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轟轟戦隊ボウケンジャー Task.1『魔神の心臓』評価:★★★★

評価は、基本的に以下の10段階です。
・★★★★★…最高。大傑作。愛する。面白い超えて芸術の域(5点)。
・★★★★…大満足。傑作。大好き。凄く面白い(4点)
・★★★+…満足。名作。好き。かなり面白い(3.5点)
・★★★…平均より上。秀作。好感。中々面白い(3点)
・★★+…及第点。佳作。どちらかと云えば好き。まぁ面白い(2.5点)
・★★…普通。凡作。特に可もなく不可もなく(2点)
・★+微妙。凡作未満。カス。どちらかと云えば嫌い。つまらない(1.5点)
・★…難あり。駄作。カス以下。嫌悪感。かなりつまらない(1点)
・+…最低。大駄作。クズ。嫌い。マジでつまらない(0点)
・×…最悪。超駄作。ゴミ。大嫌い。つまらない以前の問題(-1点)

<放送データ及び評価>

Task.1「魔神の心臓」2006年2月19日放送
脚本:會川昇
監督:諸田敏
評価:★★★★(4点)

會川昇の事実上唯一のメインライター特撮作品

『スーパー戦隊』ってこんなに面白かったっけ!?

 最近『ニンニンジャー』を視聴しているせいか、初めて視聴した時以上に凄く面白く感じた(笑)
 初めて見た時はもう少し評価が低かったが、何度も見直すとこれで良いと思えるような第1話であった。

 脚本家は會川昇氏。
『ウルトラマンG』でシリーズ構成を務めた実績が印象深い。
 ただし、『ウルトラマンG』はオーストラリアとの合作で、脚本を実際に執筆したのは現地の脚本家のテリー・ラーセン氏であったから、會川先生の力だけではなかった。吹き替え版では元の英語の台詞から大きく変更して、日本独自の台詞に変更されていたりするなど、決して會川先生の力無しには出来上がらなかったのも事実だが、英語圏のドラマのテンポの良さや台詞の面白さもあるため、會川先生だけのシリーズ構成とも言い難い。
 この辺りは微妙なところで、筆者は『ウルトラマンG』こそ平成ウルトラ最高傑作とは考えてはいるものの、それは日本よりシナリオも演技も遥かにレベルが高い海外の協力を得られたから出来上がったものであり、日本人が純粋に作り上げた作品とは言い難いのも事実だ。
『仮面ライダー剣』はメインライターを務めて盛り返したが、参加したのはストーリーの後半からだった。
『仮面ライダーディケイド』は13話で降板させられている。
 実質的に、會川先生がメインライターを最初から最後まで務めあげた特撮作品は、この『轟轟戦隊ボウケンジャー』だけである。
 そういう意味でも、非常に貴重な特撮作品と云える。

ボウケンジャーの魅力①戦隊が組織される必然性

 さて、筆者は幼少の頃に視聴した『ウルトラマンG』から、會川昇先生のファンなのだが、會川昇先生の脚本の魅力の一つが『必然性』である。

 まず、30作品記念のロゴを出した後、数多くの写真と共に、

ナレーション「いつの時代も、未知の世界を求めて旅立つ者が居る。人は彼らを“冒険者”と呼んだ」

 その後、合体したゴーゴービークルと運転席で変身しているボウケンジャー達の映像と共にナレーションが流れる。

ナレーション「サージェス財団は、世界各地で失われかけている貴重な宝を集める民間団体だ。“宝”とは、古代文明の遺物、沈没船や秘境に残された財宝、そして絶滅寸前の動物まで、さまざまである。中でも、現代の科学水準を遥かに超えた危険な力を持つ秘宝を“プレシャス”と呼ぶ。サージェスは“プレシャス”を見つけ出し、守り抜く、秘密チームを組織した」

 そして、『轟轟戦隊ボウケンジャー』のタイトルコールとOPが始まる。

 ナレーションがあったのは僅か約45秒間だが、このナレーションだけで『ボウケンジャー』が組織された必然性が分かる。
『轟轟戦隊ボウケンジャー』には「サージェス」と云う上位組織があって、サージェスがプレシャスを見つけ出して守り抜くためにチームを組織したとはっきりと明言されている。

 チームが組織される必然性を番組が説明出来ていない戦隊は意外と多い。

 営利団体の一企業でしかないはずのスクラッチが何故戦隊を組織したのか一切説明がない『獣拳戦隊ゲキレンジャー』だと、逆に戦隊をサポートするために営利団体のスクラッチが組織されたかのような印象さえ受ける。

 あのぉ、営利団体の大企業を創るのってそんなに簡単なんでしょうか?

 これはつまり、戦隊が組織される必然性を番組側がちゃんと視聴者を説得出来ていないことを意味する。

何故、鳥人戦隊ジェットマンは組織されたのか?

 例えば『鳥人戦隊ジェットマン』は歴代でも屈指の「不朽の名作」だとは思うものの、『ボウケンジャー』と比べて、設定として一つだけ弱い点は「何故、ジェットマンが組織されたのか」その必然性が無いことだ。
 地球防衛軍『スカイフォース』が地球の平和を保っていて、小田切長官が天堂竜達の活躍を見て「Jプロジェクト要員」として推薦したいと考えて、天堂竜は「バードニックウェーブ」を浴びせられてジェットマンに変身出来るようになった。
 しかし「Jプロジェクト」とは一体何だったのか?
 何故そのようなプロジェクトが必要とされたのか?

 その理由は、第一話の段階では全く明かされることは無かったばかりか、番組を最後まで見ても、結局スカイフォースが何故「ジェットマン」を組織しようとしたのか、その動機が分かることは無かった。
 都合良く(悪く?)次元船団バイラムが侵略しに来たから、戦う必然性も生まれたのだが、もしバイラムが侵略しに来なかったら、スカイフォースは何の必然性や緊急性も無いまま「鳥人戦隊」を組織していたことになる。
 戦争しているわけでもなく、侵略者も居ないのに、無意味に武装力を強くしようとしていたスカイフォースは、核実験を繰り返して核武装化を進めたド・ゴール政権下のフランスのようだが、『ジェットマン』の場合は、SF戦隊の限界が当時露呈しつつあったことも伺える

 番組では天堂竜がバードニックウェーブを浴びた後、次元船団バイラムの襲撃を受け、バードニックウェーブを浴びた残りの4人を探す展開になる。
 この展開は、本来不自然である。
 何故ならバードニックウェーブを浴びた4人を探すより、スカイフォースの生き残りの中から再度メンバーを急遽選出し直し、新しく『鳥人戦隊』を組織する方が自然だからだ。
 そんなこと言ったら、スカイフォースは全滅したと反論してくるファンも居るだろうが、その反論自体も不可能だ。
 第40話『命令! 戦隊交代せよ』では、民間人出身の現ジェットマン達を正規の軍人からなるネオジェットマン達に交代させようとする一条総司令が登場する。
 バードニックウェーブを偶然浴びた4人の民間人に参画を求めるよりも、スカイフォースの生き残りや地球防衛軍、日本の自衛隊員辺りから、新しくメンバーを募った方がよっぽど合理的だろう。
 何故ならば、また新しいメンバー達にバードニックウェーブを浴びせればそれで済む話だからだ。
 一条総司令は、番組の中では小悪党として描かれたが、その考え方自体は理路整然としていて間違っていない。
 その上『バードニックウェーブ』が無ければ次元船団バイラムと戦えないと云った設定があるわけでもなく、普通の通常兵器で戦えばそれで済む話であるのも痛い。

 このような破綻が生まれてしまった原因は、『鳥人戦隊ジェットマン』がSF戦隊だったからに他ならない。
 SFとは、サイエンス・フィクションである。
 サイエンス・フィクションとはどういうことかと言ったら、経済力や国力などの差が無ければ、基本的に皆同じ技術を使えるということである。
 例えば、僕だけスマートフォンやインターネットを使えるが、他の人達は使えないなんてことは有り得ない。僕が使えると云うことは、他の人だって同じ科学技術を使えるのである。何故なら科学的に可能だからだ。科学的に可能な技術なのに、一部の人間しか使えないって現象は有り得にくい。
 この常識の下で書かれなければいけないのがSFである。
 つまり、サイエンス・フィクションで『バードニックウェーブ』なる物を出したなら、他の組織だって当然同じ物を開発出来なければ不自然なのだ。『スカイフォース』が全滅したとしても、他の国家や軍事組織でも「バードニックウェーブ」を造り出すことは原理的には可能なのだから、やっぱり、次元船団バイラムに対抗するために、軍人を再度集めてバードニックウェーブを浴びせてジェットマンにした方がどう考えても自然である。
「この5人でなければ変身出来ない」と云った設定はSFだと破綻し易い
 逆に「ファンタジー作品」の場合、現代科学では不可能なテクノロジーが使われているために、「この5人でなければ変身出来ない」と云った設定を採用しても作品が破綻しづらい。

『鳥人戦隊ジェットマン』の放送後、スーパー戦隊初のファンタジー作品と呼べる『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が始まった。
 スーパー戦隊も数多く作品を創ってきて、いよいよSFの枠組みだけでは創作することが難しくなった時代性を感じ取ることが出来る。

ボウケンジャーの魅力②魅力的なボウケンジャー

 まだ番組が始まってから1分も経っていない部分だけで、こんな長文まで書かせるほど密度が濃い『轟轟戦隊ボウケンジャー』だが、欠かすことが出来ない魅力は、やはりキャラクターである。

 まず筆者が歴代スーパー戦隊イエローの中で一番好きなボウケンイエローこと間宮菜月(中村知世)である。
 この子を演じた中村知世さんは筆者と同い年。人気になって欲しかったが大成出来ず、芸能界を引退している。後年は仕事や人生について悩みを打ち明けていることもあり、中村さんとしても芸能活動は不本意に終わったが、中村さんにとって『轟轟戦隊ボウケンジャー』に出演できたことは、きっとこの上無いプレシャスであったと信じている。

 このボウケンイエローを演じていた時の中村知世さんは本当に可愛くて、キャラクターも朗らかで実に愛らしい。
 疑似小倉優子とも呼べるような天然キャラで、仲間の足を引っ張ったり、敵に怖がったりするか弱い少女だが、実は記憶喪失で、自分が何者なのかを追い求めている『仮面ライダーアギト』の津上翔一君のようなキャラクターであり、「強き冒険者」と云う口上も決して間違ってはいない信念の強さを見せることもある。
 また、カースに襲われて溶岩の崖下へ転落した真墨を本気で心配している様子も見せており、真墨を本気で信用していたり、優しい気持ちを持っていたりする面も伺わせる。
 彼女の天真爛漫なキャラクターは、歴代のスーパー戦隊でも屈指の知性を誇るボウケンジャーの下手すればビジネスライクな陰気臭い雰囲気を明るくしてくれる清涼剤であり、一番親しみ易いメンバーと思われる。

 この第1話では真墨がボウケンジャーを裏切って立ち去ろうとした際に、「またトレジャーハンターに戻るの?」と言い、長い間コンビを組んできて当然自分に随いて来ると思っていた真墨を動揺させていた。
 レッドに一旦救助された後、新人は待機させた方が良いと制するボウケンピンクを無視して、ボウケンブラックと共に遺跡に向かっていたので宝探しそのものが嫌いというわけではないだろう。
 だが不安定なトレジャーハンターと違い、安定した大企業のサージェスや巨大なゴーゴービークルを駆れるボウケンジャーの存在を知ってしまうと、自分の過去を知る上でも戦隊に残っていたい気持ちが強かったようだ。

 次に、ボウケンブラックこと伊能真墨(齋藤ヤスカ)。
 ブラックだが、『ボウケンジャー』においては事実上の主人公である。
 筆者の友人のクロサキさんは、自分と通ずるところがあると語っていた。

 真墨はボウケンジャーに入ったこと自体がブラフであり、本当はボウケンレッドこと明石暁に挑戦してプレシャスを横取りし、高値で売り付けようとしていたトレジャーハンターだった。最上蒼太が「元泥棒さん」とおちょくっていたのも納得である。
 コードネーム(色)で呼ばれることを嫌ったり、ややガサツでテキトーなところもあったりするが、実は誰よりも仲間思いな好人物であったことが徐々に明かされていく。意外と根は良い奴と言うのは、この第一話でも既に明らかになっていて、そのまま盗んで立ち去って良いようなアクセルラーを律儀にチーフに向かって投げて返していることからもそれが伺える。
 ボウケンジャーに残った理由はボウケンレッド(明石暁)を超えることを目標にしたからだが、このことが彼を後に苦しめることになる。

 三番目に紹介するのは、『チャラ男兼孤高の男担当』の最上蒼太である。

 彼はミッション中も「そう、そう、そうた」などと軽口を叩き、男の真墨相手には「元泥棒さん」とおちょくる。後の話では多数の女性をはべらかす手越祐也もビックリのチャラ男ぶりを発揮するが、そのチャラさとは裏腹に元スパイとして重い過去を持っていたり、他者を寄せ付けないような孤高の男を演じて見せたり、振り幅が広いキャラクターである。
 他の女性達には基本チャラさを発揮するが、愚直なさくら姐さん相手には真面目な男ぶりを見せたり、相手によって自分のキャラクターを使い分ける変幻自在ぶりで、なんとなくホストを思わせる。

 だが演じている三上真史さんはチャラさとは無縁の真面目な人物と聞く。

 最後に紹介するのはボウケンピンクこと西堀さくらである。
 真墨が「さくら姐さん」と呼んで恐れている、真面目の上に糞が附くほど実直な仕事人間の女性で「ミッション中はコードネームです!」と言ったり基本的に丁寧語でしか話さなかったりする。
 ブラックとピンクがゴードムの心臓を探しに海中へ泳いで出て行くと、溜め息を吐いて「まだテスト入隊に反対か?」とボウケンレッドに尋ねられていた。どうやら彼女は二人の能力を信用していなかったようだ。

ボウケンジャーの魅力③チーフがカッコ良過ぎる

 しかしボウケンジャーの魅力と言ったら、やはりボウケンレッド=明石暁を欠かすことは出来ないだろう。
「チーフ」と呼ばれて親しまれている彼だが『轟轟戦隊ボウケンジャー』は彼を好きになれるか否かに掛かっていると言っても過言ではない。

 何故ならばチーフは「頼れるリーダー兼問題児」と云うキャラクターで、會川昇先生をそのまま具現化したような人物だからだ。

 そのため、好き嫌いが非常に分かれるレッドであり、好きな人は大好きになれるが、苦手な人はとことん忌み嫌うキャラクターだ。
 誰に見せても嫌う人は少ないだろう、優等生な『星獣戦隊ギンガマン』のギンガレッド=リョウマや『未来戦隊タイムレンジャー』のタイムレッド=浅見達也などと違って、非常に人を選ぶレッドである。

 冒険をこよなく愛し、自分を裏切るような奴まで仲間に引き入れてしまう懐の深さ、頭の良さ、圧倒的な強さを誇る反面、彼から「冒険」を取ったら何も残らなくなってしまうような危うさ、誰も納得出来ない独断専行ぷりを発揮したりと云った危険な面も併せ持つ。

 そんなチーフだが、筆者は好きである。どうしようもない部分も多いが、これほどの破壊力と印象深いレッドが魅力的でないはずがない。

ボウケンジャーの魅力④メカニックの素晴らしさ

 ボウケンジャーの魅力と云ったら、ダイボウケン(ゴーゴービークル)の存在も欠かせない。

 色合いなどは販促の関係上、どうしても派手な色彩にせざるを得ないが、あくまでも絵であるアニメとは違って、特撮は玩具の質感と番組での質感がほとんど一致するので、合体する時の感動が段違いである。

 さまざまな乗り物が合体してロボットになるわけだが、レッドの乗り物がダンプカーと言うのも意外性があって良い。
 このダンプカーは、ロボットに合体する時に荷台が足に変形するのだが、単体だと触手のように後方に伸びて上下移動が出来て、トラップに捕まったボウケンブラックとイエローを救助していた。
 この第一話では全てのゴーゴービークルに見せ場が用意されていて、これを駆使して、冒険を進めていく面白さがある。

『ボウケンジャー』の魅力の一つが変身道具のアクセルラーである。
 ダイヤルボタンの上部に載ったディスプレイ部分が回転するリボルバー式携帯電話の底面に車輪を付けた変身道具で、劇中でも連絡を取り合うだけでなくプレシャス反応を調べたり、隠し扉になっていることを菜月が突き止めたりしていた。
 変身する際は下部の車輪を回すことで起動するのだが、これはバラバラになりやすいアクションと変身シーンとを両立させることに成功している。
 Task.15「水の都」で、リュウオーンが振り下ろした剣をチーフがアクセルラーの車輪で受け止め、上部に突き上げて剣を跳ね返しながら変身していたのはとてもカッコ良くて印象深い。

変則的かつ王道の第1話

 さて、第1話の話に戻ると、注目すべき点を列挙すると、
・ヒーローが変身した状態で話を始めていること。
・変身前の顔出しの役者が登場するのは話が始まってから約10分後。
・レッドに「不滅の牙」のトレージャーハンター時代があったこと。
・このことを知っていたのは本人以外だと真墨だけだったこと。
・ゴードム文明を復活させたのがボウケンジャー自身であったこと。
・ゴードム文明のプレシャスが他にもあること。
・ジャリュウ一族が出現したり、敵組織が他にも多く登場すること。

 太字の部分に関して會川昇先生自身も反論しているが、第2話ではゴードム文明以外にもネガティブシンジケートが幾つもあることが判明するのでそれほど気にする必要は無い。
 別にボウケンジャーがゴードム文明を復活させなくても、ネガティブは他にいるわけでマッチポンプになっているわけではない。

<総評>

 評価は、★★★★で大満足。
 劇伴のサウンドトラックも最高の出来で、ニュース番組でもよく使われていた。
 メカニックも素晴らしいし、俳優達の演技力も高く、キャラも魅力的。
 最高の出来の第1話だったと思っています。

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