【物理書籍Wスレイヤーコン】バトル・ウィズアウト・オナー・ウィズ・ヒューマニティー【テキスト部門な】

君は目を覚まし、辺りを見回す。

ここはどこだろう?君は訝った。見慣れた自室ではない。

フスマ、タタミ、クンフー木人オブジェクト… 間違いなく何らかのドージョー…しかし妙にバーチュアル質感めいた非現実感だ。

気づくと、君の前に一人の男が立っていた。アロハシャツで、そして天狗面。

「ドーモ、アロハ天狗です」

彼は君を殴りとばした。


◆◆◆物理書籍Wスレイヤーコン◆◆◆

◆◆ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)を紹介する◆◆

◆◆バトル・ウィズアウト・オナー・ウィズ・ヒューマニティー◆◆

君は突然の暴力を回避できず吹き飛ばされ、ドージョーの柱に激突する
「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ・・・・」
アロハ天狗と名乗る不審な男は君の苦しむ様子にためらうでもなく、何かを呟きながら近づいてくる。

「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリは大人気サイバーパンク・ニンジャ活劇小説『ニンジャスレイヤー』の第三部中盤の山場となる連作エピソード群の総称・・・退廃未来都市ネオサイタマを支配する暗黒ニンジャ組織アマクダリ・・・・その最高幹部『12人』の過半数が殺害される『アマクダリの最も長い一日』を描いたストーリーだ、イヤーッ!!」

アロハ天狗の突然の正拳突き!

君は敏捷性のダイスをロールする。
ダイス判定に失敗したため、君は回避することができず、攻撃をまともに受けてしまう。

君の鳩尾にアロハ天狗の正拳がめり込み、吹き飛んだ君はショドーが掛けられた壁に激突する。

ニンジャスレイヤー・・・苦痛の中で君の頭にその単語がリフレインする。非現実的な空間の中で記憶には霞がかかっているが、その単語にだけは強く惹かれるものを感じる。自分はニンジャスレイヤーの何かを知っているのか!?ニンジャスレイヤーこそがこの突発的理不尽状況を脱出するカギだというのか!?

「このエピソード群は実際大作・・・ニンジャスレイヤーは右肩上がりに面白くなる作品だが、このロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリはその盛り上がりの一つの頂点だろう・・・だが!イヤーッ!」

君は敏捷性のダイスをロールする。
ダイスロールに成功し、アロハ天狗のチョップを紙一重で回避することに成功した。

「君はロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリを読んではいけない」
アロハ天狗は冷たい声で言い放った。

君は記憶力のダイスをロールする。
ダイスロールに成功し、君は完全ではないが記憶を取り戻す・・・ニンジャスレイヤーを支配する謎の暗黒集団、ほんやくチームの発言の一部を。

「ほ、ほんやくチームはかつて言っていた・・・どこから読んでも面白いと・・キャプテンアメリカを一話から読まなくてもいいように、ニンジャスレイヤーだって好きな巻から読めばいいのだと。敷居をあげ、初心者を排除する行いは実際奥ゆかしくないと・・」

君は適切にアロハ天狗に反論する。

「それは確かに真実、完璧に正しい・・・!だが!」
「このロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリはそれまでの展開が!キャラクターが!伏線が収束する一つの特異点!いわばアベンジャーズの3とか4とかを予習なしでいきなり見るようなもの!スシにおいてトロのみを食わんとする試み!故に!『いきなりこのエピソードから読んでも全然問題ない』という欺瞞もまた!初心者を排除する行いにほかならぬ!イヤーッ!」
アロハ天狗の左フック!

君は敏捷性のダイスをロールする。
ダイス判定に失敗したため、君は回避することができず、攻撃をまともに受けてしまう。

「そして、君はロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリを読むべきだ」
アロハ天狗は追撃の代わりに畳みかける。

「なぜならば、この話はそれ自体がシステムへの抵抗だからだ。君が世界に立ち向かうべきカラテとなるからだ。だからこそ、君には万全な状態でロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリを読んでほしい」

アロハ天狗が構えた!

「世界を無機質なシステム化しようとするアマクダリの試みに対し!憎悪と狂気で立ち向かうニンジャスレイヤー! アマクダリの暴威に対し、これまで独立していたネオサイタマのアウトキャストたちが抵抗勢力に変化していく!空中要塞で!海上機動艦隊で!ネオサイタマ市街地で!その盛り上がりを体感するために!君はあらかじめ十分に備えてから戦いに挑むべきだ!コマンドーが海辺で武装するように!バンデラスがギターケースに銃を仕込むがごとくに!リプリーが宇宙マシンガンと火炎放射器をダクトテープでグルグル巻きするがごとくにだ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
アロハ天狗の説法連撃!

君は敏捷性のダイスをロールする。
ダイス判定に失敗したため、君は回避することができず、すべての攻撃をまともに受けてしまう。

クリティカルヒット!アロハ天狗のケリが臓腑に突き刺さり、あまりの激痛に意識がホワイトアウトしかける。

―なぜ俺はこんな理不尽な目に合う?
君の目に怒りが宿る。
―アロハ天狗を倒し、この空間を出ればこんな目にはもう合わない?
―違う。奴を倒しても同じだ。ここから出ても同じだ。
君の目に怒りが宿る。
アロハ天狗にバーチャル道場に監禁されている疑似的な君ではない。
今この文章をスマートフォンで、PCのディスプレイで読んでいる君自身だ。
―ここから出た先にこそ、俺を縛るシステムが・・・真の敵がいる!
君は怒る。その怒りが苦痛と混乱を押し流し、思考と感覚を純化させていく。

君を縛るシステム・・・明らかに正しい答えを描いているのに漢字の”とめ”とか”はね”とか授業態度とかで難癖をつけて減点してくる管理学校システムとか、週100時間は仕事で拘束しておいて休日は休日でふれあいバーベキュー大会とかで幹事とか雑用を押し付けてくる独占企業システムとか、インターネットにワンニャン画像無断転載スパムbotとかを氾濫させる資本主義システムとか・・・つまりそういうなんかに対して君は怒る!

そして君は思い出した。
―俺は/僕は/私は―  既にニンジャスレイヤーを読んでいる!追いついている!

だから君はロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリへの完全なる準備が既にできているのだ!

君は解放され、立ち上がる。
例え欺瞞と不条理で構成されたシステムに所属していたとしても、君はもはやそれに隷属してはいない。
君は抵抗者、レジスタンシアだ。
おまえの行動を決めるのはおまえだけだ。

君の覚醒を見て、アロハ天狗が仮面の奥で笑ったのが君にも感じとれた。

「そうだ。だがこの巻でロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリは終わりではない。下巻で、さらに情勢は拡散し、カオスと化し、そして一点に収束する爆発的決着『フェアウェル・マイ・シャドウ/ニチョーム・ウォー』に連鎖する。そしてそのあとには何が?更なる最終決戦・・・第三部最終章『ニンジャスレイヤー・ネヴァーダイズ』が待ち構えているのだ。お前はそれにも耐えられるというのか!イヤーッ!」
アロハ天狗の殺人的首狩りキック!

君は敏捷性のダイスをロールする。
ダイス判定に失敗した。しかしダイス判定など知ったことか。おまえの行動を決めるのはおまえだけだ。

君はアロハ天狗の攻撃を力強い意思でガードする。
そして!
「イヤーッ!」「グワーッ!」
君のケリ・キックがアロハ天狗の顔面に直撃する!
君の全身にカラテが漲る!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
カラテの応酬!右フック!左チョップ!右フック!肘!膝!上段蹴りがクロスし、かち合う!

アロハ天狗がよろめいた!君は渾身の力を籠め、右ストレートを繰り出す!

「イイイイイヤアアーッ!」

君の拳がアロハ天狗を貫いた。天狗面の奥から見える彼の目は、確かに笑っていた。

「忘れるな、おまえの行動を決めるのはおまえだけだ」
アロハ天狗は静かに01還元され、仮想空間ドージョーも消滅していく・・・

君は今や、現実世界に完全なる帰還を果たした。

しかし世界も君も、もはや過去の様相ではない。
世界は監獄ではなく、君は奴隷ではない。

君はニンジャスレイヤー・ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)を直ちに購入するか、もう購入したので読み、そして己自身の細胞から湧き上がる果てしないパワを感じ取ることだろう。

君自身の決断で。

物理書籍Wスレイヤーコン
ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)を紹介する
バトル・ウィズアウト・オナー・ウィズ・ヒューマニティー

おわり

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