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ヘーゼル

もう何年も前、オーストラリアでの話。

70歳のヘーゼルは、オーガニックファームをして、レイキマスターでもある。
1年前に旦那さんのレッジを亡くしていて、元気がないと友人から聞いていた。
私達はヘーゼルのファームで焚き火を囲み、それぞれ料理を持ち寄って食事をしていた。
日が落ちると、空は見事な星空になった…。

ヘーゼルには1年半前に一回会ったきりで、ほとんど知らないのだが、今日はやけに彼女のことが気になる。

「ちょっとヒーリングさせて。レッジのこともチャネルできるかもしれないから。」と私は彼女の背中に手を当て、ただ身体を空と大地に明け渡して、エネルギーの流れる媒体になっていく。
空を見上げ、あらためて満天の星空に感心していた。

愛がどわっと流れてきた。
その量にびっくりし、感動した。
一体どれだけ、この人は愛さているんだろう?
この土地でファームをし、どっしりと根を張って生きている彼女は、この大地からも天からもどっしりと包まれ、愛されているのを感じた。

エネルギーを流すはずの私に、逆に彼女から膨大な愛のエネルギーが流れてきて、ただただ感動して泣けきた。
和気あいあいの食事の場に、声を上げて泣くわけにもいかないが、正直嗚咽が漏れるほど泣けてしょうがなかった。

「席を交代しましょう。元はと言えば、あなたからヒーリングをし始めたのよ。」とヘーゼルは優しく笑い、今度は私が椅子に腰かけヒーリングを受ける側になった。
暖かい愛に包まれ、また泣けてくる。
「なんて、繊細な人なの。すべてを感じとっているのね。」とヘーゼルが私のことを言ってくれた。
自分の繊細な部分を理解してもらえる人に出会えると、本当に救われる思いになる。

そして、私はうっすらと思い出していた。
昔、昔、その昔、エルサレムのような場所で、ヘーゼルが私の父親だった時のことを。その時も今感じている同じ愛を、この人から受けていた。

私は彼女のヒーリングを受けながら話しかけた。
「ヘーゼル、昔あなたがお父さんだったことを思い出したよ。
あなたは父親であり、霊的なマスターでもあり、
私はあなたからいろんなことを教わっていたよ。」
彼女は〝分かっているよ〟とばかりに静かにうなずいて、こう言った。
「私達はなんで、学んだことを全部忘れて、また生まれ変わっては、また同じような事を学んでを繰り返すんでしょうね…。」

彼女の静けさは全部を理解していてくれた。
彼女の大地のようなでっかい身体に、私は子どものようにハグされていた。

今日はそんなお話。

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