公認会計士試験 7年間の軌跡

 私が公認会計士を目指し出してから、はや7年が経った。その間、身の回りの人々を振り回しながらも、いろいろなことがあった。公認会計士試験という沼にハマってから抜け出すまで、私の人生を振り返る上では無かったことには出来ない7年間の決してまっすぐな道ではなかったここまでの軌跡を、自分のための備忘録として残しておきたいと思う。あくまで自分のための記録なので、読まれる方はそれを踏まえて読んでほしい。

⓪公認会計士を目指すまで

 正直小学校時代が一番賢かった時期だと思う。関西の最大手中学受験塾である浜学園で、公開テスト10傑にはなかなか入れなかったが10位~20位が定位置で、灘中模試では不合格になることもなく、無事灘中に進学。本番では理科で事故ったものの、算数国語がそれなりにでき、点数上はギリギリであったがなんとか合格はできた。
 しかしその後は、小学校時代と比べて上には上がいる現実を見せつけられ、学年下1/3が定位置の成績で6年間を過ごした。必要以上にみんなとの間に地頭の壁のようなものを感じ、普段の勉強は必要最低限だけするようになってしまう。一方で、課外活動では中学バレー部の部長(ベンチにいる部長という情けないものだったが)や生徒会副会長などを経験し、現芦屋市長など優秀な同級生や先輩後輩との人脈を得ることができた。在学中にうっすらと、将来は教育系・鉄道系・金融系の仕事がしたいと朧げにイメージをし始め、特に金融系に進むなら経済学部だろうと、得意科目は圧倒的に理系科目であったが文系に進み、京都大学経済学部に進学する。
 当時の京大経済はいわゆる「パラ経」と言われており、入試の偏差値は文系学部の中で一番高いものの、授業にほとんど出席しなくても単位は取れる、試験では分厚い下駄が履かされる、卒論もない、という学業面ではそこまで力を入れずとも卒業できてしまう環境であった。ただ2年生からは強制ではないものの各教授が指導教官となる「ゼミ」に所属し、週一程度のペースでゼミ形式の授業が行われる。そこで私が選び、所属したのが、現企業会計審議会会長を務めておられる徳賀教授のゼミだった。もちろん会計専攻であり、同期は最終的に9人中7人が会計士になる(しかも僕以外は全員一発合格)という会計士特化なゼミであった。その中にいると、やはり会計士への道を意識せざるを得ず、将来金融系の仕事をしていくなら一番強い資格だよなと思い、当時最も多数派であった資格の大原に申し込んだ。このとき、まさか試験に合格するまで7年もかかるとは思いもしなかったが……。

①大学時代
 2016年12月、当時最大手であった資格の大原の京都校1.5年オータムコースで会計士試験の勉強をスタートした。京大入学以来仲良くしていたF君と同じコース・クラスにて始めることになり、ともに切磋琢磨できればと思っていた。しかしその時私は既に関西最大手の中学受験塾である浜学園にて非常勤の算数科講師として勤務を始めており、また灘中出身であったことからかつて小学生時代に私自身がお世話になっていた先生に見初められ(?)、講師初年度から上位クラスや灘コースにも関与するようになっていた。そこでの仕事は、そもそも幼少期から「学校の先生になりたい」など講師職に興味を持っていた下地もあり、やりがいや楽しさの塊だった。岡山や名古屋など色々な教室を飛び回り色々な子供たちを教え、しかも大好きな「算数」というものを教えられている当時の状況は、一生の仕事にしてもいいなとぼんやり考えるほどだった。そんな状況で大学の授業、塾講師、そして会計士試験の勉強と3足のわらじを履いていた私は、当然のことながら公認会計士の勉強が中途半端になった。特に、同じゼミの人たちがサークル活動を含め大学生生活をやりながらみんな一発で受かっていっていたのを見ていた私は、この試験を舐めていた節があったと思う。結果、管理会計こそ当時教えていた算数という科目にかなり近いものであるためずっと得意科目であったが、財務会計の特に金融商品、連結会計がどうもしっくりこず、また企業法・監査論についてはそもそも暗記が苦手・大嫌いだったのもあってちゃんと手を付けず、短答式に3連敗した。得点率は52%⇒56%⇒60%と徐々に上がっていったものの、これ以上継続して万が一次の5月短答で不合格だった場合就職浪人してしまうことが確定するため、休学までして1年間大学の卒業をずらしておりかつお金を出してもらっていた実家に説明がつかないこともあって会計士試験から撤退、大原の先生に電話でその旨伝えて一般の就職活動を始めた。幸いその後スムーズにJR西日本から総合職の内定をもらい、翌春から入社することになった。最初一緒に勉強を始めたF君は、ストレートで会計士試験に合格したうえ、超上位合格を果たしたらしい。

②勉強再開・簿記取得まで
 紆余曲折の末JR西日本に就職した私は、一旦兵庫県の実家に戻って会社員生活を始めようとしたわけだが、その時2020年4月。ちょうど新型コロナウイルスが出てきた頃である。新入社員研修5日目にして緊急事態宣言が発令、その日を最後に研修が打ち切り、当時はまだリモートでの研修環境が整っているはずもなく、まるまる1か月自宅に引きこもるだけの生活が始まった(社内資格の勉強だけやるよう言い渡されていた)。そんなこんなで、コロナ禍が始まったわけだが、その影響でJR西はこれまで3年間で稼いできた当期純利益を1年で当期純損失として出すような経営状況になり、ボーナスも半減以下という厳しい状況になった。また大学1年生のときから付き合っていた彼女が次の春に大学を卒業することになったためそのタイミングで同棲しようという話になったため、入社9か月目くらいで同棲することになったが、彼女はずっとゆくゆくは出身地である東京に戻りたいと言っており、もし結婚するならば私がJR西日本に今後居続けては基本的にその願いを叶えられないこと、またJRの当時の経営状況、そして会計士から撤退したという私の会計士に対する未練があったこと、以上3点の理由により、東京で会計士業をすることがベストという結論を出し、社会人2年目の春(2021年5月)に会計士の勉強を再開した。もちろん居心地が悪くなるので会社関連の人にはほんの一部の人を除き秘密にしていた。
 予備校選びから始まるわけだが、当然最初に思いつくのは昔通っていた資格の大原である。しかし色々調べていくうちに、最近は新進気鋭のCPA会計学院なるものがあること、そしてクレアールという一発で試験に受かれば支払った受講料が全額返金どころか少しプラスになるというヤバい予備校があるということを知った。私は高校時代数学が得意で(京大模試で数学偏差値85.0などをとったこともある)、得意ならば覚えることがかなり少なく勉強の負担が小さく済むことから統計学選択にしようと考えていたため、統計学講座がなかったCPA会計学院はまず候補から外れた。当時彼女と新大阪に住んでいたため、近くに資格の大原大阪校があったため最初は有力だったのだが、クレアールという全額返金制度がある通信特化の謎予備校があることを知ってから、この制度が社会人をしながら勉強を進めて一発で合格するモチベーションになるのでは?という考え方から、結果的にクレアールの3.5年トータルセーフティーコースに決定した。このコースは、合格祝い金や早期合格未受講分返金、さらに試験受験料予備校負担などにより、受かりさえすれば本当に経済的負担がゼロになる。最初に支払う受講料も大手予備校に比べたら2割程度安い(キャンペーン等もやっていたので50万円代で済んだ)。「非常識合格法」というものを標榜しており、重要な範囲に特化した勉強で合格水準までたどり着けるという考え方をベースに、テキストも大手予備校の半分以下(企業法除く)の厚さである。確かに網羅性には難があるのは事実であり受験生目線不安を覚えるのも十分理解できるが、正直社会人受験生ならば限られた時間で合格せねばならず、テキスト内容が多すぎると消化不良を起こすのは目に見えていることから、重要なところに特化したカリキュラムは合理的な考え方であり、社会人受験生の皆さんにはもっと知ってほしい予備校である。
 クレアールのカリキュラム上、簿記1級の延長線上に短答・論文があるという考え方のもと、最初は簿記講座のカリキュラムに乗せられる。まず6月末の日商簿記検定1級を受験することになり、申し込みから準備期間は1か月半しかなかったものの、最初の半月で商業簿記(財務)部分の講座を2倍速で見て思い出し作業をし、直前1か月はテキストの例題を解きまくった。特に連結会計系に大幅に時間を割いた。工業簿記(管理)については、昔から管理会計論が得意科目であったことから時間的制約もあり講義は見ず、テキストの例題をベースに忘れていそうなところだけを解いた。クレアールの簿記講座はかなり質が高く、大手予備校に決して負けてはいないと思う。
 当時関西地域で車掌として勤務しており、乗務員詰所の片隅で教材を開き問題演習をしていた。また乗務員は泊まりでの24時間勤務であるものの、1回出社して2日分働いたことになり、翌朝は朝10時頃退勤となるのでそのあとは家でまとまった時間も取れるので、ある意味勉強には適した環境だったのかもしれない。結果、本番では比較的苦手にしていた内容があまり出ないという追い風が吹いたこともあり、商業43/50、工業47/50の合計点90/100と高得点で合格できた(感覚的にこんなにできてないので、かなり下駄を履かされていると思う。絶対評価試験と見せかけた相対評価試験ですね)。この結果により計算科目にはある程度自信がつき、この年の12月短答試験に向けて弾みがついたように思う。

③短答式試験
 7月から本格的に短答式試験の勉強をスタートする。
クレアール生ならほとんどが不安にかられて読むこととなる、クレダネさんのnoteを私も例にもれず読み込んだ。
僕が提供できるクレアールの全情報|クレダネ (note.com)
ここに書かれている情報を私なりに解釈し、私の現状に置き換えて何が必要かを自分なりに分析し、学習計画を頭の中でふわっとイメージし、実行していった。ここでふわっとイメージするだけで具体的なイメージをせずに勉強したのは、計画通りに自己研鑽的な行動をすることが昔から苦手だからである。そのため、可能な限り進め、終わらなかったらそれはそれでよく、試験に向かって出来る限りのことをする、という割り切った発想をすることにした。
以下、計算科目と理論科目に分けて記すこととする。
Ⅰ計算科目
簿記1級の試験が終わった後、クレアールの会計士講座としての財務計算の講義が始まった。簿記1級の内容を全体的に深掘りしていくような内容である。財務計算は、我らが山田先生のあたかも目の前で行われている授業かのごとく優しい雰囲気の授業は今振り返っても心地良い。そしてなんといってもわかりやすかった。また、連結・企業結合については私の苦手分野であることが明らかだったため、かなり意識的に集中して取り組んだ。水準としてはテキストの例題レベルは解ける状態を目標とした。一方で管理の計算は、原価計算分野は昔散々やったので答練で思い出し演習をすればいいやと考え、また管理会計分野は昔塾で教えていた算数の延長線上にあるような内容であり、結局講義を視聴することはなく、いきなり答練に立ち向かった。
アウトプットについては基本的に、財務・管理ともにクレアールの短答答練のみである。毎日答練1本をノルマとして掲げ、片っ端からやっていった。ただ直しは答えの数値に辿り着くまではしっかりするものの、2周3周とすることはなくやりきりだった。今振り返っても、時間がなかったためこうするしかなかったし、何よりも計算の勘を簿記1級の時点から鈍らせないよう毎日継続させたことが大事だったと思う。不安になって最後書店で短答式対策財務計算問題を買ってしまったが、ほとんど触ることはなかった。
Ⅱ理論科目
簿記1級の受験を終え7月頭から理論講義視聴が始まった。ここまで理論科目の勉強にはタッチしておらず、大学生時代に中途半端にかじっていた時の記憶が残っているだけである。昔からそうだったのだが、私は手帳に書いておいた予定通りに映像講義を視聴することができない人間だ。予定を立てるのは大好きなのに、映像視聴という誰にも見られていない状況での予定遂行が苦手なのである。全く予定通りには進まなかったものの、なんとかまとまった時間を見つけては監査論・企業法・財務理論の講義を見ることにした。当時まだ車掌だったため、乗務員詰所で私用携帯を使って講義動画を見ていた。Y!Mobileだったので通信制限に毎月かかるのが面倒だったが……。やはり相変わらず理論の授業やそれを暗記するという作業は嫌いであり、集中して見れていたかはいささか疑問符だらけである。企業法に関しては山本先生の講義の雰囲気がユルくてお気に入りであり、最後まで完走した。また監査論に関しても堀江先生の講義は範囲が相当コンパクトにまとまっているのでサラサラ見ることができた。ただ石井先生の財務会計理論については範囲も広く動画も多く、結局最後まで見ることを挫折してしまった。そして9月から、順次各科目の理論問題演習に移ることとなる。理論科目の問題演習に用いたのは、LECが出版している一問一答問題集である。
一問一答問題集 - 公認会計士|LEC東京リーガルマインド (lec-jp.com)
4科目分のこの分厚い本を購入し、本試験までこれを回し続けた。正直本試験まで残り2ヶ月半、鉄道乗務員をしながらの勉強と考えると時間がなさすぎるため、テキストや講義にはほとんど戻ることをせず、ただ一問一答のみで本試験に臨むことになった。代わりに、出来なかった問題には付箋をつけると共にミスノートを作り、隙間時間でも見返すことができるようにした。乗務員詰所で分厚い本を1冊だけ持って行って開く日もあれば、ミスノートだけ持って行って読む日もあった。その結果、最終的には財務理論、監査論、管理の原価計算部分については4周ほど、苦手なことがわかっていた企業法については5周、逆にコスパが悪いと思った管理の管理会計部分については2周するかしないかくらいの進捗だった。
その後、短答直前1ヶ月でやっと短答答練に手をつけることにした。一問一答問題集の強度を半分くらいにして、答練の時間に回した。

 模試については、11月にLECと大原の公開模試を一度ずつだけ受験した。大原模試の結果が残っていたので掲出する。

大原11/14実施
企業法80
管理会計論75(計算40/60 理論35/40)
監査論55
財務会計論128(計算88/120 理論40/80)
Σ338  (67.6% 221位/1931位)

 もう一つの模試、LECについては11/21に実施されたのだが、結果は無かったことにした。確か、Σ230とかだったはずである。確か結果返却も見ていない。難しすぎ、というかやりすぎである。1週間しか間が空いておらず実力差がそこまであるわけないにも関わらず、この結果である。大原は本試験の模試として良い難易度の調整だったと思うが、LECは実力をちゃんと測れる問題とは思えなかった……。本試験が難化したらこんなことになってしまうのか…と余計に不安にさせる問題であった。いつも一問一答の問題集でお世話になっていたのであまり批判したくないですが……。

 模試を受けて1,2ヶ月後、いよいよ本試験を迎える。勉強面では計算・理論科目どちらも、完全アウトプット特化の勉強法で本番に臨んだ。前日土曜に車掌として最終乗務(このあと運転士コースに進むことになる。後述)を終えた直後である。確か午前10時頃退勤の奈良線の行路だったか。母親が終着京都駅で出迎えてくれ、最後のロッカー整理や職場への最後の挨拶を終えなんだかんだ家に帰ったのは17時頃。ほぼ前日は勉強できなかったはずだ。早めに眠りにつき、翌日の本試験の日を迎える。
関西大学にて行われた私にとって3年ぶり4度目の短答式試験となったその結果は、以下の通りである。

本番12/12実施
企業法65
管理会計論90(計算60/60、理論30/40)
監査論85
財務会計論144(計算88/112、理論56/88)
Σ384(76.8%)

 正直本試験直後の感覚は、全く自信がなかった。初っ端の企業法は75が目標だったができた気が全然せず、管理は75点くらいかなと思いつつわからない問題を2つ適当に埋め、監査論は半分くらいしか自信を持って答えられなかった。唯一財務だけは戦えた気がして、しかし1問あたりの配点がでかいため怖さは他科目と遜色なかった。しかし採点してみると、企業法と財務会計論は感覚通りだったが、管理は適当に埋めた問題が2問両方合っておりなんと9割、監査論は感覚と相当な乖離があり85点もあった。まさに神風が吹いた瞬間である。と同時に、短答は本当に水物の試験だなと思った。
 ボーダー予想はネットを観測してみると60代後半であることがわかり(結局68%)、結果を見れば上位合格となった。これで年末は落ち着いて迎えられ、仕事もやりたかった電車の運転士の仕事に集中できるぞと安堵した。

④電車の運転士と幻の論文式試験
 短答後、とりあえず年内は羽を伸ばすつもりで何もしなかった。仕事では短答式試験の翌日月曜日から遂に運転士研修がスタート、車で言うと教習所みたいなところに入所し、まずは学科ということで平日9:45出社18:30退勤という日々が始まった。なんとここでは4ヶ月間も学科勉強があり、中間試験や最後には修了試験(これは国家試験)もある。8科目もあり、試験前は試験勉強をそれなりに身を入れてやる必要がある。ただ、そもそも電車自体が好きな僕は運転理論など楽しく感じる教科も多く、鉄道車両という教科は一般人は絶対に知り得ないであろう車両構造などの細かい知識や用語まで覚えるためキツく感じることもあったが勉強内容自体は楽しくできた。ただ、いわゆる学校のようなところで人の授業を聞くという行為がそもそも苦手というか嫌いな僕は日増しに毎週毎週続く同じような日常が辛くなってきた。しかし実技講習が始まる4月まで耐えれば…!という意識のもと、なんとか最後までやり切りました。
 一方論文式試験の勉強はどうなっていたかというと、やっぱり前述のクレダネさんの記事に影響を受け、まず計算力の維持として財務計算と管理会計のCPAコントレを正規ルート(公式HPから)調達してそれに取り掛かることにした。噂には聞いていたが、流石の分量でありなかなか進まない。しかし時間はあるとたかを括り、ゆっくりと進めていくことにした。
 租税法については大学時代大原で数ページだけで放置していたためほぼ知識は0に近く、完全ゼロペースでクレアール山幡先生の映像講義を定期的に見ていた。ただ、なんとなくクレアールのテキストの例題だけでは身についていない、というかアウトプットが足りない感覚が少しあったので、こちらはメルカリにてCPAコントレを調達、着手していくことにした。勉強時間の6割くらいを租税法が占めていたと思う。
 監査論についてはクレダネさんの影響でCPAに浮気した。監査論の単科を取り、答練はないけど論文対策講義およびインプット教材、アウトプット教材を手に入れた。松本先生の授業をwebで見れたため、1.7倍速くらいにして全部見切った。ただアウトプットする時間はなく、この年は講義を聞くだけで終わった。
 そして選択科目。租税法と並行して統計学のクレアールの講義も見てみるものの、本試験の問題に比べてちょっと理論的な方に傾倒しすぎているような気がしており、講義視聴はやめて答練演習ベースの学習に切り替えた。
そのほかの科目である企業法、財務理論、管理理論については春以降でいいやと思い一旦放置することになった。
 ところが、である。その後無事4月に運転士科の学科講習が終了したものの、身近でとある事件(詳細は語らないが、人生で経験する人はほとんどいないだろういわゆる「事件」である)が起き引っ越しを余儀なくされた。また4月以降始まった運転士の実技講習が想定以上に心身ともに大変であったことなどから、会計士試験の勉強に割けるリソースが少なくなり、最初はいけるだろうとたかを踏んでいた余裕が無くなった結果、いつのまにか夏になり、論文式試験のための勉強がほとんど何もできていない状況になってしまった。
 電車の運転士の実技講習とは、指導操縦者と呼ばれるベテラン運転士(親方と呼ばれる)が我々見習い運転士一人一人につき、約半年間の間勤務中はほぼ寝食を共にし営業列車で親方の指導を受けながら電車の操縦を学ぶというものである。私が配属された運転士区所は、おそらく全国のJRの中で最も扱う車種や路線が多く、覚えるべきことが大量にある区所であった。運転スキルだけでなく、線路の勾配や制限速度、カーブ半径、信号機の見方、確認方法などを身につけなければならない。これらは担当線路が多ければ多いほど膨大になる。そして半年弱の実技講習を終え親方の合格が出れば、修了試験がある。故障時の応急処置やブレーキが的確にかけれるかなど走行試験など試験項目は多岐にわたる。これらも会計士試験と同様に国家試験であるため合格しなければ国土交通省からの免許が交付されず、独り立ちできる運転士となることは出来ない。そして何を隠そう、この試験が8月中旬に設定されたのである。そう、論文式試験と時期が被った。結果的には多少ズレたのであるが、2つの国家試験のための準備をすることは僕のキャパシティでは出来なかったほか、何より人命を直接多数預かる運転士として業務に集中出来なくなってしまうことは許されないと思ったことから、5月頃にはもう既にこの年の論文式試験は受験しないことに決めた。会計学(というより管理会計)や統計学くらいなら科目合格を狙いに行っても良かったかもしれないが、そうなると来年の試験の得点源がなくなってしまうというデメリットもあることから、結局本試験を欠席した。

⑤転職
 実は、短答式試験に合格した2021年12月の直後の大晦日、中高大の友人であるS君と飲む機会があり、そこでS君が某big4の受験生採用制度を使い転職している話を聞いた。話を聞くうち、友人紹介制度があること、定時で返されその後は勉強に集中できる環境で一定の収入を得ることができる環境があること、試験直前は2ヶ月の試験勉強休暇が得られること、受かったら結構多額の祝金が支給されること、そして監査の実務経験としてその勤務期間がカウントされ、会計士登録を早められる可能性があることを知った。もともと既にこの試験に受かったらJR西を退職するつもりであった私は、今の運転士経験が終わるタイミング(総合職なので、ずっと運転士でいられるわけではなく、キャリアフローの一環として次の部署に異動することが決まっていた)でS君の監査法人に転職してしまい、東京に戻りたい妻とともに東京に転居することを決めた。このことも、本試験を欠席した大きな一つの理由である。
 関西にいた秋頃から、どのように来夏の論文式試験に立ち向かうか、改めて検討し始めることとした。ここまでの人生で僕は家ではダラけてしまい計画通り勉強できないこと、またいい感じの自習室が欲しいこと、相対試験であることから不安にならない程度の母集団での演習を積みたいことなどから、大原、TAC、CPAのどこかの演習講座を取ろうということになった。資料請求や関西の校舎に受講相談を申し込んでみてあれこれ考えた結果、まず統計学のないCPAは候補から外れ、大原とTACになったが、両方の京都校に受講相談に行ったもののさほど変わらない印象を受けたので、ならばと大学時代通っていて馴染みの強い大原にお世話になることを決めた。選んだコースは上級論文演習合格コース。計算演習(いわゆるステップ演習)と答練と模試、また各科目の単発補講が入ったパックである。テキスト講義付きのフルパックを申し込むと30万を超えてくる上、講義なんて聞いてる時間はないと判断し、京都校御手洗先生のアドバイスもあり、アウトプット特化のパックにした。
 11月の下旬に大原の特待生試験があり、それに受かると最大70%の受講料割引が受けられ、この試験は財務と管理の計算問題のみである。この試験に向けて、6月頃から止まっていた試験勉強を9月に再開し、CPAコントレを使って計算問題をやり出した。1日にこれだけやるぞという目標はあえて決めず、できる限り進めることにした。その前後ではJRでは無事運転士試験の合格が出て、免許が交付され、後は独り立ちのための総仕上げとして営業列車での運転訓練のラストスパートの時期であったため、ある程度プライベート・休みの時間を確保しつつ、程々の強度で隙間時間を縫って進めていった。結果的に2ヶ月間で財務管理とも全範囲(重要度上◎か◯がついているもののみ)を1周だけ解いた。直し等はしたものの後日解き直しはできず。結果、特待生試験は全体上位2割?に入り、30%割引の権利を得て、15万程度の学費で申し込むことができた。
 JR西では11月末についに独り立ちのお許しが出て、1人で電車を運転し始めた。車掌時代も1人で乗務していたわけであるが、やはり列車の先頭で操縦するとなると訳が違い、とても緊張する。特に新快速は130km/hでの運転で、電車はすぐには止まれないとはまさにそうで、1秒でもブレーキをかけるのが遅れると急ブレーキになったり止まりきれなかったりする。結局1人で乗ったのは泊まり勤務ちょうど10回分だけであったが、余裕がある訳なく終わった。しかし、やはりこの巨大な鉄の塊を動かしているという事実に感動するし、貴重すぎる経験ができたなと思う。113系の空気指令式の国鉄時代の電車も引退間近でギリギリ運転できたのも良い思い出だ。当時は運転しにくいから嫌だったけど。
 監査法人間で交わされている採用協定(12月まで内定出しちゃだめだよっていうアレ)が、論文式試験を受けていなくても短答式試験に合格している者も対象になってしまうことを原因に、転職・内定が確定するまでちょっとしたトラブルがあったものの、2022年大晦日付でJR西を退職、2023年元旦付でS君のいる監査法人に転職し、同時に関西から関東に転居して東京で妻との2人暮らしを始めた。年末の有休消化期間を使って中国地方四国地方に旅行に行き、年越しサンライズで東京に降り立ったのは良い思い出になった。資格の大原も関東の最寄りの校舎に移籍し、受験生採用として監査法人の東京事務所に転職した。

⑥論文式試験へ
 年明けから、いよいよ監査法人で働きながら8月の試験に向けた試験勉強を始めることになった。
 仕事面では、契約上残業と出張が禁止。定時で帰れるよう仕事量も調整され、9:30-17:30勤務でその後は受験勉強をするよう言い渡される。ただ、コロナ禍の名残で相当テレワーク化が進んでおり、週1-2の出勤だけで良かったので、定時後の勉強時間は移動時間などの無駄が少なく助かった。基本的に定時退社後、晩御飯を食べて18:30頃から21:30くらいまで勉強するという生活となった。ただ、頭脳労働であるため特に最初は退社後も疲労でなかなか勉強できず、6月に試験休暇(後述)に突入するまでは平日で1日平均2時間程度しか勉強できていなかったように思う。土日は1日平均5時間くらいの勉強だった。やはり丸一日勉強することは自分には荷が重かった。
 さらにここで、春先くらいから妻が体調を崩してしまった。ちょうど監査法人の繁忙期に当たるGW前後かなり体調が悪そうで、私も仕事量が受験生採用といえど増える時期だったので夫婦ともどもかなりきつい時期で、4,5月はほとんど勉強できていなかった。繁忙期明けくらいから妻が病状の悪化により東大病院に入院することになってしまい、繁忙期が明け仕事が一段落したくらいからは、週4で病院にお見舞いに行きつつ予備校に通い勉強をすることとなった。
 ちょうどその直後6月頭くらいからは試験休暇に突入して仕事から解放され、まだその時期は妻の入院期間中ではあったが比較的生活に余裕が出てきた。監査法人事務所の図書館で勉強ができたこの頃から本試験までstudyplusに勉強時間を記録し始め、最後2ヶ月は1日平均7時間前後の勉強ができたように思う(トイレ等の時間はタイマーを止めてこれ)。妻の体調も徐々に安定し始め、我が家は落ち着きを見せ始めた。そしてこのまま本試験に突入する。
ここからは本試験前半年間の論文式試験勉強について、科目別に記載する。科目により利用した予備校・教材が異なる。

❶財務会計論(会計学午後)(得点偏差値:65.4)
 得意科目という自信は一切ない科目であったが、論文の結果を見てみると最も偏差値の高い科目となった。特に第3問偏差値72.25、第5問66.5と財務計算部分で相当にアドバンテージをとれたことになる。以下、計算と理論に分けて述べる。
Ⅰ計算部分
 資格の大原のステップ演習および論文答練(計12回)を基本として一部CPAのコントレを使用した。ステップ答練は定期的に計14回?あり、各1時間の計算練習が行える。また論文答練でも内容のうちの半分弱は計算問題であるため、こちらも含めると結構な量の計算練習が積めるので、後述の企業結合部分を除きこれ以外の教材には着手しなかった。
 ステップ演習・論文答練は共に大原の立川校・水道橋校で教室で受験する日もあれば家で行う日もあり、これはその日の都合と気分で変えた。ステップ答練については基本的には実施⇒直しをしてそれっきりで1周回した後、本試験2か月前から問題解説をざっと見て頭に入っていなかった知識のみをノートに書きだし未定着ポイントだけを集めた早見ノートを作成、隙間時間で確認できるようにした。また論文答練についても、最初は実施⇒直しだけで手一杯だったが、本試験1か月前くらいからは答練の計算部分(第3問と第5問)を1日1本ノルマとして一から解きなおしては直しをするということを繰り返した。結局本試験前日まで、毎日継続して計算練習の時間に毎日1.5h程度を割いたのであるが、このことこそ、本試験で財務計算部分で大きなアドバンテージを得ることができた秘訣だったと思う。実際問題、感覚として論文本試験の問題で直前1か月に計算演習の中で触れなかった内容は無かったように感じた。やっぱり計算に自信を持つことは限られた制限時間がある本試験で余裕をもって解いていくことにとっては超重要である。
 短答時代から継続して苦手分野だった企業結合と事業分離については、本試験2か月前までしっかり穴を埋めるまとまった勉強がとれていなかったため、それくらいの時期になってやっとコントレの当該分野の重要問題を解く時間を作った。先述の毎日答練ノルマ中でもこの分野の問題は少なからずあり、直前まで継続して毎日触れることで、この分野の解き方というものを脳にしみこませることができたように感じる。本試験でも当該分野の問題を概ね正解できるまで持っていくことができた。

Ⅱ理論部分
 財務理論については、クレアールの財務問題集、および大原の論文答練のみで対策した。講義テキストは一切使っていない、というか開いてもおらず、完全アウトプット特化のかなり特殊な勉強法であった。
 1月くらいから、都心に通勤の電車の中では私用ipadを使ってクレアールの財務問題集を1日50ページ進めるという目標を設定、テレワークの日を除いて毎日これを繰り返した。この問題集は一応全分野を網羅し、計450ページ程度ある本である。問題を解いては解説を読み、その関連知識がまとまったページも読み込む、ということを繰り返す。
 そして3月くらいから大原の論文答練が始まったため、問題集と並行してこちらを受けていくことになった。Ⅰで述べた通り1本3時間の非常に重たい答練であるが、教室で受けるにしろ家や自習室で受けるにしろ、全ての答練をしっかり3時間測ってまとまった時間で解くことで、長い制限時間の試験に耐えるスタミナを身に付ける。終わったらなるべくその日のうちに直しをして、誤ったところ・問題を見てサッと答えが頭に浮かばないところをノートに書き起こす。そして後日、このノートを見返して定着させていくという方針をとった。結果的には、クレアール問題集を5周程度、答練内容を4周程度行った。

❷管理会計論(会計学午前)(得点偏差値:60.15)
 昔から今まで、最も得意科目であるはずだった科目である。最後の大原答練では総合1位、偏差値84.0をたたき出した。ところが本試験では第2問の途中で計算をミスり、答えを合わせることができなかった。途中で気づくものの、どうしても計算ミスの傷口が見当たらず、結局答えは出せず、消化不良に終わってしまった。財務と同様、計算と理論に分けて述べる。
Ⅰ計算分野
 大原のステップ演習および論文答練をそれぞれ1周ずつした以外は、特に何も対策していないので、特に述べることはない。教室or自習室にて解く⇒すぐ直しをしてそれ以降特に放置。
Ⅱ理論分野
 理論については、大原の論文答練を財務理論と同様の勉強法にて回した。間違いノートを作成したうえで、後日見返して身に付けるという手法で、結果的にはこちらも4周くらい回転させられたと思う。

❸監査論(得点偏差値:56.00)
 監査論は、CPAの松本inputレジュメ(1年前の2022年目標のものだが)および論文対策問題集1を使用した。短答後大まかなこと以外の知識はほとんど抜け去っていたため、4月頃からCPAの松本inputレジュメを用いて全体の流れや細かい知識などを復習し、並行して論文対策問題集1(松本先生オリジナルの基本~応用問題が分野別に詰まった冊子)を進めることにした。これらの教材には答案の作り方から考え方のコツ(結論から仕上げていくなど)が書かれており、予備校上演習パックしか申し込んでいる私にとってはもってこいの教材であった。
 その一方で一番コスパの悪い科目と感じていたため勉強の優先順位は低く、あまり勉強時間は最後まで割かなかったものの、監査法人で既に働いていたことから実務をイメージしやすいというアドバンテージも含めて、ある程度戦える程度の実力は以上の教材の身から身に付けられたのではないかなと思っている。一応大原の論文答練も受けては提出してみたが、どうにもその問題が本試験の問題とあまりリンクしている気がせず(添削結果もいつも平均点の半分程度だった)、基本的にはCPAに依存する形で勉強を進めた。模試などで自分の位置をチェックした際は、第1問理論部分は散々な出来であったが、第2問事例問題部分はかなり得点できており、やはり実務を知っている(と言っても数か月だけだが…)のはそれだけでアドバンテージになっているのだなと思った。
 本試験では苦手だった第1問理論分野の問題が基礎的な問題がほとんどという内容で自分でもサラサラ書け、かなり出題において追い風が吹いたように感じた(第1問偏差値55.8)。
 なお、勉強期間内で急に試験範囲に追加されたグループ監査改訂については、出ないだろうとの判断のもと論点自体を完全に切った。対策は何もしていない。結果出ず良かった。ちょっと冒険すぎたね。

❹企業法(得点偏差値:51.15)
 企業法にはめちゃくちゃ振り回された。論証の型を覚えないといけないよという先人たちのアドバイスから、2月くらいから勉強に着手し始めたものの、3月から始まった大原の答練で結構高い偏差値をとってしまい、いけるやん!という謎の過信の結果勉強しなくなってしまった。その後6月くらいまでまともに手をつけることなく、結果7月の模試で偏差値39.95という足切り点を取り、しかもその結果が本試験10日前に返ってくるというヤバい状況だった。幸い6月中旬くらいから大原の論文総まとめテキストを使用して40個の論証を覚え始めていたため本試験になんとか戦える程度には間に合ったものの、やっぱりよっぽどの得意科目じゃない限り手を付けないというのは危険だなと身をもって感じた。
 企業法は、論文式試験の勉強ではいわゆる分厚い「テキスト」を開いてすらいない。大原野問題集onlyで、6月くらいから40個の論証を自分なりにロジカルフローとして図っぽく展開してノートに描き、覚えるべきところをある程度絞って明確にしていつでも見られるように仕立てていった。またそれと並行して大原の答練も少しずつ進め初め、答練で出てきた内容のうち40個の論証以外の部分のみを別途そのノートに同様に書き足していった。結果として論証は50個程度になり、結局2周程度しか目を通せていないとは思うが、そのロジカルフローを「物語」として頭に入れ、法的な解釈の文書化のパターンというものをなるべく理解・再現できるように努めた。
 さすがに10日前にとんでもない模試の成績が返ってきて焦り、そのあとは勉強時間の4割程度を企業法にあてて論証例の読み込みに時間を割くことになってしまった。結果的には偏差値50を超えたが、振れ幅の大きい科目でもあり、安心して勉強を勧めたい場合はあまり手を抜かない方が良い科目であることは確かである。

❺租税法(得点偏差値:61.70)
 租税法は論文勉強期間内で最も力を入れた科目である。全体勉強時間の40%くらいは租税法に充てた気がする。財務・管理と同様計算が存在し、計算の出来がかなり得点に直結する科目であることは知っていたため、東京に引っ越した当初の1月からCPAコントレを用いて計算練習をたくさん積んだ。計算することは全く苦ではないどころか楽しめる人だったためそこまで負担なくできたのは精神衛生的にも良かったのかもしれない。
 春以降は、コントレの他大原のステップ演習・論文答練も使いながら、何度も何度も計算練習を繰り返した。同じ問題を何回も繰り返すのではなく、そこまでたくさんあるわけではない「解き方の型」を身に付けある程度出題形式がブレても対応できるような力をつけることを重視した。最初は全然できるようにならず、答練でも平均点の半分くらいしかとれないのが日常であったが、徐々に偏差値はアップしていき、4月模試⇒7月模試⇒本試験で45⇒49⇒61とメキメキ実力が上がっていったのが実感として嬉しかった。最もやれば伸びる科目だと思う。
 理論については計算がしっかり身についてからやるとある程度割り切り、結局まともに手を付け始めたのは本試験1か月前のことである。答練や模試でできた問題のうちやりっ放しになっていた理論部分をかき集めてきて、法令基準集を片手にもう一度解いてみる⇒半分くらいできないのでノートに間違えた問題のみを書き出すという方法で何回か内容を回転させた。やっているうちにいつしか、何条にどういう内容が載っているかが頭に沁みついてくるものである。継続は力なり。

❻統計学(選択科目)(得点偏差値:58.45)
 統計学は大原のテキスト・問題集・答練を用いて対策した。クレアールの統計学のテキスト・答練も目を通してみたが、ちょっと数式・数学的なところに偏っていて現代の出題傾向にそぐわないなと感じたため、基本的に大原の教材100%となった。
 統計学だけはテキスト欲しさから、大原の上級演習パックの他に統計単科を取り、3月くらいに井口先生の講義を一通り聞いた(回数も少ないので1週間程度で聞き終えた気がする)。そのうえで問題集を片っ端から解き、あとは論文答練に着手し始めた。数学の問題を解いているようで超楽しい(←変な奴)。また、ある程度暗記すべきこともあるので、大原テキストから覚えるべきところを抽出してA4のコピー用紙にまとめたのだが、なんと裏表に収まった。これだけを頭に叩き込んであとは数学の問題を解くようにその場で対応するという方法で、勉強時間は全体時間の5%程度に過ぎないものの誰にも負けないだろうみたいな自信をもって本試験に臨むことができた。問題傾向が大きく変わった(普段は1時間くらい時間が余っちゃう感じなのに、今年は記述多すぎて時間足りないレベル)ためちょっと対応に苦慮し、全部解ききったものの60を超えることはできずちょっと残念であった。
 今振り返っても、高校数学の内容に抵抗がない受験生であれば、覚えることが超少ないので負担も少なく、超絶コスパの良い科目だと思う。CPAが今年から統計学選択講座も始めるようなので、母集団がちょっと増えそうではあるが、是非選択してみてほしい。

⑦本試験とその後
 前日は何だかんだよく眠れた。特に前日だからと言って何かしたわけではなく、ちょっと翌日の科目の勉強量を増やした程度である。試験会場は桜上水駅の日本大学文理学科であり、家から比較的行きやすい(バス⇒京王)場所だったので助かった。ただこの会場、いかんせん暑い。冷房があまり効かず、試験官から「これ以上下げられませんのでご了承ください」的なアナウンスが入るほどだった。タンクトップで受験している男も数人いた。この会場で行われる年は毎回こういった状況らしいので、試験運営委員の皆さんなんとかしてください。
 肝心の本試験の感触は以下のような感じだった。()内は終わった後の感覚偏差値。
①監査論:第1問簡単だったな…基礎答練みたい?めっちゃできた、けど第2問の事例は簡単そうに見えて何書いたらいいかわかんないな…それっぽく書いとこ。(55)
②租税:計算から着手…なんか水を手で掴んでいるような感覚…これ合ってるのか??理論はめっちゃできた!!(56)
③管理:第1問はいつも通りだな…ん?第2問計算合わん!記述問題の結論と矛盾するなどっかで間違った??ああああああ(54)
④財務:第3問第5問計算めっちゃできる!大原神!時間配分もgood、理論部分はなんかちゃんとできた気はしないけど計算で稼げた気がする!(56)
⑤企業:なんだかんださらさら書けるな…第2問は⑴の結論と⑵の問題文が矛盾したwwまあ点数はくれるじゃろ(50)
⑥統計:問題傾向変わって記述多いし時間ないやん!これどれだけ取れてるか全然わからん……(55)
 ということで、全体的にバランスよく偏差値52は超えてるだろうという良い感覚で終わることができた。苦手な範囲や一切勉強しなかった範囲からはどの科目も出ず、出題にも恵まれたのも大きかったと思う。稼ぐはずだった管理と統計が一番感触が良くなかったというあまり予想していなかった結果になった。
 合格発表まで3か月、精神衛生を保つため自己採点は一切しないと固く決意した。してもメリット一切ないしね。結局この3か月間、勉強も一切せず、まだ職場でも受験生採用身分だったので残業もなく、つかの間のモラトリアムを楽しんだ。そして11月17日金曜日、無事受験番号を見つけることができた。
 実は出願時に提出した住所が間違っており(以前住んでいた住所の番地を記載していた)、Twitter上でみんな合格証書や成績表が返ってきてお祭りしているのに自分だけ一向に来ない。郵便局に確かめてみると間違っていた事実がわかり、監査審査会に返送されてしまっていることが判明。成績は1週間後まで待つことになってしまった。自業自得だね><

論文式試験 成績開示

⑧総括
 結果として合格者のうち上位10%程度の位置で合格できたわけだが、実力的にはかなり上振れした結果だと思う。試験を終えて思うのは、まず①短答・論文問わず「財務会計論」が結果に直結すること、②計算力は手を抜かず継続してメンテナンスをし盤石な状態をキープすべきということ、そして③大学受験などを経て英語や国語、数学などの記述問題を通じて小中高時代に制限時間内に自分の文章で物事を論理的に伝えるという訓練を重ねていたことが論文式試験で明らかにプラスに働いたということである。論文式試験における点数・偏差値は、理論分野では結局知識量と記述力の掛け算であり、片方が足りなくても何とかなるような気がした。そして、最終的な目標に到達するために必要なことをイメージしつつ、そのために何をすべきか、限られた時間内で何ができるかを自ら積み上げることができてこそ、社会人受験生をやるうえで必要条件ではないかと思う。クレアールの掲げる「非常識合格法」は賛否両論あるのだろうが、重要問題に特化して押さえるだけで合格に達することができるという考え方については、どこの予備校に所属していようと当てはまるし、この試験に臨むうえで大切なことであると感じた。
 社会人受験生は、専念できる大学生やフリーの人と戦うことになる。周りにもそこまで勉強仲間もいないだろうし、孤独な闘いを強いられることになると思うが、社会とのつながりを持ちつつ勉強しているという事実は一つのアドバンテージになると感じるし、その社会に対する視点を生かした物事の見方ができ、試験においても答案づくりに活かせる側面もあると思う。勉強時間というディスアドバンテージを背負ってでもこの試験に立ち向かうことは難しいことではあるが、試験合格後監査法人をはじめ様々な道を進んでいく際にも、前職という経験はバックグラウンドとしてその本人の魅力を構成するものになると思う。実際今私が働いているチームにも、前職がある人は半分程度存在するが、それぞれバラバラな背景を持っており、各々異なる魅力を持った人々である。ハンデがある中で今なおこの難関資格試験に立ち向かってる皆さんは、是非誇りを持って、最後まで突っ走ってほしい。
 

~学習時間~
2016.12~2018.12(大学時代) 平均1.5h/日×700日=1050h(概算)
2021.5~2021.12(ブランク後再開~短答) 平均3h/日×240日=720h(概算)
2022.1~2022.12(運転士期間) 平均1h/日×360日=360h
2023.1~2023.6(転職~試験休暇直前) 平均2.5h/日×180日=450h
2023.7~2023.8(試験休暇~論文) 平均7h/日×60日=420h
Σ約3000h(ブランクを除き平均2h/日)

~各科目の勉強時間割合~
①短答期
財務 40%
管理 10%
監査 20%
企業 30%

②論文期
財務 25%
管理 7%
監査 13%
企業 15%
租税 35%
統計 5%

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