見出し画像

BRTの車窓と、標識と、盛り土と【三陸旅行記#2】

地元の駅から鈍行に揺られ続けること、半日。

前谷地駅にやってきたのは、真っ赤なバスだった。これがBRT。

画像1

南三陸さんさん商店街へ

ポップなイラストが前面に描かれた真っ赤なバス。「鉄道の代行輸送」という立ち位置から、もう少し大人しい色を勝手にイメージしていた。しかし中は普通のバスだった。ただ、前面にテレビ画面のようなものがあり、ニュースが流れていた。東京の新型車両ばりのサービスである。

前谷地駅(の前のバスターミナル、と言っても通じそうな場所)を出たバスは、近隣の畑の間の道を抜け、山沿いを走っていく。
陸を走っている間は普通のバスと変わりないような車窓だったが、海沿いにさしかかると一変。

画像2

道路の海側は、どこもかしこも盛り土の工事中だった。海を見れば、常に土の明るい茶色が目に入る。

志津川駅で途中下車して、「南三陸さんさん商店街」に立ち寄った。
復興関連のニュースでよく報道される場所だ。

商店街の前も工事中。横断歩道の位置が曖昧で、どこを渡ればよいのかよくわからない。

画像3

さらに平日昼間、ランチタイムとディナータイムの間なので、人はまばら。休憩時間の店も多かった。
震災関連の写真展示もあるようだったが、あいにく休館日。
明日も旅があるので、自慢の海鮮も買えないや、となり、結果「だだっ広いところ」に終わってしまった。
曜日くらいちゃんと下調べしてくるべきだった……旅慣れていないゆえの失敗である。

とはいえ文具店で、普通に欲しかった便箋を購入。
さらに天気もよかったので、普通に食べたかった削りイチゴを買う。

食べる場所は店の前にもあった。しかしせっかくなので、お店の裏手に向かい、あたりの景色を眺めながら食べることにした。
目線の先には川と、やはり盛り土工事中の場所と、盛り土工事が終わったらしい場所。

画像4

現地の農家さんが作ったというイチゴは、凍っても風味がよかった。優しい甘さの削りイチゴと、周囲のどこか荒涼とした風景と、3月の薄曇りの陽ざし、まだ冷たい風。温かいのだけど、どこか物寂しい感覚だった。

この写真、後ろにぼや~っと映っているのが震災遺構の建物ではないか?というのは、あとで気づいたこと。

再びBRT。

前谷地から再びBRTに乗り、今度はホテルを取ってある気仙沼を目指す。

BRTの走る道路は海沿いを抜け、陸に上がり、また海に寄り…とカーブを重ねていた。
車窓をよく見ていると、道路の上方に黄色い標識が見える。

「これより津波浸水地域」
「ここまで津波浸水地域」

走っても走っても、盛り土の工事地帯は続く。
盛り土工事は進んでいるのだろうし、ここまでの行程で震災当時を思わせる風景、がれきなどの実物を見ることは、さすがになかった。
だから少なくとも、「復興は進んでいる」のだろう。
しかし、今は真っ平にならされている場所でも、以前は家があったり、畑があったりしたのだろう……と思うと、2011年に津波が奪っていったものの巨大さを感じた。

この工事が完成したところで、津波が奪っていった街並み、生活、人の命、モノ、その他いろんなものは、取り戻すことはできない。
そういう意味で、「復興」つまり「再び興る」ことが進んでも、手放しに喜ぶことはできないのかもしれない。

この街の傷が癒え、この街で震災が思い出話として語り伝えられるようになるまではどれだけ、果てしない時間がかかるのだろう。


…夕暮れ時も手伝って、そんなやるせない気持ちになりながら、気仙沼へ到着。

3月13日の行程はここで終わり、の予定だった。
しかし私にはもう1箇所、行きたい場所があった。
日没後ということもあり、行くかどうか迷っていたのだが、結局、行くことを決断した。

「奇跡の一本松」のライトアップを見に。

~続く~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?