2021/8/30~8/5

母を入居させる老人ホームと契約を結び、病院と退院日を打ち合わせして、税理士事務所から相続税計算に必要な書類を提出しろと猛プレッシャーを受けたこの一週間。仕事中にこれらの連絡を返しまくっていたら、いよいよ頭のメモリが足りなくなり、オーバーフローしてしまった。こんなこと仕事中にやらないのが正解なのだが、日程的にそんな余裕はない。

あれこれ打ち合わせをした結果、母親を退院させて介護タクシーで移動する途中ファミレスに立ち寄って税理士と落ち合い、母に相続書類のサインをさせてから老人ホームに移動して入居させるという複合イベントが生まれてしまった。コロナ下で病院もホームも第三者との面会を基本的に禁止しているため、税理士立ち会いでサインをすることが難しく、移動中ならいいだろうということでこんな慌ただしいイベント進行になってしまった。介護と相続と仕事が重なると人生がはちゃめちゃになる。

仕事を終えて家に帰れば、税理士から催促された書類を家中ひっくり返して探す羽目になったのだが、父が死んでさんざん名義変更やら還付の申請やらを済ませたのが数ヶ月前で、それらを全部きちんと管理、記憶などしていない。途中で母が骨折、入院、そして再入院なんかしていたら、なんの書類を書いたかなんて頭の中から吹っ飛んでしまう。家に帰っても書類がない書類がないと涙目で探し回る一週間だった。仕事だって月次決算中なんだぞ、どうしてこうなった。

現実でひどい目にばかりに合っていると、逃げ場が空想的になり、最近の逃避先は豪華客船クルーズの紹介動画だったり、富裕層が購入するスーパーヨット動画だったりする。豪華な内装、豪勢な食事、溢れんばかりの娯楽施設、ラグジュアリーだけど空虚な、高級ショッピングモールを海の上に浮かべたようなクルーズ船を見ているとvaporwaveや80~90年代懐かしのCM集動画を見る時のような、消費社会が提示する豊かさのフレーバーに包まれる感覚に襲われる。

スーパーヨットは豪華客船のような庶民の夢を超えて、富豪が自らのステータスの誇示と節税対策のために買う資産である。我々が想像するヨットの規模よりもむしろクルーズ船に近く、陸のしがらみから逃れ、海の上によりプライベートで親しいものだけを集めてファミリーの結束と支配関係を示す領域。テネットの武器商人が乗っていた船のような権力空間が思い浮かぶ。

船のデザインやフォルムをみていると、我々がガンダムやSF映画などで見たことがありそうなものが多く、空想のメカニックデザインにもこういった富のディティールが潜んでいるんだと気付かされる。空想を現実化させるのが富なのか、富が空想を規定するのか、いずれにせよ富である。

この動画などすべてCGで出来ていのでますます現実感のない、抽象的な富の象徴としてのヨットの姿が見えてきて面白い。

スーパーヨットを買うのは無理でも、一生に一度でいいから豪華客船に乗るくらいならできるな、と思って実際調べてみたら意外と容易に実現できそうだということがわかった。特にダイヤモンド・プリンセス号の記憶が新しいうちはハードルは低そうである。

だが、条件を調べてみると二人以上からの申込みがほとんどで、資金面より同伴者を探すほうが遥かに困難だということがわかってしまった。未だに世間が求める消費主体は世帯持ちであり、お一人様は肩身が狭い。2人分の金を払えばなんとかできる窓口もあるのだろうけど、休暇に家族連れあふれるクルーズ船で所在なくうろつき、豪華な食事が出ても毎回見知らぬ人と相席で、ひたすら豪華な空間に空虚に漂っていたら病んでしまいそうな気がしてきた。どうしたものだろうか。

ふと中国政府のいう精神的なアヘン、電子麻薬という言葉がふと頭をよぎったがそういえばこんなニュース動画があった。

中国で廃墟のようなショッピングモールが増えていて、国営企業が経営するため潰せないまま放置されているそうだ。

次の逃避先は中国の廃墟モール動画かな、などと考えつつ、また現実の忙しさに引き戻されて一週間が始まる。

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