【コラム】ベスト・クライマックス・オブ・ザ・ゲーム TOP12

終わりよければ全て良しという言葉がある。僕はこの言葉を信奉しており、映画ならラスト・カットさえ素晴らしければそれだけで五つ星をつけてしまうタイプだ。

ほんの一例、好みのラスト・カットを挙げると『セッション』『キック・アス』『アイアンマン(無論一作目)』『トレマーズ』『デス・プルーフ』などだ。(本編も優れた作品なので例として適当ではない)

その傾向はゲームでも同様だが、ゲームには特有の事情があり、状況が少し違う。それはゲームがインタラクティブなメディアであるため、プレイヤーはラストを二回体験するということだ。つまり、プレイヤーが操作する"クライマックス"(ラスボス戦と呼んでもいい)と、プレイヤーはほぼ干渉しないカットシーンで構成される"エンディング"だ。(操作送りや会話選択肢程度はここでは考慮しない)

僕はゲームにおいてはインタラクティブなゲームプレイを最優先するため、評価において重視するのはもちろん前者となる。

だから、ここで語るベスト・クライマックスとは、あくまでプレイヤーがコントローラを手放さない事を前提にしている。それはラスボス戦だったり、最終決戦だったり、実質的にはイベントシーンなのかもしれないが、いずれにしてもあなたが操作するクライマックスだ。

(プレイヤーによっては、クライマックス自体が凡庸でも、その後に感動的な20分長のエンディングがある方が良いと思うかもしれない。どちらが良いかは信仰の問題だ)

超メジャータイトルから、必ずしもそうでないタイトルまで”順不同”で選んだ。1位から12位という訳ではない。基準はたった一つ。僕のパーソナルな体験にのみ依拠している。
(一応、同一シリーズのチョイスは一作までとした)

比較的新しい作品のネタバレには最低限配慮したつもりだが、テーマがテーマなので焼け石に水の感は否めない。

最後に、なぜベスト12か?12は11よりも上だからだ。

① ゼルダの伝説 大地の汽笛[DS,Wii U(VC移植)]


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『大地の汽笛』は確かにベスト・ゼルダゲームではない。しかし、そのクライマックスに限って言えば栄光あるシリーズの中でも最高の一つだろう。(『時のオカリナ』、『トワイライトプリンセス』よりも素晴らしい!)

プレイヤー=リンクは、動く甲冑に魂を封じ込められたゼルダ姫を救い、魔王の復活を阻止するため、世界各地の塔に封印された賢者たちの持つ楽器の力を解放する旅に出る。

ラストバトルに至るプロセスで既に、それまでプレイヤーを散々苦しめてきた魔列車との列車シューティング・チェイス、ライバルとの決着などの派手な展開を通じ、プレイヤーのボルテージは最高潮となっている。

そして満を辞して復活するラストボスは余りにも強大で、それを滅ぼすには聖なるメロディのセッションが必要だ。つまり賢者たちの楽器、ゼルダ姫の歌声、そしてリンク=プレイヤー=あなたの奏でる『大地の汽笛』のセッションが。

ゼルダ姫を守る長く苦しいパートの後に到達するセッションは、奥ゆかしく流麗なメロディで、それ自体がこれまでの冒険のハイライトとしてプレイヤーの情感を刺激するが、更にそのまま最終決戦を盛り上げる実に熱いBGMに直結する。(イントロのタイミングが完璧なのだ!)

そして、戦闘は通常の画面構成と異なり、下画面でリンクを、上画面でゼルダをそれぞれ操作する変則的かつダイナミックなものに変化する。
それまでのストーリーとの連続性、本来のゲームシステムを尊重しつつラストらしい一捻りを加えたゲームプレイ、勇壮に盛り上がるBGM、手に汗握るトドメの一撃…大地の汽笛のクライマックスは、優れたゲームクライマックスに必要な要素を全て兼ね備えている。

今作は、携帯機ゼルダのため、魔王ガノンVS勇者リンクの伝統的なフォームに沿っていないにも関わらず、シリーズ随一の盛り上がりを達成している。
改めて調べて気づいたが、今作はDSのソフトだった。僕は余りの迫力に、今の今まで3DSタイトルと思い込んでしまっていたのだ!まさしく、このリストの筆頭にふさわしいタイトルだろう。

https://youtu.be/9GXj1HcP94U?t=293

② オメガブースト[PS]

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オメガブーストは初代PSで最も過小評価されたゲームの一つだ。グランツーリスモで知られるポリフォニースタジオが突如血迷って発売したこの3Dロボットシューティングは商業的に成功したとは言えなかったが、ゲームとしては非常に優れた完成度を誇る。

僕はこのゲームをリモートコントロールダンディと並ぶ、初代PSのロボットゲームの最高峰と断言できる。(余談だが、それぞれの作品のミームはPS2世代に、ANUBIS、鉄人28号という更なる傑作に受け継がれることとなる)
ゲームプレイは1時間強でクリアできる短さだが、それは内容の少なさではなく、密度の濃さを意味した。
ゲーム中は様々なハイライトシーンに満ちている、夕焼けの中、高高度での航空編隊・可変ロボ・超々巨大爆撃機との連戦、衛星軌道上にワープアウトしてきた宇宙艦隊とその旗艦の超巨大戦艦との大決戦、機械化都市でのライバル機との壮絶な死闘…これだけのハイライトを経ても、オメガブーストのラストは最も印象深いシーンだ。

だが本当にオメガブーストのラストは優れているのだろうか?僕がただそう思い込んでいるだけではないだろうか?客観的に評価する必要がある。
こんなこともあろうかと、僕の手元にちょうど『3Dロボットシューティングのラストバトルをサイコーにするためのチェックリスト』があるので一つずつ確認していこう。

・ラスボスとの一騎討ちか?チェック。
・ラスボスは巨大で黄金色で羽が沢山生えているか?チェック。
・画面全体に超カッコイイ残像エフェクトがかかるか?チェック。
・戦闘開始と同時に主題歌がかかるか?チェック。
・それは熱いハードロックか?チェック。

これが答えだ。
https://youtu.be/r00eODWynx0?t=2549


③ Call of Duty 4: Modern Warfare [PC・Xbox 360・PS3・Wii]

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/5/5f/Call_of_Duty_4_Modern_Warfare.jpg

僕は海外ゲームの愛好者だが、海外ゲームのAAAタイトルのクライマックスに満足することが滅多にない。特にF/TPSはゲームジャンルとクライマックスの相性自体もよくないのか、これは!という作品がかなり稀だ。しかし今作は例外中の例外にあたる。

一般的に盛り上がるゲーム・クライマックスといえば僕は当然『ライバルとの一騎討ち』や『巨大で強力なラスボスとの激闘』をイメージするし、今回挙げたタイトルの大半もそうしたものだ。だがFPSはシステム上、これらには向いていないと僕は前々から感じている。(詳しい説明は省く)
しかし今作のクライマックスはFPSならではの切り口で、極めて洗練された決着を見せてくれる。

主人公は英国特殊部隊SASの新人隊員として、中東からロシアにかけて広がるテロ渦に対抗していくこととなり、その最中で、今回の事件の首謀者がロシアの超国家主義者ザカエフであること、ザカエフと自部隊の隊長キャプテン・プライスとは15年来の因縁だということも明らかになる。
最終局面、ザカエフによる大規模な核テロを辛うじて防いだSAS一行だが、脱出途上でザカエフ一派による熾烈な追撃に晒されてしまう。激しい銃撃戦、カーチェイス、そして武装ヘリ。SASは果敢に抵抗するものの爆撃に巻き込まれ車は炎上横転、完全に追い詰められてしまう。

ここからが真のクライマックスだ。

それまで助け合ってきた仲間を一人一人殺しながら、ザカエフがゆっくりと歩み寄ってくる。俺の手には一丁の拳銃すらもはやない。横を見る。隊長のプライスも血を吐き倒れている。もう限界だろう。終わりか。

その時、背後で突然の大爆発。狼狽え、隙を見せるザカエフたち。理由を考える暇はなかった。プライスを見る。彼と目が合った。プライスは力尽き、倒れこむ…最後の力で、俺に向けて拳銃を滑らせてから。

アドレナリンが過剰分泌され、時間が泥の様に鈍化した。弾丸はまだ残っている。絶対に外さない距離。護衛二人の頭を瞬時に撃ち抜く。ザカエフが恐怖の顔で俺を見る。奴を撃つのは頭じゃない。プライスは、因縁を俺に託してくれた。だから奴が、たっぷりと苦しめる様に。どてっ腹に。ゆっくりと。一発、二発、三発。終わりだ。

これだけのドラマチックなシーンが、一つのセリフもなく、一つの画面指示もなく、プレイヤー自身の手で展開される。だが、意図を読み違えるプレイヤーはいないだろうし、僕の他にも、似たようなモノローグが脳裏に浮かんでいた人はいるはずだ。(ひょっとするとあなたは、ザカエフの頭を一撃で撃ち抜いたかもしれない。それはそれであなたの体験だ)

言ってしまえば、このゲームにラスボスは存在しない。(パワードスーツを着たザカエフの赤く光る弱点コアを撃ちまくる展開でなくて本当に良かった!)
これは雑魚との激しい戦闘の後のイベントシーンにすぎないかもしれない。しかしこのゲームは、プレイヤーを信頼し、操作を委ねることで、屈指のクライマックスを作り上げてみせた。

Call of Dutyシリーズはこのフォーマットを流用しすぎており、一見類似しているがどうにも大味な後継作のクライマックスは手放しで褒められない。しかしこの作品のラストに関しては、本当にクールだ。
それまでの伏線と演出の集大成こそがこのシーンであり、ゲーム史上最も爽快なラストショットである。

④ 武刃街[PS2]

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武刃街は優れたゲームではないので、このリストに掲載することは少し躊躇った。だがこのリストはラストだけの評価だ。全体の完成度は無関係だろう。

このゲームはPS2全盛期に雨後の筍のように発売されたデビル・メイ・クライフォロワーのアクションゲームの一つで、Gacktが武侠映画のようなワイヤー・チャンバラアクションをするという発狂したコンセプトのゲームだ。

決して洗練されたゲームではない。ジャンプアクションはイライラさせられるし、巨大ボス戦は退屈、ストーリーは悲惨なまでに破綻している。

しかし、あらゆる欠点を考慮しても、Gacktが香港映画的なワイヤーアクションで滑空するのはそれだけでひたすら笑えるし、人型の敵とのド派手な高速チャンバラはあらゆるゲームの中でもベストの部類に入る剣戟ではないだろうか。
(友よ、お願いだ。僕はチャンバラの出来るゲームを、リアルな剣術格闘ではなく、カッコよく荒唐無稽な剣の打ち合いによるド派手なチャンバラを体験できるゲームを渇望している。もし君に心当たりがあれば、どうか教えてほしい)

そして、クライマックスがクールなのだ。

ストーリーが完全に破綻しているので、ラスボスが兄弟子なのが師匠の仇なのか何が目的なのかも判然としないが、CV山寺宏一の銀髪オールバックなので、堂々として強大な悪漢なのは一目瞭然だ。

最終ステージは小惑星を真っ二つにした舞台で桜が咲き乱れる中(意味がわからないかもしれないが、この通りなので仕方がない)、ラスボスとの一騎討ちだ。このゲームの短所であるジャンプアクションも巨大ボスもない。武侠の決着に相応しい、妖術乱れ飛び剣打ち鳴らし合う華麗で派手な戦いが楽しめる。BGMも決着に相応しく、どことなく悲壮感も含んだ熱い旋律で決戦を盛り上げる。(お察しの通り、僕はBGMが好みだとそれだけで評価が大甘になる)

この最終決戦の一番好みの箇所だが…このバトルフィールドは狭いので、攻撃によって吹き飛ばされると敵も自分も簡単にフィールド外に転落してしまう。
その時、(落ちたのがプレイヤーでもラスボスでも)相手の手を掴んでフィールドに引き上げるのだ!『やはり俺たちの決着は剣で付けねば…なあ、劉よ!』というセリフとともに!

ほんの些細な演出だが、この世界の素晴らしいものの大抵は、些細ななにかからできている。
https://www.youtube.com/watch?v=QGnqXiZVzuA


⑤ ヒットラーの復活[FC]

例えば魂斗羅のように、アーケードに起源を持ちながら、家庭用ゲーム機への移植によってその魅力を真に花開かせるゲームが存在する。ヒットラーの復活も、もともとトップシークレットと言う名のアーケードゲームとして誕生したが、改題と併せてファミコンに移植された。横スクロールアクションとしては(今なお)極めて異例なことに、このゲームではジャンプが出来ない。その代わりに、射出するワイヤーによって、スパイダーマンやインディアナ・ジョーンズのようなスイングアクションによって飛び回るのだ。

ファミコンへの移植によって拡張されたストーリーとそのクライマックスは見事の一言に尽きる。主人公は西側特殊工作員として、某独裁帝国で密かに再開された、ナチスの最終兵器開発計画『アルバトロス計画』を阻止することになる。帝国は更に最終兵器の生体起動キーとして、あのA・ヒットラーのクローン再生まで目論んでいるのだ!
更にゲストキャラで、事前に潜入していたベテラン特殊工作員としてあのスーパージョー(言わずもがなの名作『戦場の狼』の主人公だ!)も登場し、さながらフジキド・ケンジとマスラダ・カイ、初代鋼鉄ジーグと鋼鉄神ジーグのような熱いダブルヒーローのストーリーが展開される。

そして、極め付けのクライマックスだ。スーパージョーの支援を受け、敵中枢部に侵攻する主人公。だがその時だ!敵の司令官が最終兵器、アルバトロスを起動する!時既に遅しか!おお!さらに!クローン・ヒットラーも培養カプセルから出てくるではないか!だが様子がおかしい!
おお!見よ!あれは単なるクローンではない!ALAS!あの20世紀の悪魔、ヒットラーの記憶・人格すらも受け継いだ正真正銘の化け物だ!ヒットラーは敵の司令官の首を呆気なく吹き飛ばしアルバトロスを乗っ取る!インガオホー!


このままでは世界はWW2以上の戦火に見舞われるだろう!今、君が空中に浮かぶ最終兵器アルバトロスを破壊するしかない!

この巨大空中機動兵器アルバトロスとの戦闘は、このゲーム最大の醍醐味であるワイヤー機動をフルに活かした爽快かつシリアスな空中戦であり、このゲームのラストとして相応しいものだ。


https://i.ytimg.com/vi/6Q2WIj_VsZQ/maxresdefault.jpg

だが凄まじいことに、まだこの先がある!

アルバトロスを辛うじて破壊した主人公、しかしヒットラーは脱出し、基地の自爆装置を作動させてしまう!ここで奴を逃せば全てが水の泡だ!敵の大群をなぎ倒しヒットラーを追う主人公、だが奴の乗ったヘリはもはや脱出直前だ!
蘇った悪魔に引導を渡すには手段は一つ。基地の最上階からワイヤーを使って大ジャンプし、飛び降りながらヘリのコックピットを撃ち抜くしかない!
チャンスは一瞬!それだけあれば十分だ!


http://www.vgmuseum.com/end/nes/a/bioni-2.png

まさしくスーパー・VFX・ハード・アクション・クライマックスに相応しい展開だろう。そしてこのタフでハードなミッションをクリアした君には二つのリウァードが与えられる。一つはファミコンの限界に派手なヒットラーの死亡シーンと、もう一つはファミコンの限界に派手な基地の大爆発シーンだ。


http://www.mountainouswords.com/mountain-air/wp-content/uploads/2011/12/Top-Secret.jpg

http://www.vizzed.com/vizzedboard/retro/user_screenshots/saves30/306391/NES--Bionic%20Commando_Feb3%2018_45_31.png

ハードな展開、極限のミッション、そして悪党の血飛沫と大爆発で飾られる大団円。これがファミコンだと?そうだ、これこそがファミコンだ。


⑥ Portal 2[PC, Xbox 360,PlayStation 3]

ポータルとポータル2のどちらが優れたゲームか?という議論は今後も長年に渡ってゲーマー間で繰り広げられることだろう。第1作目の完璧な洗練に対して、ハリウッド娯楽大作的になってしまった二作目に複雑な感情を持つプレイヤーはいるかもしれないが、クライマックスに関して言えばポータル2の大成功は間違いない。

それまで仄めかされていた、ポータルを開く材質には◯の◯が必要という言及、切迫した状況、そして突然の大ピンチ。それら全てがラスト、たった一発のポータルガンで繋がり、そしてエピックなスケールの決着に帰結する。あのシーンを迎えた時の僕は、まるでジョジョ二部ラストの『せ、赤石は波紋増幅器だった…』と呟くジョセフ・ジョースターだった。
こちらの想像を超えるラストとはまさしくこの事だ。


⑦ Halo:Reach[Xbox 360]

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/5/5c/Halo-_Reach_box_art.png

ヘイローシリーズは確かに優れた家庭用ゲームだが、初代トリロジーも新シリーズも含め、クライマックスが好みな作品ではない。(どれも比較的淡々と終わってしまう)しかしこの外伝は別だ。

HALOの本筋は、人類と宇宙列強種族コブナントとの戦争を壮大なスケールで描くスペースオペラであるが、その中心には常に、"最強の兵士"、"人類の希望"、"Xbox最大のヒーロー"ことマスターチーフと、彼を常に支える究極の戦闘支援AIコルタナがいる。
彼らタッグはいわばルーク・スカイウォーカーだ。常に銀河の中心におり、フォースと共にある。

この外伝は違う。そもそもリーチというタイトルが不吉だ。リーチとは惑星名のことであるが、シリーズ第一作のあらすじの時点で、人類側が七億の犠牲者と共に戦争の主導権を失うこととなった戦闘『惑星リーチの陥落』の名が歴史として示されている。この戦いは、あらかじめ明白な敗北に向けて進むゲームなのだ。

主人公もマスターチーフのようなタフガイ中のタフガイ・ヒーローではない。寄せ集めの独立愚連隊『ノーブルチーム』の新人『ローンウルフ(はぐれ狼)』でしかない。

これは彼らの物語であり、スター・ウォーズにおけるローグワンだ。

コブナントの大艦隊に突如強襲された惑星リーチ。主人公属する独立愚連隊ノーブル・チームは戦場を駆け回り八面六臂の活躍を見せるが、奮戦虚しく圧倒的な兵力差に人類側の劣勢はもはや明白。そんな中、彼らに最後に下された特殊指令は、とある重要な機密物資『パッケージ』の回収と、惑星リーチ脱出までの護衛。

ますます激化する戦闘の最中、一人また一人と倒れていくノーブルチームだったが、辛うじて『パッケージ』の回収に成功する。しかし、既に制空権はコブナントのもの。誰かが惑星リーチからの脱出を諦め、地上からの支援砲撃をしなければパッケージの脱出は不可能だろう。
そう。君だ。

君の的確な支援砲撃によって『パッケージ』は無事に惑星リーチの重力圏から逃れた。その正体…それは後にマスターチーフと共に人類を救うことになる超AI・コルタナだった。

君たちの活躍は無駄ではなかった。惑星リーチの戦いは人類の敗北だったが、未来への希望を微かに覗かせ、ここで物語は終わる…

だが、ゲームにはこの後、一つだけミッションが残っている。
最終ミッションの名前は『ローンウルフ』。
ミッション目的はたった一つ。”生き抜け”

仲間たちを失いただ一人地上に残り、再び『はぐれ狼』となった君のもとに、コブナントの地上部隊が殺到する。

もはや任務は果たした。あとはもう、やることはたった一つだ。

雲霞の如き敵群に向かい、君は銃を取り、生き抜く。最後の、最後のその瞬間まで。


プレイヤーの感情を揺さぶるラストとはまさしくこれだ。ラスボスも巨大メカも存在しない、ただ果てしなく続く、決して勝てない戦い。
だが、それまでのストーリーの、ノーブルチームと過ごした時間の全てがこのラストを至高の高みへと導いている。

ローグワンのロマンチックなラストも悪くないが、より悲壮感のあるヒロイズムに満ちているこのラストが僕は好きだ。

⑧ ストライダー飛竜[AC,MD,PS]

近未来ディストピア。
サイバーニンジャアサシン・飛竜。
世界を支配する冥王グランドマスター。
冥王による世界再創造のため、熱核攻撃で焼かれる地球を背景に、衛星軌道上での決戦。
決着とともに地平線から上がる日の出。

異議のある者は?
https://youtu.be/6atkLWsioNI?t=715
さあ、次のタイトルに移ろう!

⑨ メタルギアソリッド[PS] 

http://jp.automaton.am/wp-content/uploads/2015/10/Metal-Gear-Solid-1.jpeg

オーケー、あなた方の言いたいことはわかる、わかっている。『3は?』だろう。確かにメタルギアソリッド3のラストも本当に素晴らしく、最後までどちらを選ぶか悩んだ。だが、初代PS屈指の傑作である1のラストだって最高に素晴らしい。

(頼む、お願いだ。2と4と5の話は僕の前で出さないでくれ、主治医から止められているんだ!)

メタルギアソリッド1の、今となってはシンプルすぎるステルス・メカニックは時の試練に耐えているとは言い難いが(純粋なステルスとしては現在ではインディーズゲームの水準だろう)、アクション・アドベンチャーとしては今なお再訪する価値のある歴史的大傑作だ。

絶海の孤島で突如、秘密裏に開発を進められていた核搭載二足歩行戦車『メタルギア』を奪い蜂起籠城した特殊部隊『FOXFOUND』。その武装蜂起の為に送り込まれた元『FOXFOUND』隊員にして、最高の潜入工作員であった『ソリッド・スネーク』だったが、彼の前に立ちはだかる敵の首魁は、自分と同じ容貌をした謎の男『リキッド・スネーク』であった。

この完璧なプロットの元、様々な陰謀を経て遂に物語は最終局面に到達する。

ソリッドとリキッドの運命付けられた兄弟の激突。タイトルでもある秘密兵器メタルギアとの決戦(ここにサイボーグ忍者の最期まで入るのだ!)、そして破壊されたメタルギアの上での、二人のスネークの素手での殴り合い…ここまででも宿命的だが、更に駄目押しのカーチェイスが加わり、大クラッシュの後には、シナリオ上のキーアイテムであるFOXDIEにより痛快にトドメが決まる。


アクションのラストに必要なものは、クドいくらいの畳み掛けだと僕は信じているが、今作のそれはまるで『エイリアン2』にも匹敵しそうだ。

3のクライマックスもこれでもかという展開の畳み掛けだが、対手が「悪の親玉」ヴォルギン、「秘密兵器」シャゴホッド、そして『ザ・ボス』(思い出しただけで泣けてきた)、駄目押しの「ライバル」オセロットと目まぐるしく移り変わる。
これはこれで豪勢だが、僕はスネークVSリキッドというシンプルでピュアな構図を崩すことなくひたすら畳み掛けた1のラストをより愛したい。

それに、愛国者達もいない。

⑩ 星のカービィ 夢の泉の物語[FC]

同一シリーズは一作までという縛りを一応入れている。さもないとこのランキングも星のカービィで埋め尽くされてしまうだろうから。
本編の極めて高い完成度ゆえに忘れがちだが、星のカービィシリーズはラストの重要性に極めて自覚的なゲームだ。ラストバトルとは、「ただ一番強いボス」と戦うのでも、「ボスの順番が最後」でもなく、ゲームの締めくくりに相応しいクライマックスでなくてはならない。
星のカービィシリーズは最初期から最新作の『ロボボプラネット』(素晴らしかった!)
まで、充実したクライマックスをファンに提供してきたが、夢の泉の物語のそれは余りに見事で溜息すら出てしまう。
有名すぎるゲームだが、改めてその巧みさを再確認してみよう。

まずストーリー。プププランドに夢を供給する夢の泉の力の源『スターロッド』がデデデ大王(無論、前作のラスボスだ。 )に奪われてしまった。カービィは各地を回りスターロッドを回収し、デデデ大王を再び倒して夢を取り戻さなければならない。

次にシステム。カービィの代名詞ともいえるコピー能力の初出は今作だ。カービィの元々のアイデンティティは、『敵を吸って、星を吐く』である。
今作では、コピー能力は状況を選ばずに発動できるため便利だが単発の威力は乏しく、対して星を吐くのは、敵の攻撃に対するカウンターとなるため難易度は高い分一発の攻撃力が高く設定されていることでバランスを取っている。

さて、実際にゲームの最後まで移ろう。デデデ大王を倒すと、横スクロール画面のまま、イベントシーンに移る(視点が変わらないので、プレイヤーの没入感も途切れない)。
スターロッドを夢の泉に戻すカービィ、すると夢の泉から邪悪な影が湧き出る!これこそがこのゲームの真のラスボス、悪夢『ナイトメア』だ!
飛び去ったナイトメアを追うため、デデデ大王の力でカービィはスターロッドごと上空に打ち出される。
そして、朝靄の中、ナイトメアとカービィが一瞬の鍔迫り合い(ここがまた凄まじいセンスだ)をして、スターロッドから出る星を武器に横シューティングでの戦闘に突入する。


シューティングパートに勝利すると、再びカットシーンだ。ファミコンとはマジに信じられないほどのスピード感のある空中チェイスの後、BGMと完璧に同期して人型の真の姿を現したナイトメアと、カービィ。今度は本来の横スクロールアクションでの最終決戦だ。

説明はもはや要さないだろうが、一応語らせてくれ。

まずストーリー上のキーアイテムがそのまま最終戦限定の最強コピーになる点。
さらにこのコピー、スターロッドの能力は、それまでの『威力が高いけど中々撃てない』星を思う存分撃てるというもので、それまでのシステムそのものが伏線となって特別感を更に醸成している。
また、前作のラスボスが今回は協力者だったというサプライズも、敵の強大さと事態の重大さをよく引き立てている。
そして二連戦だ!STGパートはゲームシステムすら変わり、プレイヤーに変化と興奮を与えてくれるが、それはあくまで前哨戦であり、最終的には慣れ親しんだ横スクロールアクションでケリをつけさせてくれる。(ただし、君の手にはスターロッド)だ。BGMやカットシーンの配分も申し分ない。
ファミコン最終末期のタイトルだが、後継期のスーパーファミコンを見回しても、ここまで意識的にラストに焦点を当てたアクションゲームはほとんどないだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=l3R_usnlr_I

⑪ デビルメイクライ[PS2]


あえてデビルメイクライを挙げたが、どの作品か?ということに深い意味はない。意味があるのはむしろそのクリエイター、神谷英樹氏の方だ。彼の歴代の作品の(本編も勿論だが)クライマックスはいずれも最高だ。
エンタメを見事に知り尽くし、愛した人の作品であり、『ピンチの末の逆転ハッピーエンド』(from ビューティフルジョー)がどの作品でも楽しめる。大神の号泣必至のラストは勿論のことながら、ビューティフルジョーの、ジョーとキャプテンブルーの一言も交わさないままのヒーロー世代交代バトルは魂が震える。ベヨネッタのラストの馬鹿馬鹿しい程の大騒ぎは心の底から気持ちよくなれるし、ワンダフル101のこれでもかという畳み掛けの果ての、サイコーの後味のエピローグも大好きだ。だから、デビルメイクライであることに特別な深い意味はない。しかしそれでも、デビルメイクライのラスト、見事に決まった決め台詞『Jackpot!』は余りに格好良すぎて、僕の脳裏から剥がれてくれないのだ。


⑫ ソニックアドベンチャー2[DC,PS3,XBOX360]

『鉄腕アトム アトムハートの秘密』と最後まで悩んだが、やはりクライマックス・ベストでこれを挙げない訳にはいかないだろう。
ソニックシリーズでも有数の超大作たる本作は、ソニック単独でなく、ソニック・テイルズ・ナックルズによるヒーローチーム、さらにはシャドウ・エッグマン・ルージュによるヴィラン・ダークヒーローの2サイドからストーリーが展開される。また、黒いソニックことシャドウ・ザ・ヘッジホッグは今作が初登場だが、一作目で見事にソニック・ザ・ヘッジホッグのライバルという大役を果たしている。

有名なクライマックスについては、完璧だ。地球に壊滅的な被害をもたらす究極生物の取り付いたスペースコロニーの墜落を阻止すべく、ヒーロー・ヴィランの両チームが遂に手を組みミッションに挑む。そして大詰めも大詰め、遂に自分の過去の記憶を取り戻したシャドウ・ザ・ヘッジホッグとソニック・ザ・ヘッジホッグはカオスエメラルドの力を集めスーパーシャドウ、スーパーソニックに変身。大気圏外での最終決戦に挑む!という、ヒーロー・ヴィラン共闘、最強フォームへの変身、地球最大の危機、宇宙での決戦と素晴らしい王道展開だ。
だが、ソニックアドベンチャー2のラストといえば、やはりLive&Learnだろう。実にソニック的な疾走感と力強さを兼ね備えたこの曲はゲームのタイトル画面で流れるメインテーマであるため、プレイヤーの耳には十分に馴染んでいるが、最終決戦ではここにボーカルまで加わるのだ。燃えないわけがあろうか。

ソニックアドベンチャー2のラストは前作のラストとかなり類似した展開を辿る。個別ルート終了後の最終決戦ルート。暴走する究極生物。スーパーソニック。ボーカル付きメインテーマ。
しかしソニックアドベンチャー2はいずれの要素も、1の同様の展開をちょっとだけ上回っている。
初代では最終ボスとソニックの決戦のみだったラストシナリオは、オールキャラによるステージ攻略が加わり総仕上げを彩っているし、最終ボスもシャドウの過去に関わる因縁と密接に絡み、よりシナリオ上の動機付けが強くなっている。スーパー化においては無論、ソニックとシャドウの対立からのダブルヒーロー共闘がついにこの大一番で見られる訳だ。そして、Live&Learn。
ただでさえ素晴らしい完成度だったソニックアドベンチャーを更に拡大したこの試みは見事に成功し、未だに語り継がれる名クライマックスを産み出している。


https://www.youtube.com/watch?v=loHaB5LeR98

ベスト12はここまでだ。


ひょっとすると、たまたまど忘れしているだけでランク筆頭の作品があるかもしれない。(僕の記憶力は当てにならない)
また、ここでは挙げきれなかった作品も山ほどだ。例えば、スーパーメトロイドのベビーメトロイドの犠牲と怒りのハイパービーム。スターフォックス64の父親との脱出。ガンフロンティアの、縦シューティングにも関わらず、西部劇の決闘をやってのけたキングリボルバー戦。


斑鳩の解放合戦からの一分間の耐久。アインハンダーの悲壮感ある展開からの復讐の展開に壮絶な三次元戦闘。レッド・デッド・リデンプションのタイトル通りの乾いた復讐がバシッと決まるラスト。
東方妖々夢も、個人製作でありながらその有り余るセンスで、なんとも壮絶で幻想的で美しく物悲しく爽快な最終決戦を演出した。(扇子だけに)(ドッ)(一同爆笑)

下手くそなので動画視聴のみで語ることを許してほしいが、スグリのクライマックスは何故あんなに激しい戦闘なのに清涼感があるのだろう?

魂斗羅シリーズ、特に魂斗羅・ザ・ハードコアの、

狙え! 撃て!! 高度数千メートル、超音速のファイナルブレイクスルー!今、人類の未来は魂斗羅に託された!!

(GAME KOMMANDER http://www.ne.jp/asahi/hzk/kommander/@kommander_hzkより)も忘れがたい。


もちろんロックマンゼロ3の宿命の対決や、逆転裁判3の最後の”指差し”なども最後まで悩んだ。

昨今のインディーズゲームならbraidのシステムとパズルとシナリオの3つ全てがガッチリとハマる大仕掛けや、insideの凄まじいラストの展開(一体何なんだ、アレは?)も決して外したくはなかった。

鉄腕アトム アトムハートの秘密は、スーパー手塚大戦、火の鳥アトム編とも言うべきシナリオで、まさかの男がシナリオ上のメインヴィランとなり、その後のラスボスとしてあの怪物キャラクターまで登場する。(手塚ファン大興奮なのは間違いない)
そしてクライマックス、アトムのラストとトレジャーのラストが完璧に融合したラスト一分間の耐久は、極端に難易度が跳ね上がる事だけが唯一の欠点だ。(プレイヤーが確実に号泣しているので、画面の視認性が極端に下がってしまうからだ)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm402374

これはあくまで僕がプレイしたゲームなので、やり損ねてしまってきたゲーム…例えばエースコンバットゼロやワイルドアームズ2、ペルソナ3などは、もしプレイしていたらこのランキングにも入っていただろう。(未プレイが本当に悔やまれるゲーム達だ)


(2019.1.11追記)
友人のまきちゃんの勧めで国産インディーSTG『ムラサキ』もラストがすごいということでプレイしてみた。

「『ムラサキ』~?まき助が最近STGにお熱なのは知ってるけどよぉ~こーいういかにも東方風高難易度幻想STGね~、オタク君なら好きそう、って感じだろうけどさ…ま、俺も大人だし、ここはひとつ”人間関係”でプレイしてやりますかね・・・」

「ベスト・ゲーム・クライマックス・エバー!ドヒャー!(大号泣しながらゲーミング椅子からひっくり返って後頭部を打つ)」

完璧です。ネタ割れない系だけど20兆億点。

(追記終わり)。


案の定極端に長い内容になってしまった。ここまで読んでくれたあなたの忍耐に深い敬意と感謝を捧げたい。


この中にあなたのベスト・ゲームと合致している作品はあっただろうか?
それなら何よりだ。なあ!いいゲームだったよなあ!

なかっただろうか?
騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。きっと、どれも素敵なゲームの筈だ。(おっと、武刃街は除かないと)

そして、最後にもう一つだけお願いがある。

あなたにとってのベスト・ゲームクライマックスもどうか教えて欲しい。

私がプレイして愛したゲーム、プレイしたが愛せなかったゲーム、まだプレイしていないゲーム。

それらに対してあなたが語る思い出を、喜びと興奮の記憶を共有できたら、それは何よりの喜びだ。

ニューミシガンより愛と尊敬を込めて
ボブ

ボブさん、ありがとうございました。

皆さん、お忘れ物のないよう、気をつけてお帰りください。


【補足】
この記事は、IGN japan のクラベ・エスレ氏の語りをイメージして書いた。
彼の巧みで、しかし少し訛りのある語り口は、知的な誠実さと飄々としたユーモアを両立させており、僕は彼の言葉でゲームが語られるのをもっと聞きたいと思う。ぜひ一度皆さんも視聴してみてほしい。

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