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Pの幸福論

初めてPの存在を知った時から思っていた。
Pと私は相見えることはないだろうと。

切望しても、Pは飛んできてはくれない。飛ぶことを禁じられているから。私が飛んでいくのもなかなか容易ではない。
Pと私の距離は、1166km。

Pを想うこと数年が過ぎ、平成最後のこの夏に
千載一遇のチャンスが舞い込んだ。

夫の実家にて毎年恒例の夏旅行。その今年の行き先は九州。そして恋い焦がれたPは大分にいる。迷わず旅程に組み込んだ。

関東地方をかすめた台風12号を追い越し、初日は福岡。そしてまた台風に追いつかれる。
2日目。由布院温泉に宿をとり、最終日を待つ。
いよいよ、時は来たり。

こちらがPこと山荘無量塔のPロール。

Pロールは消費期限が当日中の為、取り寄せ不可の逸品。関東近郊であれば取り寄せ不可でも買いに行き、遠方のものでも食べたいと思えば取り寄せる私だけど、遠方かつ取り寄せ不可とあってはどうにもできず。由布院温泉は無量塔を知った時から訪れたい場所であったけれど、遠いし旅費も嵩むし行く機会ないしで、Pロールは一生食べられないと思っていた。大袈裟だけど。

Pロールを知って取り寄せ不可と目にした時の落胆と、どうしても食べてみたいという憧憬を抱いたまま数年。ようやくこの時。

何の変哲も無いロールケーキに見えるけれど
ひと口食べたら、これを数多のロールケーキと一括りにすることはできない。

ロールケーキではなく、Pロールというジャンルの至高のおやつだった。ふわっっふわのスポンジにスッと溶けるクリーム。甘さ控え目なんだけど、よくある甘さ控え目スイーツの物足りなさは皆無。原材料は卵、砂糖、小麦粉、生クリームのみ。シンプル。だのに、この美味しさ。
帰宅して、想い続けたPロールを食べながらニヤニヤが止まらない。

半分ほど食べ進んだところで、急に物悲しくなってきた。次にこのPロールを食べることができるのは、いつなんだろうか。もしかしたら、死ぬまで食べられないんじゃないだろうか。家族4人となると、旅費高いからそうそう由布院行けないし。美味しさを知ってしまってまた食べたいと渇望し続けるより、手が届かない存在のまま、美味しさを想像しながら憧れているほうが幸せだったんじゃないか……(またまた大袈裟だけど)

だけど、大丈夫。
まだPロールのチョコがあるじゃないか。
愛を込めて、チョコちゃんと呼ぼう。

チョコちゃんは、消費期限無視で翌日頂戴した。いちばん美味しいのは当然消費期限内だけど、過ぎてもなおPロールの美味しさは色褪せない。チョコケーキの嫌な甘ったるさが一切なく、ふわふわさっぱりしている。
消費期限を考え、Pロールを二本(実家と我が家用)チョコちゃんは実家と半分こという予定で買ってきたことを後悔。この美味しさなら、余裕で一本我が家で食べられた。

チョコちゃんを食べたことにより、心持ちが少し変わってきた。いつか、子どもたちの手が離れたらまた由布院に行って、Pロール買ってこよう。きっとまたいつか逢える。

そんなことを思いながらため息をついていたら、子どもたちが『大人になったら何本でも買ってきてあげるよ!』って。有難う。

系列店テオムラタのピスタチオショコラも、ピスタチオ好きには堪らん逸品だった。ピスタチオの薫り高い青くささと甘さを抑えたホワイトチョコが絶妙過ぎる。

またいつか、Pに逢えることを励みに日々頑張ろう。まずは、明後日から始まる年いちの『蝉まつり』を何とか乗り切ろう。蝉大嫌いだけど。その一歩がいつかのPに繋がっているんだから。

ごちそうさまでした。
P、至福の時を有難う。

#山荘無量塔 #bspeak #Pロール #由布院温泉 #大分県 #旅行 #スイーツ

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