたときには落ちているって感じですから、この落とし穴にも割とハマりまくってるようです。
 さて、マークダウンだろうがなんだろうが在庫が減ったっていう事ですから、その場合は当然ですけど売上も立ってます。まあ燃やしたりしたら売上も立たないんですけど、大量に燃やしたりしたらB/S上で死にます。特別損失で計上しようが何しようが資産が減っているには違いありません。B/Sが減るって事は会社規模がさらに縮小するって事です。
 でも、B/S上で会社規模が縮小するっていう事は、売上規模に近づくって事ですから、実はそんなに悪い事でもないのも事実です。問題になるのはこういう動きをする事を計画に織り込めているかどうかってところです。
 むしろ「燃やす」っていう判断をする前提であれば、なんぼなんでも計画には組み込んでるでしょうから、リストラクチャリングの段階で「燃やす」って決めていた場合は実はあんまり問題にならなかったりします。まあその分だけ人的リストラ対象は増やさないといけないのでお勧めできませんけど。

 話がそれました。売上が立ってるってところの話ですね。まあ言ってみれば初年度は売上としてはそれなりになるんです。でもこの売上、マークダウンでの販売によってできた売上ですから、マークダウン原資っていうか、不良在庫がなくなったらここの売上はストップするんです。これが二つ目の落とし穴です。リストラした会社がわりとその後に売上不振になる理由で、実はこれは人的以外の要因です。人的要因の方が目につきやすいのでそちらに目が向きがちですが、こちらの方が重要です。わかっていればこっち側の落とし穴は比較的避けやすいっていう意味でも重要です。

 簡単に言えば、マークダウンやバーゲン商品を売ることでできていた実績を、今度はプロパー中心で売上げないといけなくなるんです。普通に考えれば、このタイミングで総売上(純売上もですが)が減少します。しまくります。ここで計画に織り込んでいなければ、売上の縮小規模が会社の縮小規模より小さくなって、結果的に売上と会社との規模感がズレますから、またリストラ?みたいな話になります。このあたりまでが2つ目の落とし穴の話ですかね。
 これも、そもそもの計画に組み込んでおけば問題がないんですけど、これを計画に組み込むためには次々年度計画も策定できていないといけません。
 いやまあ、そういいながら、実は私はこのあたり、次々年度計画を立てずにクリアしたわけですから必須かどうかで言えば必須じゃないかも知れません。でも結局該当年度の着地段階で無理やり辻褄合わせしましたからねー。「売上合計は無視してプロパー売上と粗利合計だけ見てくれ!」とかって感じです。まあそういう感じでなんとかなりました。でも、これって最初から第二プランを内緒で用意していたようなものですから、まあいろいろ言われました。結果オーライしか目指してなかったので気にしませんでしたけど。でも最初から組み込んでおきたかったなーってのが事実です。

 ここで面倒なのは、売上が下がる月がある程度決まっているって事です。要するに前年マークダウンやバーゲンで多く販売した月が下がるんです。厄介なのはアパレルの期首ってわりかし3月で、3月段階ではプロパー販売が多いので「案外いけるんじゃないかな?」的な油断が生じるんですよ。でもここで油断したら大怪我します。ちなみに4月も比較的プロパー比率が高いし、5月も…なので、ここの罠にかかっている時って、気がついたら既に6月末とかで2Q突入してるじゃん?!的な焦りもここに拍車を掛けます。ですので本来は月別計画段階でここを調整しておく必要もあります。っていうか最低でも月別にどうなるのかをイメージできていないと詰みます。まあ私の場合はこのあたりは脳内予算でしたからイメージもいいところでしたけど。説明しきるの大変だったんですよ。とか言い訳してみたり。

 要するに、思っている以上に売上は下がるから、前もってその分も会社規模を縮小しておく必要があるよって話です。これを理解していなかったらほぼ確実に落とし穴にはまります。ちなみにここにハマった場合はリストラループです。そう思えばあるあるですね。

 幸いなことに、私が渦中にあった事例では人的リストラ規模が比較的大きく、っていうかむしろそのままやってたら確実に業務が破綻するレベルで人員削減してたようです。V字回復とか目指してたんでしょうかね?苦笑。
 ただ、まあ、リストラ前とリストラ後では会社の業務コンセプト(卸売→SPA的)が変わるってのが大前提でしたので、少ない抵抗で業務全体の見直しや効率化を進める事ができましたから、結果的にはなんとかなりました。無理やりなんとかしたとも言いますが。いやよく働いた(棒)。
 まあ現場レベルで言えばどの部門も不安しかないって状態だったってのもかえって良かったのかも知れません。今までのやり方だと確実に破綻するのが見えていましたので、新しいやり方を試すしかないわけでしたから。

 まあそういうパターンもあるわけですが、この段階での売上規模に対して適正な会社規模ってのは、大抵想定以上に小さくなっています。っていうより、実務レベルを想定した上で縮小可能な規模感っていうのがありますから、大抵の場合想定が甘くなります。しかもかなり乖離します。このあたり、かなり強い認知バイアスがかかるんですかね?でもここで無理にでも想定していれば、何とかなる可能性が残ります。

 次が3つ目の落とし穴って言ってもいいかも知れません。2つ目の先にあるので案外ここでは落ちないんですけどね。ここで落ちるような場合は2つ目までに落ちてます。
 ここは簡単です。業務が回らなくなるって状態です。はい。目に見える落とし穴です。逆に言えばこれが見えてしまうが為に2つ目の落とし穴に落ちるのかも知れませんね。よくできた罠です。トホホ。


 ここんところを回避するためには、内部業務の徹底的な見直しとか、BPRだとかそういうのを含めたリストラクチャリングだとかができていれば問題にはならないんですけど、どうも見ている限りではそのあたりが甘いパターンが多そうです。ここ、大雑把に言っちゃえば、
「3人でやってたことを2人でする×10」とかじゃなくて、
「合計30人でやってたことを10人でできる仕組みを組み立てる」って感じの事を(最低でも並行で、できたら先行して)進めていける環境がなければ失敗します。

 まあ他にも落とし穴みたいなのはいっぱいあります。アパレルって工程が意外と複雑なので、どうしても縦割り式・職務別の組織構造になってたりするんですけど、こういった中でタコツボ化を防いでいたような人とかが、リストラ対象になったりしやすいってのもあります。そういう人って横連携を意識してるって事ですから、上役からの覚えがあまりよろしくないパターンが多いんですよ。隣の部署の顔色ばかり見やがって的な?目指すべき姿を考えたら間違えてるのは上司側なんですけどね。これがなかなか。
 本人側も上とのやり取りで辟易してたりしますから率先して辞める側に手をあげたりとかも多いんですよ。で、こういう横連携の必要性がわかっている人から順番に辞めたりなんてのも落とし穴だと思ってます。まあ当時の会社の場合、私が最大の厄介事っていう節もありましたから、相対的にそういうパターンは少なかったんですけどね。あいつよりマシ的な?苦笑。
 まあ、でもこのあたりになると避けようが無いって言えばそれまでなので、落とし穴っていうより崖みたいな感じですか?あるものでやるしかないんですよ、結局。ですからここで必要なのは回避方法よりも覚悟かもしれません。覚悟してましたよ実際。業務効率化で最低1年は自分の仕事なんて満足にできやしないって事とか。まあ実際には自分の仕事から効率化したから余裕ができていたってのがあったりしました。ラッキー♪

 まあ、飽きもせずダラダラと書いてみたわけですが、とりあえずなんかまとめてみると

1:プロパー販売重視+マークダウン販売促進というジレンマじみた状態
2:翌年のプロパー販売中心へのシフト段階での売上激減
3:人的リストラの結果として業務が回らなくなる

 って感じですかね?で、最後に必要なのは「なんとかする覚悟」です。いやー、覚悟って大事です。っていうか誰も覚悟してなかったらお話になりませんから。でも一人が覚悟したら案外周りも覚悟を決めてくれたりしました。そういうもんなのかもしれません。人間だよなー。苦笑。

 

 

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