見出し画像

いい人は損をする?

随分前に、友達からの紹介である大手旅行代理店の添乗員の仕事をした。当時、「旅行も好きやし、面白そうやしやるやる〜」とすごく軽いノリで引き受けた。しかし、恐ろしく厳しい研修があり...っていうのは、研修をする女のスタッフが怖かったのだ。随分と年下なのに、私のことを呼び捨てにし「起きてるか」と罵倒しながら、難しい質問を投げかけてくる。一応起きてるわい...と思いながら、心が病みそうになる研修を無事修了し、テストを受けて資格をゲットし、晴れて添乗員になった私。

添乗員は奴隷のような仕事

きっと、今はもっとハイテクになっているんだろうとは思うんだけど、当時はメールも何もない時代で電話と言えば公衆電話から掛けてたな...

当時の添乗員の仕事と言えば...どこに行くのか会社から連絡が入り、会社にお客さんのリストや、なんだかんだと資料をいっぱい取りに行き、注意点などを聞いて仕事が始まる。そして前日にお客さまリストを元に、バスなどの乗り物の座席を組んでいく。そして初めて行く所は「行ったことがない」ということは許されないので、まるで行ったことがあるかのように予習をする。寝る時間も惜しんでまた翌日の仕込みをする。そして帰ってきたらその翌日に会社へ精算&報告書を提出しに行く。全てアナログな作業...日帰りツアーでも前後結局3日くらいの拘束があるのに、確かギャラは、1回のツアーで7000円とかだったような気がする。泊まりのツアーも大して値段が変わらなかったはず。めっちゃ安いし、休憩なんてほとんどないから、時給にしたら300円くらいな感じ?お金もらって旅行に行けるなんてラッキーと思っていたけれど...

いくら旅行が好きと言っても、添乗で行って美味しいものを食べれて、素晴らしい景色を見ることができたとしても...ちっとも楽しくない。

必ずいるクレーマー

いや〜これが大変。私はキャラがスットコドッコイのスットンキョウだから同情されてか、クレームを言われることがあまりなかった。意外としっかりして真面目な添乗員さんほどクレームをよく言われて、帰ってからも腹の虫がおさまらないお客さんから、会社にまでクレームを入れられて会社から呼び出しを食らって怒られているところをしょっちゅう見かけた。

会社の研修の時にしつこく言われていたことがある。「いいお客さんには我慢をしてもらい、クレームを言うお客さんを優遇させること」

う〜ん、ひどいよなあ。私はこういうのキライ。例えば、泊まるホテル。チラシにもオーシャンビュー的なことを謳っている。そして自分のツアーでお客さんに割り当てられた部屋をざっと調べてみると、何部屋かが景色が見えず窓を開けたら崖...とか、壁とかそういうことがある。そうすると、研修で教えられた方式では、ツアーの中で文句を言わない優しそうなお客さんと、文句ばかり言う客を行きのホテルに到着するまでにじっと見ておいて、優しそうな客を窓を開けると崖の部屋へ。クレームを言う人をオーシャンビューへと割り当てろと...う〜ん、すごく不条理。確かに、そうすれば旅行もスムーズなのかもしれない。でも、それじゃあいい人が浮かばれない。悪いクレーマーになってしまった方が得をするということになってしまう。そんなのはおかしい。

開けっぴろげ作戦を繰り広げてみた

会社には秘密にしていたが、私はお客さんに正直に言った。「残念ながら今回泊まる部屋には何部屋か景色が悪い部屋があります。みなさん同じ条件でツアーのお金を払って泊まるのに、誰もがいい部屋に泊まりたいかとは思いますが、残念ながらそうもいきません。そこで考えました。くじ引きにしま〜す。そして、1泊目に景色が悪い部屋に当たったグループには、2日目に一番いい部屋にご案内します!」と事情をオープンにして、あみだくじを引いてもらった。まさにギャンブルの一か八か。きっと会社にこんなことをしたとバレたら、即刻あの恐ろしい研修した女の人がやってきて説教部屋だ。

すると、意外なことに文句をよく言っていたお客さんも、「仕方ないわね〜」と納得しながら、そして大半のお客さんは、そんなことも初めてだから楽しみながらくじを引いてくれた。

結局、壁の部屋に当たった人もだれ一人文句を言う人がいなかった。そして、他人だったお客さん同士も仲良くなり、オーシャンビューの部屋の人のところに遊びに行ったり、むしろなんだかちょっとした絆のようなものが生まれ和気あいあいと楽しいツアーになり終了し、楽しいツアーだったとお礼のお手紙をいっぱいいただいた。

臨機応変に対応するのが一番

あの時、会社の指示に従わなくて本当に良かったと思った。きっと、あの人は文句ばっかり言う人だから、いい部屋に割り振っておこう。あの人たち優しいから景色の悪い部屋に入れておこう。なんてことをしていたら、きっと自分の中でずっとモヤっとしたものが残っていたに違いないと思う。アイデアさえあれば、人を嫌な気にさせないで済む方法があるんだと思う。きっと、それは自分がお客さんに誠意を持てるかどうか。ってことなのかな〜。

旅行の添乗員って、なかなか面白い仕事だった。また、その話は気が向いたら書こうかなっ。

ありがとうございます。夢実現のための資金とさせていただきます!