ゆるし

生まれてくることを
たくさんの罪行を
積み重ねていくことを
風の広がりそのものである
行政官にゆるされたときから
私も同じ分だけ他人の罪行を
ゆるすよう定められていた
私は未来に向けられた契約を結んで
この世に生を受けたのだ
この契約書は今でも
あの風のどこかに表現されている

いくら他人がゆるそうとも
自分の罪は大風として吹き荒れ続け
不動に残り続ける
だが他人が自分に対して働いた罪なら
まだ柔らかい風の種子を閉ざしてしまえば
残さずに済ますことができる
私の中を循環する風は
それによって乱されることはない
これがゆるしである

私の骨に傷は残るだろう
そして刻まれた傷は消せないだろう
だがさらに恨みや憎しみまで残してしまったら
私の中の風は二重にも三重にも乱れてしまう
すべては風の意志の導くところ
風の規律と調和を守るため
私は他人をゆるし
恨みや憎しみの種子をじわじわと閉ざしていく

社会の連帯をつなぐ風の中で
被害者として異物となってしまった私を
社会の風を乱す岩となってしまった私を
ただの人型に戻すため
私は自己にこだわらない
すべては風の道を歩いていくため
社会の風の滞りない吹き抜けにこだわる
わたしはゆるすことで岩から人間に戻り
社会の風の中に再び溶け込んでいく
すべては風の智恵の諭すところ
私はいつでも風と共に生き
風と共にゆるす

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