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漫画『少女終末旅行』を読みながら聴くべき音楽アルバム・5選

 『少女終末旅行』はつくみずによる漫画作品。新潮社のウェブコミックサイト・くらげバンチにて2014年2月21日から2018年1月12日まで連載。チトとユーリという2人の少女が愛車のケッテンクラートに乗り、ほとんどの人類が滅んだ終末世界をのんびり旅するという作品です。
 可愛らしい絵と、作り込まれた世界観。「終末世界を舞台にした日常漫画」というギャップ。日常系でありつつも、どこか鬱々としたエモさがあるという、更なるギャップ。どこか人間哲学のようなものすら感じさせる本作。全6巻なので非常に揃えやすく、全人類買うべき漫画です。
 …などという分かり切った説明は今さら不要でしょう。

 この前あまりに暇すぎて、自宅で一人、「最高に合う音楽アルバムと漫画の組み合わせ選手権大会」を開催しました。その時ちょうど『少女終末旅行』を読み返していたからなのか、あるいはこの作品の世界観こそが最も凄まじいものだったからなのか…『少女終末旅行』との組み合わせだけ、妙に沢山思いついてしまいました。
 ということで、それを一つ一つ紹介していきたいと思います。
 ちなみにその大会は、エントリーNo.5・凹沢みなみ『星子画報』× 相対性理論『シンクロニシティーン』が優勝しました。


末廣健一郎 - TVアニメ『少女終末旅行』オリジナル・サウンドトラック

リリース : 2017.12.20

 TVアニメのサウンドトラックです。アニメのサントラを持ち出すのは少々禁じ手な気もしますが、「4選」だとキリが悪かったのでランクインです。
 少女終末旅行の壮大な世界観によく合う、オーケストラ演奏を主としたサウンドトラック。終末世界のイメージを鬱々と描写しようとするのではなく、ポジティブな冒険心をくすぐるような内容になっています。
 壮大な冒険への高揚感を演出しつつ、幻想的でエモーショナルな側面の描写も忘れない。流石は末廣健一郎の仕事だと言わざるを得ません。アニメの雰囲気を決定づけたのはまさしくこの音楽だと言えるでしょう。アニメからそのままの流れで原作を楽しみたい人に特におすすめ。
 私が特に言及したいのは『メインテーマ』を始めとしたケルト音楽的な楽曲たちです。これについては後述します。

Porter Robinson - Worlds

リリース : 2014.8.12

 欧米のシーンだけでなく、日本のエレクトロニック・ミュージックにもクソデカな影響を与えているPorter Robinsonの、1作目のアルバム。
 真っ先に思い浮かんだのはこれです。どこか陰鬱としていて、それでいて壮大な電子音が、興廃した構造的な未来都市を旅する少女終末旅行にめちゃくちゃ合っています。
 1曲目『Divinity』から最後の『Goodbye To a World』まで、アルバム全体を通しての”終末感”。特に『Goodbye To a World』はもう、これ自体が人類史に残る大名曲ですから、少女終末旅行と合わさると終末感が増幅しすぎて逆に心配になるレベルです。
 『Worlds』というタイトルもそうですが、夕空のような背景、上を向いた掌、握っているキューブ…。アートワークもどことなく共通項を感じざるを得ません。まず試してみて欲しいアルバム。

はるまきごはん - ネオドリームトラベラー

リリース : 2018.12.26

 ボカロ好きなら誰もが知っているボカロP・はるまきごはんの、2作目のアルバム。代表曲『メルティランドナイトメア』などが収録。少女終末旅行の「エモ可愛い」の部分に共鳴してくれるアルバム。
 ”少女”、”トラベル”、”世界の終わり”…2つの作品には、ベン図のように重り合った共通のテーマを見つけることが出来ます。『セブンティーナ』『世界が終わるのよ』『地球をあげる』…歌詞やサウンドの中の一つ一つの断片が、メタファーのようにあの終末世界に重なるのです。
 2曲目『コバルトメモリーズ』に関しては、少女終末旅行が発想の元ネタであると私は信じて疑っていません。少女終末旅行のアニメ放映が2017年10月から、『コバルトメモリーズ』の公開がその1ヶ月前の2017年9月と、ぶっちゃけ時期的には微妙なところだったりするのですが、しかし信じて疑っていません。原作ファンの可能性もありますしね。
 そんな『コバルトメモリーズ』を踏まえた文脈から、『波長』というエピソードが収録されている4巻が最も合うでしょう。4巻は全体を通して『波長』から話が広がっていきます。表紙と『ネオドリームトラベラー』のジャケを並べた時の色味もいい感じです。

坂本龍一 - async

リリース : 2017.3.29

 坂本龍一のスタジオ・アルバム。前作『out of noise』から実に8年ぶりであり、最新作『12』を入れて、生前最後から2番目のオリジナル・アルバムです。
 『Worlds』同様、言葉を選ばずに言えばアルバム全体を通してどこか暗く陰鬱とした雰囲気があります。それが終末の世界観と非常に相性が良い。加えてノイズミュージック的要素が、『少女終末旅行』のメカメカしい要素と極めて噛み合っています。
 ピアノとオルガンの耽美な音色が響く1曲目『andata』、タイトル曲にして極めて実験的な『async』、デヴィッド・シルヴィアンの朗読と共に重厚なシンセサイザーや笙の音色が際立つ『LIFE, LIFE』。このアルバムの全てが、それが偶然の邂逅とは思えないほどに、少女終末旅行の構造都市の環境音としての機能を果たしているのです。
 彼女ら2人が旅するこの風景の中では、実際にこの音楽が、この音が、鳴り響いているのではないか。否、鳴り響いているに違いない。そう思わせるほどです。

Enya - A Day Without Rain

リリース : 2000.11.17

 前述しましたが、アニメ『少女終末旅行』のサントラにおける最も秀逸な仕事は『メインテーマ』と、それを始めとしたケルト音楽的な楽曲たちです。その壮大にして神秘的なハーモニーが、この作品にあまりにも合うのです。ケルト音楽的な世界観と少女終末旅行の相性の良さに最初に気づいた人が末廣健一郎なのか他の誰かなのかは知りませんが、とにかくマジで天才だと思います。特にやはり『メインテーマ』は、あまりに素晴らしい。
 そしてケルト音楽が合うのなら、その代表格は合うに決まってると言えます。ということで (少々安直で投げやりなチョイスなような気もしますが) 、エンヤの『A Day Without Rain』。彼女の代表曲である『Only Time』や『Wild Child』が収録されている作品。このアルバムが彼女の作品の中で最も壮大で神秘的で、そして全体を通してどこか優しい。
 この世で一番『少女終末旅行』に合っている音楽アルバムだと思います。あまりに「正解」なので敢えて語ることも特にない。とにかく試してみて欲しいです。


 ちなみにアニメ『少女終末旅行』の2期をやらない理由なんですが、1期は原作・全6巻のうち、4巻の最後のところで終わってるんですよね。もう1クールやろうとすると原作のストックが足りないわけです。アニオリでも、なんなら半クールでもいいから2期やって欲しい。
 ということで今回は以上です!他の記事も是非読んでください!


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