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第2話 ピンチはチャンスだ

語り手 : ネコのきなこ    挿し絵:猫野 サラ


ある日、道路で寝ていたら、大きな車ってヤツがやってきて、何度もプップー、プップーてうるさいんだ。ボクのお昼寝を邪魔するなんてひどいよね。ボクはそのまま目も開けないで無視してやった。何度もプップーは続き、車はどんどん近くに寄ってきた。そして、ついに、、ボクの足をひいたんだ! もうビックリしたよ! 大きな声で叫びながら逃げたんだ。怖くて怖くて頭が動転してしまってね。ひどすぎるよ、ボクの足をひくなんて!!

ずっと隠れてたんだ。お腹はペコペコだったけど、意地悪なネコも周りにいて怖かったし。ノラネコってね、他のネコには優しくできない。みんな自分のことだけで精一杯だから仕方ないんだ。過酷な世界だよ。

ずっとずっと経ってから、足は痛くなかったし、お腹はもう限界、よし!ミエちゃんのところへ行こうって決心したんだ。ヨロヨロしながら、お店の近くまで行くと、ボクの鳴き声にすぐ彼女は気づいてくれた。大声で駆け寄ってきて、良かった〜〜キナが生きてた〜〜。よく帰ってきたなぁ、キナァ〜、こんなに痩せて〜〜。ボクを見て泣いてたよ。ボクはご飯を食べるのに夢中だったけど、近くの人たちも集まって来てね。

しばらくして病院ってところへ連れていかれた。結局、前足の先は動かなくなってしまったけどね、それでも生きていけるんだ。へっちゃらだったよ。

そのままお店に住むことになったんだ。来る日も来る日もたくさんの人間がお見舞いに来てくれてね。ボクってさ、人気ネコだったからね。優しいおじさんがお肉を元気になるようにってくれた。このおじさんは中国ってところから来たんだって。本当に優しくて最高だよ。マリアちゃんはこのおじさんの担々麺をいつも幸せそうに食べるんだ。おじさんの料理も最高らしいよ。

あ、マリアちゃんもよく来るようになったんだよ。お膝にのると撫でてくれるから、ボクも彼女の手を優しく舐めてあげた。多分ね、この頃からボクのことが好きになっていたと思うよ、ふふふっ。ボクの魅力にやっと彼女は気づいたみたい、かなり遅いけど。

何度もマリアちゃんはやってきた。人間って幸せな動物だよね。食べて、笑って、、。彼女は夜遅くに来て、海老フライ定食や坦々麺を注文してた。ミエちゃんはお休みの日もお店に来て、ボクと遊んでくれたんだよ。真っ暗なお店で寂しかったけど、必ず来てくれた。でね、ボクにこんなこと言うんだ、キナァ、マリアのお家へ行けるといいね。マリアもバカちんだから、キナとピッタリだよね。うん、手を合わせて祈っとこう!あ、キナはその手じゃ合わせられないね、ってボクのブラブラになってしまった足を見てプッて笑ってた。ミエちゃんはイジワル言ってボクやマリアちゃんをいつもからかうんだ。で、自分で一番ウケてる、幸せな動物だよ、ふふふっ。

そして、もの凄いことが起きたんだ。12月の寒い日が続いた頃に、突然、あのマリアちゃんがやってきて、ボクと一緒に暮らすって言い出したんだ。マリアちゃん、ボクたちネコより、デッカい犬の方が好きって言ってたのに!大丈夫かなあ? でも、ボクとミエちゃんの思いが伝わったのかもしれない。ミエちゃんは、よく考えてって言ったけど、内心はもう有頂天だったらしい。気まぐれなマリアちゃんの気持ちが変わりませんように。ボクのマリアちゃんになりますように。

 でも、神様、、、ミエちゃん、、、                      本当に、ありがとう。

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