アパレル業界で私が知ってること(企画篇)その3:生産量設定とか投入計画のお話

数量決めるだけなら感覚でいいんですけど、過不足無く発注するってなると無理ゲーも甚だしくなります。んなもんわかるかってやつです。

幸いにもシーズン中の消化率は100%を目指す必要はありませんので(マークダウンでも売れるし、バーゲンに出品してもいいし福袋に突っ込むのもありです)、過不足無くって言ってもせいぜいプロパー消化率範囲に収めれば成功です。60%目標なら10枚作って6枚売れたら成功ですね。むしろ10枚売れたら逆に失敗ってのが辛いところです。

って感じで敷居を下げたにも関わらず、今度は最大150店舗、しかも店の大きさも販売能力も違いまくっているっていう現実に直面しちゃいます。幸いなのは「売れてから考えりゃいいじゃん」的な枠があるって事ですね。いや単なる追加発注枠なんですけど、要するにそういう事です。ある程度はその場のアドリブでやる前提にすることで厳密にしないで良いようにしておくわけです。

発注数量を決めるときに面倒なのは最低でも「商品軸」と「時間軸」の2次元で考えないといけないってところです。ちなみに商品側から見た場合は「どの店でどれくらい展開するか」って感じで、時間軸的に見たら「いつ何枚売れると予測するか」って感じです。結局は「いつ」「どこで」「何が」「何枚」ですから2次元でも本当は不足なんですけど、4次元化したら説明困難になります(脳内では4次元的に考えてたんですけどね)。

大抵は売上レベルに応じて(予算構築の時に時間をかけまくってたのはこの為です)大雑把にランク分けします。増えれば厳密になりますが、その分扱いが手間なので、A~Dの4つ位にしてました。分けたランクの一番下の店のシーズン別予算のちょっと下(80%~90%くらいかな?)を初回投入分だと一旦仮定しときます。そうすれば初回投入に必要な数量はそのランクの店舗数を掛ければいいだけです。上位の不足分は追加投入で対応できますし。

ちなみにA~Dのランク分類では「何を商品展開するか」って方に力を入れてました。「何枚」ってのは追加投入すりゃいいだけですから。ですので、この時点で1SKUあたりの最低発注枚数は決まります。

ここで重要なのは「アイテム毎のバランスが適正」って事と「販売期間中のどの時点で切ってもそれなりに見栄えがするようにしておく」って事です。この制限のおかげで一気に難しくなります。ただ、どちらも追加投入である程度カバーできますから、この時点でも厳密性は意識しません。

この段階で一旦集計して、集計結果を確認します。生産ロット下限がある場合なんかで数量が大幅に不足していたりしたら、展開店舗を増やします。やり始めた最初はこの段階で「いややっぱ無理」ってので生産中止にすることもありましたが、数回やってりゃ感覚はつかめるようになります。っていうか数回やって懲りたから企画段階で生産ロット下限確認するようになったんですけどね。

ついでに一旦時間軸的にも確認します。月末の商品展開予想図みたいなのをランク別に作って、各月の末段階で展開されているであろう商品でアイテム抜けが無いかとか展開予定点数がそれなりかどうかとかもチェックします。これをやっとかないと、例えば「羽織物ゼロじゃん?」とかになるんですよ。最初の方はコピーして切ったり貼ったりしてましたけど、そのうちExcel君とかでやるようになりました。案外手間でもありませんし、作っておけばシーズンインした時に店頭指示とかにも使えますから無駄でもありません。ちなみに商品展開期間が1か月未満のものが無い限り、月一チェックで事足ります。最低でも前の月の残りか当月の新商品かのどちらかは残っているはずですから。

で、初回投入分がほぼ確定します。次に追加投入分をその上に積み上げるんですが、こちらではむしろ時間軸側を強く意識してました。

そういえば忘れてましたけど、週を横軸に取ったシーズン別アイテム別の販売曲線ってのをPOS実績から作ってました。1年目は大したことなかったんですけど、3年もデータが蓄積されれば、どのアイテムがどういう風に売れていくのかってのはそれなりの精度で予測できるようになります。っていうかむしろどのアイテムとどのアイテムが同じ(違う)売れ方をするのかってのが蓄積されますから、それに従ったアイテムの振り分けの精度が上がったってのが本当のところです。

どの商品のどの色を主力で売っていくかとかそういう感じのところはその前の展示会の段階で定性的には決まってますから、あとは定量化です。この時に使ってたのは、店舗別シーズン別1SKUあたりの商品回転数ですかね。Aランクでしか展開しないそれなりの商品って、販売力が強い店に集中展開ですから案外販売量は多くなります。逆に「ブランドイメージだから見せられさえすれば売れなくてもいいや♪」ってのは全店展開しますけど奥行きをつけませんから案外数量が減ります。

ここの考え方は重要で、つまり同じ150枚作るにしても、150店舗×1枚ずつなのか、15店舗×10枚なのかによって意味が全然違うって事です。これを考えるためにトップダウン的に「合計○枚を振り分ける」としないでボトムアップで「積み上げて合計○枚」ってやるわけです。
たまに、ここでAランクだけ展開の商品の方が全店展開の商品よりも発注数量が多いっていう逆転現象がおきますが、織り込み済みです。で、1つずつ「これはかなり売れる」「これは売れても枚数は少ないかな?」みたいなのを考えながら数量を決めていきます。「これは11月になったら止まるな」とかも組み込んでいきます。この時に便利なのが発注曲線で、条件を先にきめておけばシーズン合計数を自動的に月別販売枚数予測にリンクしてくれます。

あとは月別予算との矛盾がないかと、アイテムバランスの最終確認を終えたに金額的集計です。たまに絶望しますが、まあこれも数回やってたらいろいろなところで改善されて来ました。「平均単価法」とでもいいますか、アイテム別に前年にプロパーで売れた商品の単価の平均をだすだけです(売価合計÷枚数です)。平均単価が出ればざっくりですけど必要な数量がでますから、アイテムバランスが予定通りになるように調整しながら販売曲線上に置いていきます。概ね発注数量は決まりです。

さて、ここであえて無視してきたのが2点ほどありまして、「売り場面積」と「一品単価」です。売り場面積に関しては意図的に無視してました。無理ならたなはずしでしまえ♪戦術です。一品単価は、平均単価だけだしておいて、、とりあえず、枚数べーすであてはめます。当然ですが、誤差はでます。

後はちまちまとアイテムバランスを見ながら微調整です。金額的に見た場合の誤差が出る事もたまにありましたが、さすがにここまで来たら地道に調整です。幸か不幸か、発注の妥当性をレポートするのは私ですから、この程度えやってたら後は多少の誤差は気にしてませんでした。どうせ採算性を後から計算しなおすのが私ですから、誤差のチェックも私の仕事で、予算からの乖離が許容範囲かどうかの判断も私でしたから(とは言え適当って意味じゃありません。アンダーは良いけどオーバーはダメ、とか±3%ならいいか、とかそういう感じでブランド・シーズン毎に考えてました)。

細かいところをいちいち突くと文章が手遅れなレベルで長くなりますから(いやもう手遅れか。トホホ)、大雑把にはこういう感じだったって感じで認識していただければ。

実際はサイズが多い商品を扱っていましたから、サイズ別バランスなんかもここに組み込んでいきます。つじつま合わせな面は否定しませんが、現実に即したつじつま合わせなので、予算からの多少の誤差は「まあいいか♪」でした。当てもんの世界ですからね。細かい事は気にしてたら負けです。まあこれでも充分に細かかったのですけど。ちなみにどの商品のどのSKUの発注数はすべて説明できるようにはしていたってのがひそかな自慢です。

正直、ここは私の方法論ですので、異論はいっぱい出てくるとおもってます。異論大歓迎ですので、どしどし異論をだしてくださったらうれしくおもってたりしてます。

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