雨の夜

車窓に映る自分を眺める
このスーツを着た疲れきった青年は何者だろう
いや、何者でもない、ただの「夜」だ
何者かでありたいようだが
何者になりたいかも分からず
ただ何者? という問いとしてしか判然と存在できない
私は会社員? 全ては虚構でしかない
過ぎ去られていく

雨の夜、降っているのは誰の涙だろうか
もちろんこれはただの水だけれど
誰かが流した涙だと考えると
この夜を静かに断罪するような
雨の空間切断にも説明がつく
喜びの涙でも悲しみの涙でもない
ありふれた情景に不意に流すような
無根拠で透明な涙
そして間違いない、この涙は私の涙だ
あなたの分まで、そして世界の分まで泣いている

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