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『天気の子』は『君の名は。』のアンサーストーリーである【映画レビュー】

※本記事は映画『天気の子』のネタバレを含んでいます。未視聴の方は視聴後にお読みすることをお勧めします。

◯前書き

先日、新海誠監督の映画『天気の子』を鑑賞した。私は新海監督が好きで彼の作品は『ほしのこえ』などの長編作品は全て視聴している。

映画の知識に特別明るい訳ではないので、専門的な深い考察は私にはできない。だが、彼の作品に込められた映像美や世界観には共感しとても感銘を受けている。そこで『天気の子』を視聴した新海監督好きの私なりに感想を書いていこうと思う。

◯『天気の子』は『君の名は。』のアンサーストーリー?

さっそくブログタイトルに触れていこう。私は映画鑑賞前に以下の新海監督インタビューの言葉が気になっていた。

"「『君の名は。』は災害をなかったことにする映画だという意見をいただいた。僕は災害が起きるであろう未来を変えようとする映画、あなたが生きていたら良かったのにという強い願いを形にした映画を作ったつもりだった。(中略)「彼らが怒らない映画を作るべきか否かを考えたとき、僕は、あの人たちをもっと怒らせる映画を作りたいなと。"

実はもうこれがほぼ答えなのだが、もう少し掘り下げていこうと思う。

『君の名は。』ある意味で「災害を回避した結果の中で結ばれる」という結末となっている。その上で『天気の子』は「災害を受け入れた結果、それを背負い結ばれる」という結末だ。

これが「2つの映画が対となっており、本作がアンサーストーリーになっている」理由である。

◯主人公の成長と新海挑戦の挑戦

『君の名は。』はある意味で世界を救う覚悟を通して成長していく。主人公の瀧はヒロインの三葉と糸守町を救い、とても勇敢だった。どちらも救いその後に結ばれ、円満ハッピーエンドで締めくくれた。

ただ、これを現実的に考えるとちょっとズルい。何も失わずに勇気さえあれば全て救えるという代償のないストーリーだ。

私は個人的にこういったストーリーより現実のスパイスが入っている方が好きだ。(彼の他作品でいえば、「言の葉の庭」や「秒速」のようなキリッとした味わいが…)

対して本作は『君の名は。』とは大きく異なる。世界とヒロインの全てを救うことは許されなかった。主人公の中で「世界」と「ヒロイン」どちらを取るべきかの選択を委ねられた。

その姿には前作にはなかった大きな葛藤がある。「世界を諦め、ヒロインを選択する」その決断が本作の最も情動を揺さぶられるシーンだ。

これは「主人公瀧」から「主人公帆高」へと受け継がれた成長である。それと同時に「世界を諦める」ストーリーを選択した「新海監督の挑戦」である。

世界を救わずに終わることで、「被害を受けた人はどうなるの?」という感想は出てくる。これをハッピーエンドにするには、世界の代償を超える納得感を演出しなければならない。

私個人の感想として本作は、それを十分に達成していたと感じる。物語を通しての主人公の行動や言葉選び等から感情に共感し、納得できる心情になっていた。

「世界を諦める愛の表現は、世界を救う愛の表現より難しいと思う。」

つまり新海監督は『君の名は。』より高いハードルを『天気の子』で超えてきたのだ。

◯後書き

面白さだけでいうならば『君の名は。』の方が実際評価は高い。テンポもストーリーも楽曲も前作は最高だった。(新海ファンとしては賛否あるのだが、それは別の話…)

ただ、本作を評価したいのは前作を踏まえて挑戦している点だ。『君の名は。』と同等なクオリティの上で「異なる味わい」を出している。あれだけのヒットを出した後に挑戦して失敗しないのは純粋に素晴らしい

個人的には2作ヒットしたから、次回作はもっと挑戦して欲しいと思う。(「星を追う子ども」のリベンジか…「秒速」みたいなやつか…攻めたやつをぜひ)

本記事を書いた人→ @like_amaiokashi




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