見出し画像

創作童話 けんたはわすれんぼう7/7 (終)

  ドドドドドドーッ
 たきの音がだんだん大きくなってきた。
「あっ、算数ドリルがたきの方へ落ちて行くよ!」
 けんたがさけぶと、おりたたみのかさのパラシュートはぐんぐんスピードを上げて、算数ドリルを追いかけた。
 けんたは、かた方の手をうんとのばして、たきの手前で算数ドリルをキャッチした。
「セーフ!」
 けんたは算数ドリルをしっかりとだきしめた。こんなに算数ドリルをだいじに思ったのは初めてだった。
「宿題がだいなしになるところだったよ。かさくん!やったね!」
 おりたたみのかさは、うれしくなって
「よーし!空中回転ごっこだー!」
と言ってけんたといっしょに宙がえりをした。それは、さか上がりよりでんぐり返しよりかんたんにできた。
 けんたはおもしろくなって、空中前回りと空中後ろ回りを何回も回った。
 しまいにけんたは、止まらなくなった。
  グルルン グルルン
 「ワー!目が回るー」
 けんたとおりたたみのかさは、グルグル回りながら落ちて行った。
  ヒュルヒュルヒュル スットーン
 落ちたところは、けんたの教室だった。
開けはなされたまどのカーテンがゆれていた。
もうすぐ日がくれそうだ。
 けんたはあわててろうかへ飛び出した。
ふと気がつくと、けんたは校門に立っていた。
 じむの先生が笑って言った。
「ずいぶんたくさんわすれものをしたんだなあ」
 家につくと、けんたは算数ドリルを開いてみた。
「あっ、ぜんぶやってあるぞ」
 その時お母さんの声がした。
「けんたー宿題終わったの?」
 けんたはとくいそうに言った。
「学校で終わらせてきちゃったよー」
 けんたはフーッとためいきをついて、算数ドリルをパタンと閉じて言った。
「あっ、またおりたたみのかさをわすれてきちゃった」

                 おわり

#私の作品紹介

この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?