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異世界転生×RTA×対戦ゲーム!『超世界転生エグゾドライブ』で世界を救え!

超世界転生エグゾドライブ、めっちゃくちゃ面白かったですね。

<注意:ここからは珪素さんの小説『超世界転生エグゾドライブ』について、一般的な設定レベルのネタを開示しつつ感想を話していきます。非常に面白い作品なので、タイトルレベルで興味がある、または私をとても信頼しているあなたならこれ以下は読まずに直接本編を読んだ方が良い>


エグゾドライブがめちゃくちゃ面白い

と、いうことで、異世界ファンタジー最大トーナメント小説異修羅が大絶賛連載中

の珪素さんの前作『超世界転生エグゾドライブ』を読んでみました。めちゃくちゃ面白い…


俗に言う異世界転生モノをテーマにしたホビー漫画ネタの作品なんですが、わたしは異世界転生モノはよく知らないのでその辺は適当です。

オープンワールドシングルRPG→対戦ゲームへの転換

本作の作中で語られる異世界転生はどちらかというとオープンワールドシングルプレイRPGといった風体で、例えばskyrimとかwitcher3のようなゲーム性が基盤となっています。

各地にイベントがあり、点在するボスを倒し経験点を獲得して、ラスボス戦を倒す。面白そうですね。そこに更に異世界転生した際のチート技能がつくわけですね。例えば超絶コミュ力で内政チートだったり、生まれた時から達人級だったり、完全ハーレムだったり棚ボタだったりする訳です。

で、ここで出てくるのが、本作の異世界転生はアーケード型の対戦ゲームであり、世界を救うまでに集めたスコアが高いほうが勝ちという設定です。そうかそうか、そうなれば話は違う、ここに並んだ大量のチート要素がすべてゲームバランスとして立ち上がってくる

これによって、さっきまでskyrimだったゲームがあっというまにstarcraftのようなRTSや、シヴィライゼーションの対戦モードのようなシミュレーション、またはLeague of LegendsのようなMOBAに変わってしまいました。アラ、燃えますね。

チート技能の組み合わせが、限定された総コストの中でゲームバランスの中に落とし込まれたデッキになってくるわけですね。一つ一つでは単なるぶっ壊れ性能の能力ですが、それが山ほどあれば計算されたゲームの手札となってくる訳です。あ!好き!ぼくこういうの好き!

見立てとしてのテレビゲームと、その最大解像度としての異世界転生

ゲームの楽しさというのは見立ての楽しさでもあります。平面のライン上でキャラクターが『強キック』とか『中パンチ』とか『対空技』をしているのを格闘と見立てたり、シヴィライゼーションでは移動コストがほぼゼロになる夢の道路を鉄道の見立てとしたり、文明の発展における特定の偉人の強烈な貢献を偉人ユニットとしてのボム扱いに見立てていましたね(くらえ、文化偉人爆弾!)

そのゲームが面白いかどうかとは全く別の問題として、ゲームの見立てには解像度があります。例えばスペースインベーダーは宇宙人の侵略を極めて粗い解像度でゲームに落とし込んでいますし、ハーツ・オブ・アイアンは第二次世界大戦の戦略レベルでのやりとりを極めて細かい解像度でゲーム化しています。FPSは銃撃戦をゲームの中で見立てていますが、シリアスサムからDOOM,ARMAやRainbow Sixではそれぞれ見立ての解像度が大きく異なりますね。

さて、対戦型ゲーム・エグゾドライブにおいて、見立ての解像度はMAXです。だって現実だもん!解像度が粗ければ粗いほど駆け引きは単純化されてバランスが取りやすくなる傾向にあるので、現実に近ければ良いというわけではないですが、それはそれとしてリアルならリアルなほど燃えるというのもまた事実です。無駄パラメータとか設定されまくったNPC(AI持ち)(イベント進行度関係なく任意に殺傷可能)とか死ぬほど大量にいて欲しい…

そしてエグゾドライブでは、解像度MAXの現実の中でチート技能で無双しながら、対戦ゲームとしてバランスが取れているわけですね(しかもソロプレイも可能)。これはプレイしたい。一個のゲーマーとして燃えねば嘘というものです。

言うに及ばずですが、本作でテンプレートとして扱われる異世界転生はゲーマーにも、というかゲーマーにこそ親和性が高く、例えばスカイリムで世界最強の暗殺者集団の長になったその足で北方の戦士団(実は人狼の秘密持ち)のリーダーになって盗賊ギルドの神器を託されたあとで魔法大学の総長に就任を乞われてる(実は産まれながら対ドラゴン特効の伝説の勇者)ような万能感や、LV30でPerks山ほど乗せて世紀末究極生物と化したVault101人間でレイダー狩りしている時の無敵感には身に覚えの一つはあるでしょう。

メタをフックにしているがベタに強い

さて、エグゾドライブは作品ジャンル的にホビー漫画と異世界転生の二ジャンルにメタを張っていますが、そもそもメタは一発芸にしか過ぎないので、メタ張るだけなら誰でもできるんですよね。(SCPのメタネタ低評価作品群を見ながら)

わたしもこれを読む前は、何か固有ジャンルのお約束をイジってちょっと上からうまいこと言ってやろうみたいなだけの作品だったら、すぐにへそを曲げ、ページを閉じ、冷蔵庫を開けて貰い物のCO・RO・NAに手を付けたであろう…

しかしわたしはエグゾドライブの一話を読むや否や、そのままぶっ通しで一気に読んで日曜を潰し、まるで後悔していません。それはメタな設定をフックとしつつ、作品の持つベタな強度が非常に強いからですね。ベタがベタなのは強いからです。

ホビーファイトを題材にしたストーリーは魅力的なキャラクターを増やしながら、徐々に戦いの場を引き上げていきつつ、スケールを上げていき、そして異世界転生バトルのルールや手札は序盤戦で自然に読者に開示され、戦闘の駆け引きと逆転は、既に開示された能力の手札の中で展開される…そしてクライマックスにかけて、序盤からの謎が開示されるとともに戦闘のスケールが一段階インフレーションする

エグゾドライブの構成と展開は、一つのエンタメとしてのベタな類型を力強い描線でなぞっています

派手に風呂敷を広げて奇麗に終わる

そして派手にインフレーションさせても奇麗に完結するのも良かったですね。話としては大団円させつつ、そこに至るまでで「?これってどういうこと?」「これ流されてるけどいいの?」みたいなところを意地でもゴリゴリに回収する辺り、オタクとしての誠実さが出ていいですね…長谷川裕一…

作者である珪素氏が、こんな感じで奇麗に畳むことに美学を感じているタイプのオタクだとつくづくわかったので、今絶賛連載中の異修羅も唯一の懸念だった「これ奇麗に終わるの?」が解決したので安心して先を読めますね。珪素さん…ありがとう…

ニタニタさせられる戦闘描写

そもそも戦闘が面白いんですよね。ゲームとしても、ゲームネタのホビー漫画としても。危機に瀕した異世界がある。その危機は異世界ごとに「単純暴力B」だったり「疫病蔓延S」だったり、さまざまな違いがある(要するにステージ選択ですね)。

で、ここで自他双方がそれぞれのチートスキル、"例えば【超絶成長】(ハイパーグロウス)や【絶対探知】(フラグサーチ)"を4つセットする訳ですが、ここでキモなのが、うち3つは相手に事前開示で、ラスト1つがシークレットという点です。

これは作品内におけるゲームバランスとしても、作品そのものとしても非常にうまく機能しており、これがゲーム内における読み合いにもなりますし、読み手に取っても先が気になる求心力と、ここぞというところでの清々しい逆転の双方に機能しています。

つまり、デッキ構築によって、内政型か、速攻型か、攻撃型か、防衛型か、暗殺型かといったような異世界人生の方針がそれぞれ見えてきて、なおかつシークレットの1枠が敵味方双方に謎と魅力を与えているわけですよね。チートスキルはどれも極端な能力を持っているため、ひょっとするシークレットの1枠次第では、見えていた戦略の全てが実はダミーなんてことも考えられます。

で、いざ本編を読んでみるとこれがまーめちゃくちゃ面白い。本編内ではCスキル(チートスキル)の一つとして

【後付設定】
一度の転生で一度しか起動できない単発発動型。自分自身の設定を変更し、スキルランクをそのままに任意の類似スキルを再習得する。奇襲性が高く、シークレットメモリとして用いる者が多い

という能力が出てきますが(意地悪いセンスだ)、本編ではむしろ後付的な決着はほぼなく、「これどっから逆転するんだ…?」からの「あー!あのスキル!あのスキルとこれをかけ合わせて…?あああこんな使い方があったか!そうかー!そうだよなー!」という感じで私は一線ごとに布団をゴロゴロしていました👺

ここからネタバレ

<注意:ここからは超世界転生エグゾドライブについて、個別の展開や終盤のネタバレを含めて語っています。非常に面白い作品なので、未読のあなたはこれ以下は読んではいけない>

チートスキルが超燃える

ということで、具体的な話をするとチートスキルがめちゃくちゃ良いですね。名前も性能も、ゲーマー心もオタク心もグイグイ刺激してきますね。

【無敵軍団】(ネームドフォース)
最大十名程度の配下や味方を強化し、スキルランクにボーナスを与える。他者強化系メモリの中では強化総量が最も大きいが、その反面、死亡や脱落を完全に防止できるわけではない

個人的には無敵軍団が一番好きですね。絶対みんな二つ名持ちやろ!『裂空将』とか『悲鳴を呼び起こすもの(スクリームブリンガー)』とか『素晴らしき』とかついとるやろ!
内政型軸にしてチート現代技術でゴリゴリに強化した無敵軍団で制圧プレイしたい…魔族と連合して先史文明兵器とかと『(任意のカタカナ名前)平原の決戦』とかしたい…

【器物転生】(アイテムモーフ)と【英雄育成】(トップブリーダー)のコンボ気になる、【超絶育成】単発で良くない…? 【器物転生】自体の能力と【英雄育成】の乗率で単純暴力S +もソロクリア出来るくらいハネるんやろか…あっ、【超絶成長】と【英雄育成】でダブルヒーローコンボよりも、【器物転生】と【英雄育成】の獣の槍コンボの方が確かに突破力高そうだよな…
ア!【器物転生】自体のスキルブーストも考えると【器物転生】×【超絶育成】×【英雄育成】か。相当無敵だけど三枠使うのキツイな。でもダイレクトアタックで速攻かければ【不朽不滅】(エバーグリーン)持ち以外はほぼ完封できそう…
この手の奴だと特化型デッキは基本的に強いので野試合だと相当行けそう。大会とかで対策されると辛いかな。【絶対探知】か【無敵軍団】(ネームドフォース)入れて、【英雄育成】をシークレットかな(【英雄育成】枠を【無敵軍団】に紛れこませる)

みたいなデッキ構築妄想が実際無限に出来ちゃうんですよね。アーイイ…タノシイ…【弱小技能】(ウルトラレア)、使い勝手の悪さ差し置いても強すぎない…???

ライバルが燃える

で、まーたホビー漫画定番の『異世界転生ゲームを悪いことに使う組織』とか『中学生に絶対見えないゴツいライバル(黒づくめ)』とかが出てくるわけですが、コイツらがまたクッソ最高なんですよね。だってあーた、一般的なC(チート)メモリに対抗する謎のメモリでD(ダーク)メモリですよ。ダーク!!!!ホビー漫画!

ライバルのDスキルなんて【魔王転生】(ダークネス・ドライブ)ですよ。ダークネス・ドライブ!!!ホビー漫画!!!!!!!まーたこれがダークってだけによっぽど強いインチキ能力なんやろな?オオ?って思ったら

IP(異世界影響力スコア)を逆転させるため、人類への敵対行為でモリモリスコアが稼げるようになる暗黒メモリ。しかし後発の、さらに強力な付加機能付きのメモリもある中、ライバルはあえてこの機能だけのメモリを使っており、実質3メモリでの縛りプレイ。つまりライバルのエグゾドライバーとしての実力が素でクソ強い

ですよ。ギャア!クソ燃える!

悪役が燃える

まーた本作はライバルの他に明確な"悪役"もいるわけですが、これがまた憎まれ役としての強度が高くて、チート技能がバランスの取れた対戦ゲームとして落とし込まれた世界でなお、卑怯極まるプレイングをしてくる「ガチのチーター」なんですよね。チーターはゲーマー全員の敵!しかもゲームに負けると「は?何こんなゲームにマジになってるの?現実の人生から逃避して、ゲームのほうが本物だと思いたいんだろ!黙ってる!なら図星!」とか言ってくるとんだカス野郎ですからね。ゲーム系迷惑サイトのコメント欄とかにいそう!やれー主人公!骨も残すな!

クライマックスが燃える

で、最後はライバルとの決戦からの、『この世界』を救う最終決戦と大盛り上がりな訳ですが、何が良いってこれ、『異世界転生ゲーム』のラインでも『この世界を救う』ラインでもまだ全然広げる余地ありありなんですよね。世界大会はあるし、あのラスボス二人は邪悪転生者としてはいかにも小物だし。 ギャア燃える!続きが読みたい!

それに、さすがにこれは倫理的にどーなんだ見たいなところとかも全部回収しきってるのが相当いいですね。倫理革命スキル持ちだからオッケー!ああ倫理 守ろう倫理 高めよ倫理

あと主人公がいけ好かないクール野郎に見せてカノジョ好き好き太郎なのが可愛くてイーですよね。レイめちゃくちゃ良いヒロインだもんね。仕方ないね。

アカシック柳生

アカシック柳生。



ということでめちゃくちゃ面白かったです。珪素さんにおかれましては進行形の超絶大傑作異修羅も大いに期待しております。あと誰かわたしとエグゾドライブのデッキ構築&模擬戦で一緒に遊んでください(審判役も募集しております)


(おわりです)





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