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ほんのわずかな山行記録 8

甲州、武州、信州にまたがる山、それが甲武信ケ岳

ザックが肩に食い込み息が上がるがペースはまずまず順調だ。

緩やかな森歩きの後、急勾配を九十九折にしばらく登り一気に標高を上げると、明るく開けた雁坂峠にたどり着く。

いやーーー、いー天気だ。

富士山が遠くにくっきり浮かんでいる。見上げれば真っ青な空。ほぼ無風。
何とも言えない満足感を感じながら一本とる。

ここから雁坂嶺まで登ればその後は小刻みにアップダウンが続く稜線だ。この日の行程は西破風山から避難小屋へと下って終わりだがこの下りがかなりの急勾配なので要注意。慎重にソロリソロリと足を運ばなければならない。

雁坂峠から
雁坂峠から雁坂嶺へ
何もかも見透かされそうだわ
シラビソの樹林帯を進む
何箇所か視界が開ける場所も
直下に見える笹原に避難小屋がある
予想以上のきつい下りだ

13時、破風山避難小屋に到着。とりあえず昼飯を食って一服する。
いやぁーーー、本当に気持ちいい。気温はかなり低いはずだが日差しが強く、太陽のぬくもりを感じて暖かい。小屋の前の笹原で寝そべってぼーっと景色を眺める。

解放感ハンパない
陽が傾いてくるとさすがに肌寒い
マイナス2度か~
優しい色につつまれる富士山

東の空が群青色なると、さすがに寒くてじっとしていられなくなる。腹もへったので小屋に戻って飯の準備だ。16時ごろに甲武信ヶ岳方面からやってきたオジサマはもう焼酎の湯割りを飲んでいた。金峰山から縦走中のこの方は長年山から遠ざかっていたらしいんだけど、最近になって仕事が落ち着いたので再び始めたんだって。
飯食って荷物を整理しつつ寝床の準備を終えて外に出てみると、すでに漆黒の暗闇が広がっていた。目が慣れてくると遠くの街明かりの影響でなんとなく周りの木々の輪郭がうっすら見えてくる。見上げると空全体に敷きつめられた大小さまざまな星たちが競い合うように輝きを放っていた。まさに満天の星空だ。山の上とはいえ関東でこんなに星が見えるもんなのか!めちゃくちゃ寒いがすべてを着込んで少し寝ころんでいた。
いくつかの流れ星を見ながら明日が楽しみだな~、などとしばらく妄想にふけった。

翌朝、起きたのは5時半ごろだったか。また8時間ほど爆睡。
外に出てみると東の空がオレンジ色に染まりつつあった。
どうやらこの日も快晴だ。

何枚か写真を撮るが低温によるバッテリーの機能低下でカメラが動かねぇ。気温マイナス5度。いいカメラ買うかなぁ。
撮影は断念して出発の準備をすることに。

6時過ぎだったか出発。
当初は体が冷えて動きが悪かったが30分ほどであったまってきた。
1時間半ほど歩き木賊山を越えると視界が開けて甲武信ヶ岳が現れた。きれいな三角形の山容で、拳に似ているから甲武信(こぶし)ヶ岳というのはここから見る限り当てはまらないように思えた。

30分ほど急な勾配を登ると頂上に着いた。

右に八ヶ岳、中央奥には南アルプス、中央やや左手前に金峰山
サイコーの天気だ!
富士山もくっきり見える

頂上に着くと風が強くめちゃくちゃ寒い。寒いんだけど腹が減ってどうにもならない。甲武信小屋まで下りてもう一回飯を食うか考えたけどここで食べることに。残っていたパスタを湯に放り込んでかっ込む。少し生き返ったかも。

風を避けながら30分ほど頂上にいて下降を開始。

下山で歩く戸渡尾根は終始樹林帯。一か所崩落個所があってそこだけ視界が開けていた。

この写真を見ると「陰翳礼讃」の羊羹のくだりを思い出す

すでに痛みはじめていたヒザをかばいながらノロノロと下っていく。
何もない。ただ黙々と下っていくのみだ。

近丸新道と徳ちゃん新道の分岐で一本。ここから急勾配が始まる。
予定通り近丸新道を進むがしばらくしてヒザがダメになってきた。

む~、つらい…

何度も何度も立ち止まりヒザをストレッチしてごまかしながら進む。進まないことにはどうにもならない。急下降が終わり沢を渡ると緩やかな巻道に入るが、これがかなりの荒れようで何箇所かは完全に登山道が崩落していて少し上の迂回路を通ったりした。

しかし、全体として勾配は緩やかで助かる。このまま緩い感じでフェードアウトしてくれるのかと思いながらヒザをかばって歩いていると、崖かと思うような急斜面が現れた。

見た瞬間、完全に心を折られてしまったが進まなければならない。

顔をゆがめながらそ~っと、そ~っと足を置いていく。

こんな歩き方、余計に疲れるし。

胸の中で愚痴を言いながらなんとか登山口にたどり着くことができた。
通常なら3時間程度の行程だろうがなんと4時間半を要したのでした。
いや~、今回も疲れた。やられた。
すんなりいかんなぁw

左の近丸新道を選択
アタマから水をかぶりクールダウン
冷たくて気持ちよかった
荒れ気味の巻道
やっとついた~、という感じ
ヨレヨレで泣きそう

今回も充実感や達成感はハンパないのだが、さすがにヒザがつらかった。日頃から気をつけてはいるものの、感覚としては悪化している感じ。この後は本格的に冬となるので春まではヒザを治すことに集中することにした。この頃になると登山は体が動く限り一生続けていくに違いないと確信していたし、そうありたいと願っていたので、その実現につながる事ならどんなことでも我慢できた。山に行かなくても知識を得ることはできる。


そう、できることはいくらでもある。
そう言い聞かせながらしばらく山はお休みとなるのでした。

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