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轟轟戦隊ボウケンジャー Task.2『竜の略奪者』評価:★★★★

評価は、基本的に以下の10段階です。
・★★★★★…最高。大傑作。愛する。面白い超えて芸術の域(5点)。
・★★★★…大満足。傑作。大好き。凄く面白い(4点)
・★★★+…満足。名作。好き。かなり面白い(3.5点)
・★★★…平均より上。秀作。好感。中々面白い(3点)
・★★+…及第点。佳作。どちらかと云えば好き。まぁ面白い(2.5点)
・★★…普通。凡作。特に可もなく不可もなく(2点)
・★+微妙。凡作未満。カス。どちらかと云えば嫌い。つまらない(1.5点)
・★…難あり。駄作。カス以下。嫌悪感。かなりつまらない(1点)
・+…最低。大駄作。クズ。嫌い。マジでつまらない(0点)
・×…最悪。超駄作。ゴミ。大嫌い。つまらない以前の問題(-1点)

<放送データ及び評価>

Task.2「竜の略奪者」2006年2月26日放送
脚本:會川昇
監督:諸田敏
評価:★★★★(4点)

別の敵組織、リュウオーン率いるジャリュウ一族

 ゴードム文明のガジャが巨大な竜に喰われた場面から始まったが、

真墨「何だ、あの恐竜は? ガジャをさらっていきやがった!?」
さくら姐さん「あれは、ネガティブシンジケート」
菜月「ネガ、ティブ?」
蒼太「ああ。プレシャスを悪用し、世界を我が物にしようとする者達のことさ」
チーフ「どうやらこのプレシャスを探していたのは、俺達だけじゃなかったらしいな」

 前回は、ゴードム文明を復活させたのがボウケンジャー自身じゃないかと批判する意見があったことを紹介したが、仮にゴードム文明が無かったとしても他に悪党は幾らでもいることがこの段階で明らかにされている。

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 さて、ジャリュウ一族を率いるリュウオーンだが、部下達から「偉大なる命の創造者、リュウオーン陛下」と呼ばれていて、同時期に販売されていたカードゲーム『レンジャーズストライク』には『創造王リュウオーン』なるカードも販売されていた。
 声優は森田順平さんで、普段は透き通った綺麗な声で上品に喋るのだが、感情が高ぶっている時は粗暴な口調を表すなど、素晴らしい演技力を発揮して感情の起伏が激しいリュウオーンを好演している。

上位組織サージェスとネガティブシンジケート

 冒険を終えて帰還した明石暁(ボウケンレッド)は上司の牧野さんに前回手に入れたゴードムの心臓を「本部に送ってくれ」と言って手渡す。
 また、サージェスミュージアムと呼ばれる博物館が運営されていることが明らかになっている。民間団体と言われているが、日本国の中でもかなりの知名度や存在感を示しているのが分かる。

 さて、博物館を探索していた菜月はさくら姐さんに怒られると、サロンと呼ばれる自分達の待機場所に連れて行かれる。
 真墨は整理出来ていない自分の荷物を漁って「恐竜や伝説の動物のクローンを使い、プレシャスを強奪するネガティブ」と呟いて調べていると、基地のデータにアクセス出来る蒼太がタブレットを使って、前回のネガティブがジャリュウ一族であると突き止める。

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 タブレットの画面を見ると「ジャリュウ一族」の他に「レッド・ダーク」「クロイム・ギア」「エゴル・ゴズル」「ジャンシンガー・一族」「コボルト帝国」「バズラード文明」「灰十字軍」「ゾーンマグマ」などのネガティブが居ることが確認出来る。
 この辺りの名前は過去のシリーズに元ネタがあるので自分で調べてみると面白いだろう。
 それよりも重要なのは、実際はこの他に幾つもネガティブシンジケートがいるのが分かることだ。
『轟轟戦隊ボウケンジャー』の劇中に出てくるネガティブ達は、「ゴードム文明」「ジャリュウ一族」「ダークシャドウ」「クエスター(アシュ)」の四組織だが、ストーリーにされていないネガティブともボウケンジャー達は常に戦っていることが伺える。
 蒼太はネガティブの一覧をしばらく検索していて「これだ」と言って見つけていたので、ボウケンジャーが実際に戦っているネガティブは少なくとも二桁に到達している。下手したら100個近くはあるかもしれない。
 だから前回ボウケンジャーがゴードム文明を復活させたことを批判するのは少々お門違いと云えるだろう。ゴードム文明以外にも、ネガティブなんて幾らでも居るからである。
 また劇中には出てこなかったが、世間一般の人達がゴードム文明のようなネガティブを復活させてしまい、その後始末をボウケンジャーがやっているようなことも当然発生しているに違いない。

仕事モードの4人とお遊びの菜月

 さて、自分が信用されていないことに不貞腐れている真墨の下へチーフが戻ってくる。
 蒼太は前回のネガティブがジャリュウ一族であると報告すると、同じタイミングでミスターボイスと呼ばれるアニメーションがモニターに表示されてボウケンジャーに指示を下す。

ミスターボイス「おはよう! ボウケンジャー!」
チーフ「ミスターボイス」
菜月「(ミスターボイスに感激して)わあああああああああん!」
ミスターボイス「プレシャスの回収スンバラしい! だけど、今回のと対になるもう一つゴードムの秘宝があるらしいんだ」
真墨「そうか、ジャリュウ一族はその道案内にガジャをさらったのか」
チーフ「うむ」
さくら姐さん「間違いありませんね」
(中略)
蒼太「まずいな。既にジャリュウ一族がそこに向かっているんじゃないかな」


 この時、子供に等しい菜月はアニメーションのミスターボイスが可愛らしくて笑顔を浮かべるが、他の4人は完全に仕事モード。
 ボウケンジャーのサブタイトルがTask(仕事)で数えられているのがよく分かる場面である。
 菜月みたいな天然キャラの女の子が居なかったら、ボウケンジャーの職場は本当に仕事をしているだけのつまらない環境になっているだろう。
 そういう意味で、お堅い雰囲気を明るくしてくれる菜月が筆者は好きだ。

 真墨と菜月が我先に出動しようとすると、さくら姐さんはチーフを静止。あまりに未熟な菜月を気遣ってネガティブとの直接戦闘は危険すぎると進言し、蒼太も菜月の素性に謎が多過ぎることや真墨も信用出来ないと不安を口にする。
 それに対してチーフは、

チーフ「面白いだろ! そういうのが居ても!」

 全く大らかと言うか良く言えば器量の大きい人物だが、悪く言えば職場の部下達が不安を口にしているのにそれに無頓着な無能な上司とも言える(笑)
 チーフの好き嫌いが別れるのがよく分かる、良いやり取りである。

ゴーゴービークルを大切にするボウケンジャー

 さて、牧野先生からボウケンドライバーを受け取り、ゴーゴービークルに乗り込んでアメリカへ出発して行くボウケンジャー。
 日本だけに留まらず、世界を旅するスケールの大きさが良い。
 彼らは既に変身していて、それぞれのビークルに呼び掛ける。

ボウケンレッド「ゴーゴーダンプ」
ボウケンブラック「行くぞ、ゴーゴーフォーミュラ」
ボウケンブルー「良い子だ、ゴーゴージャイロ」
ボウケンイエロー「よろしく、ゴーゴードーザー」
ボウケンピンク「頼みます、ゴーゴーマリン」

 チーフは名前しか言わなかったが、他の4人は自分のゴーゴービークルを大切にしていることがよく分かる台詞で好きだ。
 特に、自分のマシンを女の子のように扱う蒼太やハンドルをポンと叩いた菜月の仕草が可愛らしい。

 筆者は『マジンガーZ』や『ガンダム』などのような「自分の意思を持たない搭乗型ロボット」に乗り込む際、その人物がどれだけその乗り物を大切にしているかを結構重視している。
 例えば、『電撃戦隊チェンジマン』が初めてチェンジロボに搭乗した際、

チェンジドラゴン「頼むぞ、チェンジロボ!」

 と言っていたが、その一言があるか無いかでその戦隊の印象が全然違う。
 筆者は昭和のスーパー戦隊の中では『チェンジマン』が一番好きだ。

 だから『機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)』は名作だとは認めるものの、劇中の登場人物達は自分が搭乗するモビルスーツを大切にしているような台詞が出て来ないので、その点は自分が乗るモビルスーツへの愛着を口にするようになった後年のガンダムシリーズの方が好きである。

 その後、近付いてきたボウケンジャーに気付いて、リュウオーンは大邪竜ドルドを出撃させて、ボウケンジャーもゴーゴービークルをダイボウケンに早速合体させる。
 またダイボウケンは大邪竜ドルドに必殺技を浴びせるが、それでもドルドは生きていて、自爆装置を起動して特攻を図ろうとする。すぐに敵の真意を察したボウケンジャーは冷静にダイボウケンの足を使ってドルドを蹴り投げて遠くに放り飛ばすことで難を逃れた。
 等身大戦⇒巨大戦のやり取りが基本のスーパー戦隊では珍しい構成だ。

 ドルドを必殺剣で倒した後、ポーズを決めていたせいでドルドから反撃を許したダイボウケン(ボウケンジャー)は見ていて少しアホらしかった。

犠牲を厭わぬリュウオーンと犠牲を嫌うチーフ

 ボウケンジャーがドルドの残骸を調べていると、チーフは妙に熱く語る。

チーフ「部下を平然と見殺しにし、自分だけが宝を手に入れる。ネガティブであろうとなかろうと許せん!」

 この台詞は、ライバル関係となるチーフやリュウオーンのキャラクターの違いや後の話の伏線にもなっているが、もう一つは『スーパー戦隊』シリーズが、実は「自己犠牲との戦い」だったことも影響している。

『秘密戦隊ゴレンジャー』の歌詞には「とっくに捨てた この命」と云うフレーズが出てくるが、『スーパー戦隊シリーズ』は当初は地球の平和のために犠牲も厭わないと云うのが基本だった。
『電撃戦隊チェンジマン』のEDも「5人の戦士に明日は要らない」なんて歌詞が出てきて、最終回でも「死ぬ時は一緒だ!」とチェンジグリフォンが言っていた。

 これは『帰ってきたウルトラマン』で犬や少年を庇って自己犠牲で死んだ郷秀樹と云うキャラクターを是とした上原正三先生が、『ゴレンジャー』のメインライターを務めていた影響も非常に大きいと考えていて、その後輩の曽田博久先生もそんな上原先生の仕事ぶりを見たのだから、作風にも大いに影響を受けただろう。

 しかし上原先生も離れてしばらく経って、『超獣戦隊ライブマン』の頃になると「自己犠牲っておかしくね?」って考え方が主流になっていき、平成以降のシリーズは完全に否定するようになっていく。

 犠牲を厭わぬリュウオーンと犠牲を許さないチーフの関係は、『スーパー戦隊シリーズ』が辿ってきた『自己犠牲からの脱却』の歴史を知っているとより深く楽しむことが出来るだろう。

正体不明の記憶喪失の菜月(ボウケンイエロー)

 菜月は自分の正体を知っているんじゃないかと不用意にジャリュウ一族の一味と接触したために、さくら姐さんや蒼太に疑われてしまう。

 記憶喪失キャラと云ったら、『仮面ライダーアギト』の津上翔一君が挙げられるが、筆者は菜月の方が好きである。
 理由は、津上翔一君は仮に仮面ライダーアギトにならなくてもそれなりに平和に暮らしていたし、翔一君自身それほど自分の正体を知りたいと考えているようには見えなかった。
 一方、普段は幼い少女のように可愛らしい菜月ちゃんが実は自分の正体を知りたがっていて、そのためにボウケンジャーになったと打ち明けるのは、普段明るくて楽しい奴ほど実は暗い過去がある設定が対比として見事で、ボウケンジャーに対する菜月の思い入れが強いのも納得出来る。
 菜月の方が純粋に自分の正体を知りたいという意欲が強いので、その辺も分かり易いし、彼女に肩入れもし易い。
 また、自分のルーツに繋がると思われる唯一のブレスレットを持っている設定や、仲間として受け入れられる時にアクセルラーを持つのもシャレードとして効果的に機能している。

 筆者が彼女が好きだから甘々になっているのだけかもしれないが。

<総評>

 評価は、★★★★で大満足。
 アクションシーンも面白くて、ボウケンジャーにそれぞれ個別武装があるのもポイントが高い。
 とにかくボウケンイエローが可愛くて、魅力的なキャラクターと云うのが『ボウケンジャー』の魅力に繋がっていると考えている。

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