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星野源くんの霊性

彼の出身校は埼玉の飯能にある自由の森学園(通称自森)と言い、名前の通り「自由」な教育のユニークな学校で、私もそこを卒業している。
私のほうが10学年歳が上なので、世代は違うのだが、うちの家族は私の弟と妹、私の息子と娘も自森で、要するに家族全員が同じ学校の出身なのだ。
よって、星野源くんには多大な多大な親戚感を皆で勝手に感じている。

親戚なわけだから、当然静かに星野源推しではある。
が、それにしてもなぜ?こんなにも彼が世間で売れているのか正直よく分からないでいた。
が、4年前のある日、星野源の底力を知ることとなる…。

4年前、私は娘の二葉と2人で、古民家を再生した面白いゲストハウスがあると噂を聞きつけ、中部地方のとある町に来ていた。
古い歴史のある町、全国的にも有名な神社にもお参りして土地の雰囲気を感じていたが、町全体の空気がどうにもずっしりと重く馴染めずにいた。
それは二葉も同じだったので「明朝にはこの町を出たほうがいいね。」となんとなく話していた。

ゲストハウスの人には悪いが、2泊の予定を1泊にしてもらった。
今日一日、この町のずっしりとした重さを感じていたので、「この町はどんな土地なんですか?どんな歴史的背景があるんですかね?」とゲストハウスの元気の良さそうな若者にそれとなく聞いてみたが、ま〜通り一遍な答えが元気に返って来ただけだった。
ちなみにゲストハウスは噂通りで、建物好き インテリア好きとしては、なかなかに見応えがあった。

夕飯は駅前に一軒だけある居酒屋で食べれるというので、もう日も落ちて真っ暗になった町を居酒屋に向かった。
人っ子一人いない外とは打って変わって、居酒屋の中には何人ものお客さんがいて、賑やかでホッした。

そうそう、星野源くんの話しだった。
前置きが長くなったが、ここからなのだ。

二葉と2人、何事もなく注文した物を食べていた。
この町にはもう来ることはないだとうと何となく思っていた。
その時、さっきから黙っていた二葉がふいに叫んだ。
「きょ、京ちゃん、この町ヤバいよっ!」
二葉が言った途端にドワーーーーーッと来たのだ!
あらゆるものたちが「待ってたよ〜」とばかりにドワーーーーーッと私たちの上になだれ込んできた。
今日一日ずっと感じていたこの土地のずっしりとした重さたちだ。
重さたちが、魑魅魍魎の姿で居酒屋にいる私たちの上になだれ込んできたのだ。
重くて重くて押しつぶされそうになる。
(「あの瞬間、死ぬかと思った。」と後になって二葉は言っていた。)

他の人たちは大丈夫だろうか?と店内を見渡すと、お客さんの顔も店員さんの顔も二重に見える。
魑魅魍魎たちが重なって、薄気味悪い顔に見え、明るかったはずの店内も薄暗くなり、そこは一気に魔界の居酒屋になっていた。

私は小さい時から霊媒体質で、いろいろな体験はしてきているのだが、さすがにこの時は背筋が凍るようだった。
私だけならまだしも、今夜一晩 この土地の魑魅魍魎から二葉を守り切れるだろうか?

と、その時、店内の有線から星野源の「恋」が流れだしたのだ。
あのイントロが店内に響く、
「あっ、源くんだ…」
普段から多大な親戚感を感じている星野源の、この状況での出現。
ちょっと安心したその途端、店内に光が差し、暗かった視界がパァーと開けていく。
曲が流れ、彼の声が響き、
あれよあれよという間に、金縛りのように身動きできないくらいに重かった身体が、軽くなっていく。「さっきまでの魑魅魍魎の世界は幻だったの?」と呆気にとられる早さで光が溢れていく。

二葉と目を見合わせてほぼ同時に叫ぶ。
「星野源すご〜〜〜いっ!!!」
「恋」の一曲が終わる頃には私たちにすっかりと光の軸ができていた。

「二葉、この土地のエネルギーは荒いから、私たちも肉を食べて力付けよう!」
「うんうん、そうだね食べよう!」
お腹はすでにいっぱいではあったが、一皿800円のその店ではちょっと高級なオーストラリア産のビーフステーキを一人一皿注文して、お世話にも美味しいとは言えない固い肉をむしゃむしゃ食べた。

この土地の神社の祭りは、巨大な御柱を立てて男たちがそこに挑む。荒々しい激しい祭りが年一回行われる。
私たちもこの土地で一晩過ごすための勢いと男性性をオーストラリア牛から頂いた。

店内にはその後も有線でなにやら流行の音楽は流れ続けていたが、後にも先にも星野源以外の音楽は全く耳に入ってこない。

星野源は本物だった。
でっかい光だった。
魑魅魍魎に太刀打ちできないでいた私たちは、遠い親戚の源くんに救われたのだ。
なぜ彼がこんなにも売れているのか?正直よく分からないでいたが、彼の底力をまざまざと体験した一夜だった。

後で知った事だが、彼は2回ほど死にかけているそうだ。
いろんなことを経て、自分の役割を客観的に理解した人は虚勢を張るわけでもなく、格好つけるわけでもなく、淡々と自分の役目をこなしていく。
彼のあの飾りっけのない、素のでっかい光を今の時代が必要としているんだろう。
星野源は本物だった。

後日、友人家族から例のあの土地への移住を考えていると言う相談を受けたが、小さい子どもが3人いる彼らには、あの町のエネルギーは荒過ぎる。
あの町は勧めないと話した。
土地との相性は大切。
それはまた別の話で‥。

今日は、そんなお話。







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