第二回 Gt ヒロト |ヒロトの秘密基地「序章 僕とエフェクターの秘密〜ディレイ(Delay)〜前編」

ギターを弾いたことがない人のなかには、僕のファンでも「ギターって、そもそもなんで機材が必要なの?」、「アンプだけあれば弾けそうなのに、なんであんなにたくさんの機材を並べてるんだろう?」と思ってる人は、たくさんいるんじゃないでしょうか。ここでは、なんでこんな面倒な機材を使って僕はギターを弾いているのか。その秘密を少しづつ種明かししていこうと思います。
では、なぜこんな面倒な機材をたくさん使う必要があるのかーー。じつは、機材一つとっても、すべて理由があって使ってるんです。自分はまずギタリストとして、音楽家として活動していくにあたって“風景”とか“匂い”、“空気”、そのときに感じた“感情”を音に置き換え、ギターで再生して表現していきたいんですね。録音芸術であるレコーディングやライブにおいても、自分はそこに一番重きをおいてこれまで創作活動をしてきました。そもそも自分は機材が元々大好きでこれらを使っている訳ではなく、その景色や感情を作るための方法として必要だから、こういうものを使ってるんです。なので、僕があの曲でああいうフレーズを弾いたときは、どういう気分だったのか。なんでああいう音をチョイスして弾いたのか。そういうことを詳しく知ってもらうことで、より僕らの曲への理解が深まるんじゃないかと感じたのでこの連載をやろうと思いました。
人ってね、知ると広がる世界が絶対にあると思うんですよ。それが、この連載を通して増えてくれたらいいなというのが僕の願望です。
音楽って、現実世界を抽象化したものだと思うんですよ。現実世界で見たり、感じたなにかを音に置き換えたものが音楽だとすると。例えば、いいご飯屋さん。フレンチの3つ星のレストランとかに行くと、このサラダに使われている食材は〇〇産で生産者の人はどんな人で、この食材をどんな風に育てたのかというストーリーを説明してくれたりしますね。そのストーリーを知った上でサラダを食べるとありがたみを感じるし、より深みをもってその素材の味を感じながら食事の時間を楽しめるんですね。僕がここでやりたいのは、その音楽版です。
僕がストーリーを語る上で重要なのがこのエフェクターたちです。まずこのエフェクターボードを見て下さい。

エフェクトボード全体

オカルトみたいに聞こえちゃうかもしれないけど、このなかのエフェクター1 つとっても、なかの回路は同じでも箱のサイズが違うというだけで、音が変わっちゃうんですよ。大きいほうがなぜかよりダイナミックで、余裕がある音がするんです。そういったことやテクニカルな事を専門的且つ分かり易く検証しているのが『全国エフェクターボード盆栽協会』(@fx_board_bonsai)で。これは、FREE THE TONEの林幸宏さん(数多くのトッププロの機材システムを手がけている)が中心となってやっているもので、僕はたまたまそのスタートアップから参加させてもらっていて。エフェクターのことをより詳しく、専門的に知りたいなと思った人はそこを見てください。僕はもっと、その音の背景にあるストーリーを解説して、僕らの楽曲への理解を深めてもらおうかなと思っています。今回は初回なので、まずは僕が初めてエフェクターを使ったときの話をしますね。音源を聴いてたら、ギターアンプ直で鳴らした音では絶対に鳴らない音が聴こえてきたとき「これ、どうやって鳴らしてるんだろう?」と思って。そこから、当時はとにかく専門誌を読みあさって探していったんですね。その音を。それで、こんなものが必要なんだ、こういう設定をするんだというのがどんどん分かっていって。実際に自分がその音を出せたときは、めちゃめちゃ感動しました。そうして、いまではこれらのエフェクターたちが、自分の頭のなかに見えている風景とか「冷たい」とか「綺麗だ」というメッセージを音に変換してくれる僕の大切な“翻訳機”になりました。簡単にいうと、エレキギターからアンプ直だと、あくまで僕の感覚ですけど、そこで描けるものは、感情でいうと単純な喜怒哀楽。その4つしか変化はつけられないんです。それが、このボードのなかにあるエフェクターを駆使していくと、その4つの感情、情景の’’間’’にある感情も表現していけるんですよ。どういう風に怒っているのか、どんな景色を見たから喜んでいるのかというように、その感情の背景に流れるストーリーが説明できる。それがエフェクターなんですよね。僕自身、音源を聴きながらなんでこういう音が鳴っているのか、どうしてそんな音になったのか。そのストーリーを知りたくなるタイプなんですけど。そうして、それを紐解いて分かったときに「なるほど」と感動することが何度もあって。それを知る前と知ってからとでは、同じ音源を聴いても、聴き方、味わい方が変わってくるんですよ。それを、この連載を通してみなさんにも体験してもらえたらなと思ってます。
僕の翻訳機となる機材のなかでも、特に“ディレイ”というエフェクターは自分的には感情がすごく表現しやすい機材なんですね。
自分が風景とか温度を表現するにあたって、一番そこに密接に関わってくる空間系のエフェクター。それが、このディレイというものです。

ディレイ

ディレイとは遅延という意味で、ここで「あっ」といったら、それが「あっ、あっ、あっ、あっ」とやまびこのようにだんだん遅れて聴こえてくる。それを、ディレイというエフェクターが持つ機能を使えば、機械的に再現できるんです。まずギターの生音、原音というんですけど。原音をこのエフェクターに取り込んで、返ってくる音の大きさ、フィードバック(回数)を設定していくんですね。これが、基本の操作です。まずはこの設定で原音と聴き比べてみましょう)

その他にも、フィルターといって音を曇らせたりクリアにしたりする設定があるんですね。
それがこんな感じ。

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