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つながるのが怖い?ー愛着障害の観点からパートナーシップを読み解くー

なぜだかパートナーとうまくいかないあなたへ

こんにちは,国際プロコーチ&弁護士のありです。

みなさんは,パートナーや家族とうまくいっている!という実感がありますか?

大好きな相手で大事に思っているのに,なぜか相手にイライラしたり,イライラしている相手に疲弊して返事をするのもおっくうになってしまっている,そんな関係性に悩んでいる人は実は多いのです。

今日はそんなパートナーシップの悩みを,愛着理論という観点から考察してみます。

愛着理論とは

愛着理論とは,John Bowlby とMary Ainsworth が提唱したアタッチメントセオリーという理論です。人は幼少期に保護者(的な立場にあった人)との関係の中で,自分が十分に愛されて育つ体験をします。その体験を通じて,自分という弱い存在が,この世界で,安全で安心して自分として立っていられる基盤を形成するのです。その際に,十分に自分を守ってくれる人の存在を「安全基地」(secure base)と呼びます。

心の安全基地とは

愛着理論でいう「安全基地」とは,

・自分が安全だと感じられるところ
・いつでも帰っていけるところ
・失敗したり傷ついたときも常にそのままの自分を受け入れてもらえるところ
・冒険や探索に出かけたときに帰ってくることのできる場所

といった意味を持っています。こころの「安全基地」がしっかりとあるからこそ,人は,何が起きるかわからない外の世界に,えいっと踏み出すことができます。そして,外の世界には,思いもよらない出来が待っていて,時には痛い目にもあいます。そんな時に,必ず帰れる場所がある(物理的に帰るかどうかは別として,痛い目に合って悲しんでいる自分をあたたかく受け入れてくれる人や環境がある)ならば,また,明日に向かって歩み出すことができるのです。

ちなみに,最近よく耳にするようになった「レジリエンス」という言葉(大きな苦難にあっても,ぽきっと折れてしまうことなく,なんとか自分らしさを取り戻していく力=しなやかさ)も,心の安全基地がきちんと機能していることがベースにあるからこそ,養われていくものだと思います。

愛着障害の4つのパターン

幼少期に心の安全基地がしっかり形成されないと,他者と適切な愛情や信頼に基づいた親密な関係を結ぶ方法がわからないまま育ってしまいます。このような状態を「愛着障害」といいます。「愛着」には下記の4つのパターンがあり,「➀安全型」以外の3パターンは,すべて愛着障害に分類されます。

➀安全型

➁回避型

③不安型

④混乱型

では,それぞれのパターンの特徴を見ていきましょう。

4つの愛着パターンの特徴

➀安定型

・自分と相手の心の奥底にある感情や欲求をちゃんと理解できる。
・その心の奥底の思いを相手に適切に表現できる。つまり,心と言葉や態度が一貫している。
・必要な時に助けを求めたり,助けを与えることができる。

➁不安型

・相手が自分を大事にしているのか,常に不安がある
・相手の愛情を確認したいという無意識の欲求から,相手を試す行動に出る
・たたみかけるように相手に反応を求めて,思い通りの反応が得られないとひどく傷つく
・怒りや過剰な反応に陥りやすく,相手をやたらと見張ったり追いかけてる状態になる。

③回避型

・感情を出すことを恐れ,無口で反応が薄い
・相手とつながることを恐れて,反応を求められれば求められるほど逃げ出そうとする
・助けを求めず,助けを積極的には与えない
・引きこもりタイプともいえる

④混乱型

・不安型と回避型が入り混じった状態
・相手に愛情行動を強く求めるが,相手が近づくと不安が高まりさっと身を引くような行動をとる
・相手の行動によって安心すると同時に不安と恐怖を覚えて自分も混乱する


このように分類すると,多少は身に覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。私自身も大いに心当たりがあります! ぜひ,自分自身や,自分の現(元)パートナーの言動が,どんなパターンに近い(近かった)のか想像してみてください。


パートナーシップと愛着障害

上のパターンを見てわかるとおり,愛着障害を抱えていると,他人との関係が不安定になり,常に自分も緊張したり不安が強く,疲弊した状態になってしまいます。そして,相手も,自分が常に試されたり,拒否されたりすることが続き,どんどん疲弊していきます。お互いのことを好きで大事だと思っていても,相手の言動に疲れがたまり,結果として一緒にいられなくなってしまうことがあります。

愛着障害がパートナーシップに与える影響はとても大きいものなのです。

愛着障害を乗り越えて愛情&信頼関係を築くためには

愛着障害は幼少期の保護者との関係から形成されると言われています。では,愛着障害を抱えて育ち,安定的な愛着関係を築く力が弱い人は,他者と安定的なパートナーシップを築けないのでしょうか?

答えはNOです。

人は誰でも自分と相手に向き合うことで,愛情と信頼を築いていくことができます。問題は個人の中にあるのではない,ただ,二人の間にある関係性を修復すればよく,その修復行動は,いつからでも始めることができます

関係性の修復とは,自分の心の底にある感情に素直になることから始まります。自分の心の底にある感情とは,例えばこんなものです。

相手に大事にされたい
相手に,他の誰よりも愛されたい
相手がここにいることに安心を感じたい
相手に安心を与えたい
相手に自分がパートナーであることに,満足してほしい

こうした心の奥底の感情と,自分が表現している態度とのギャップに気が付いて,それを率直に相手に伝えることができれば,関係性は必ず取り戻せます。ただ,これが難しい,激しく難しい。不安型・回避型・混乱型の人にとっては,こんなふうに自分の感情に向き合って,ましては,それを相手に伝えるなんて,恐怖の大チャレンジ,それができたら苦労しない!というくらいかもしれません。

そのチャレンジを支え,パートナーとの関係性の修復を支援するのが愛着障害の感情カウンセリングです。当事者間では手に負えず,同じパターンを繰り返し,八方ふさがりを感じる関係性を「心理的なカウンセリング技法」をもって支えることで,二人を安定的な関係性に変容させていくものです。

誰だって愛されたい。

人はだれでも,愛されたい,つながりたいと心の奥底で強く切実に思っているものです。たとえ,自分ではそう感じていなくても,すさまじい孤独を何とか抑えこみながら生きているのが人間という生き物なのです。

そして,その不安をパートナーに満たしてほしいと思うのも自然なことです。さらに,相手が持つその根源的な不安を自分が満たしたいという欲求も,人は常に持っているのです。

ただ,愛着障害の反応が何かをきっかけに顔を出し,ネガティブな感情とやりとりが繰り返されて,二人が次第に遠ざかってしまう,そんなループからは抜け出してほしいと思います。抜け出した先には,愛情と信頼で支え合う真の安定的なパートナーシップがあるからです。その時,あなたとパートナーは,お互いに「心の安全基地」となり,人生を歩んでいくためのかけがえのない存在として支え合うことになります。

その第一歩は,まず自分の心の奥底にある生身の感情に触れること,そこからすべては始まるのです。ぜひ,恐れや不信を乗り越えて,自分と会話してみてください。つながるのは怖いことではない,人は誰一人例外なく,弱くて優しくて,とても愛しい生き物なのです。

ぜひ心の安全基地に根差した幸せな時間がみなさんに訪れるように祈っています。


心の枠組みや自己理解を学ぶコーチングスクールはこちらです。愛着障害のカウンセリングも受け付けています。

https://coach-b-russel.webnode.jp/





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