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AZKi1stAL『without U』全曲レビュー/彼女は激情の中に何を開拓く? #AZKiはwithoutU

バーチャル・シンガーAZKiのニュー・アルバム『without U』が昨日11月12日にリリースされた。なんと全国流通。上掲の特設サイトでは各界の大御所たちが名を連ねて、レビューを掲載していた。

不肖ながら私赤坂まさか(@Masaka_asobu)もバーチャル・シンガーの端くれとして今回のアルバム『without U』のレビューをさせていただこうと思う。

①without U/作詞・作曲・編曲 : RD-Sounds

本作のリードトラックであり、アルバム・タイトルにもなっている「without U」

購入したCDの包装を破り、CDプレイヤーにセットして、ヘッドホンを装着して、歌詞カードを手に息巻く中再生ボタンを押して、最初に流れる音が、私は大好きだ。

美しいピアノのアルペジオ、遠くから聞こえるユーロ調のリード。

歌詞カードの一行目にはこう書かれていた。

「キミがいるから 一人じゃないから」

AZKiが紡ぐ物語は彼女と私たち(開拓者)たちによって、開拓(ひら)かれる。そういった覚悟を感じる一節だ。

AZKiの繊細で力強い、静かに熱を帯びた歌声がピアノに、リード・シンセに溶け込むようで、素晴らしくマッチしている。

私が個人的に感服したのはタイトルが「without U」であること。"with U"ではなく、"without U"。

"キミ"がいないことを認識することで、"キミ"がいることが明確になるのだ。

それは"怯え"であり、しかし"安堵"でもある。

楽曲はこの言葉で締められる。

「キミといるから 一人じゃないから」

②コトノハ/作詞・作曲 : 佐藤カズキ / 編曲 : SCRAMBLES / プロデュース : T.S.I(SCRAMBLES)

メロコア調のビートが特徴的な「コトノハ」

歌詞もメロコア・チックなアツいものとなっている。

メロコア・チックなのだが、楽曲の構成やコード・ワークが洒落ていて、小気味良い。解放感溢れる転調サビも美しい。

AZKiの晴れ晴れとした歌声が映えている。

個人的にはギターのジャキジャキとしたクランチ・サウンドがすこだ。

オクターブ奏法によるリード・ギターもカッコいい。

③嘘嘘嘘嘘/作詞・作曲 : 井口イチロウ / 編曲 : SCRAMBLES / プロデュース : T.S.I(SCRAMBLES)

こんなん9mmじゃん。

クラシカルなイントロのギター・リフが印象的な「嘘嘘嘘嘘」だが、サビのメロディと韻の絡みが素晴らしい。

Bメロの後半のわざとらしいサビへのブリッジも好きだ。

こういうの、いいよね。

④自己アレルギー/作詞・作曲 : 豊住サトシ / 編曲 : SCRAMBLES / プロデュース : T.S.I(SCRAMBLES)

こちらもバンド・サウンドがカッコいい「自己アレルギー」。サビではライブで盛り上がりそうなコールが用意されている。

でもこの曲、特に歌詞が面白い。

2番のAメロの歌詞は太宰治の引用だ。たぶん。

恥の多い
生き方して
僕は人気風に
なることができました

さらにこんなBメロに続く。

壊れたおもちゃ遊んで
濃いストーリー
ウッド バズる 望む

ちなみに曲中では「濃いストーリー」は完全に「トイ・ストーリー」に聞こえる。そしてバズに繋げる。

上手いな~。

⑤虹を駆け抜けて/作詞・作曲 : 井口イチロウ / 編曲 : SCRAMBLES / プロデュース : T.S.I(SCRAMBLES)

アップ・テンポなバンド・サウンドの「虹を駆け抜けて」。

この曲を主題歌に映画撮れるんじゃない?

ドラマチックな歌詞がAZKiの生き様を映し出しているようだ。

特にサビの歌詞の「ストーリー」がラスサビで「グローリー(栄光)」になっているのが綺麗でよい。

⑥ちいさな心が決めたこと/作詞・作曲 : AZKi / 編曲 : SCRAMBLES / プロデュース : T.S.I(SCRAMBLES)

ピアノ・ロックにストリングスのユニゾンで奏でられるメロディ、これは完全に10年代のアニソン。

特にBメロからサビへの展開が素晴らしい。

AZKiちゃん本当にいい声してる。

2サビの終わりでスネア頭打ちからのギター・ソロが完璧すぎてすこ。

100点満点のアニソンです。

だんだん散文的になってきてますが続けます。

⑦世界は巡り、やがて君のものになる/作詞・作曲・編曲 : さめのぽき

おい!にんげん!

失礼、取り乱しました。

こちらはエルセとさめのぽきから、さめのぽきさん。ぽきさんかわいいし歌もめちゃくちゃに上手いしで大好きです。

ぽきさんの楽曲といえば美しいメロディと洋楽のエッセンスを感じるコード、そしてグルーヴが特徴的ですが、「世界は巡り、やがて君のものになる」も例外ではありません。

わたし、本当に好きなんですよね、エルぽきの曲……。

AZKiちゃんに合わない筈もなく……といった感じで完全に音に殴られてしまいました。

ジャズやミュージカルの要素を感じるおしゃれなピアノがAZKiちゃんの映し出す世界に上手くマッチしていて、一つの演劇を見終わったあとのような聴後感(ちょうごかん)を得ました。

わたしもこういう曲歌いたい……。

⑧Midnight Song/作詞 : tamu(USAGI Production) / 作曲・編曲 : Batsu(USAGI Production)

突然宇多田ヒカルの新曲になった!? と思ったらUSAGI Productionさんでした。

USAGI Productionさんといえばコンピレーション・アルバム『VirtuaREAL』。vol.1がいまから楽しみすぎます。

さて、「Midnight Song」ですが、ここでこのアルバムでは初めてのダンス・チューンとなっています。

サウンドはEDM寄りのものになっていて、エド・シーランを彷彿とさせるような丸っこいプラック・シンセの音に音数を最小限に抑えた静かなビートが絡み、おしゃれで静謐な一曲と仕上がっています。

念の為言っておきますが、宇多田ヒカルの新曲ではありません。

⑨Reflection/作詞・作曲・編曲 : KABOSNIKKI (TEMPLIME)

カッコいいサウンドだな~って思ったらTEMPLIMEさんでした。そりゃそうだ。

こちらはハウス調の楽曲になっていて、エレピの音やFM音源感あるリード・シンセがめちゃめちゃおしゃれ。

これ箱で流れたら爆アガリするだろうな~。

⑩のんびりと、/作詞・作曲・編曲 : ぽて


大天才じゃ!!!!!!!!


失礼、取り乱しました。

こちら、ボカロPのぽてさんによる「のんびりと、」

とにかくかわいい。

Future Bassやチップチューンの要素も感じるエレクトロニカな楽曲。

こういうおもちゃみたいなサウンドがふんだんに使われている曲大好きなんですよね。トクマルシューゴさんみたいな。

椎名もたさん(ぽわぽわP)の「ハローストロボ」や、サビの解放感はじんさんの「日本橋高架下R計画」を思わせるような。いや、いくら例を挙げても切りがないほど素敵な一曲です。

不思議なほどにAZKiちゃんの声との相性も良いのです。いやー、かわいい。

お気に入りの一曲です。

⑪フロンティアローカス/作詞・作曲・編曲 : ハム・clocknote.

clocknote.さんだ!!!!!!!

軽快なビートにAZKiの優しい歌声が重なる、アルバムの締めに丁度いい良曲。アニメのエンディング曲っぽい。

リバース・ピアノすき。

歌詞も優しく、それでいて決意に満ちたものになっています。

こんなんライブで演られたら泣いちゃう。

⑫リアルメランコリー (TEMPLIME Remix)/作詞・作曲・編曲 : 瀬名航

AZKiちゃんの2ndオリジナル曲「リアルメランコリー」のTEMPLIMEさんによるリミックス。

原曲から少しテンポアップして、Perfumeのようなエレクトロポップ・サウンドに仕上がっています。

さすがTEMPLINEさん。原曲の良さを損なわず、新しい切り口からこの曲の魅力を引き出してくれています。

⑬Starry Regrets(Batsu Remix)/作詞・作曲・編曲 : ハム

こちらはAZKiの6thオリジナル曲「Starry Regrets」のリミックス。

流行のトラップ・サウンドにドラムン・ベースやEDMの要素もあるダンス・チューン。

ハイハットのピッチが刻みの中で変わり、クロマチックな効果を出しているのが面白い。

実験的なアプローチでありながら見事に一曲に仕上がっていて、素晴らしい。

いかがだっただろうか

本作『without U』はAZKiちゃんのこれまでの活動の集大成であると同時に、VTuber楽曲の可能性を切り拓いた名盤でした。

収録順も考え込まれていて、完成度の非常に高いアルバムとなっていると思います。

とりとめないレビューでは語りきれない魅力、ぜひ歌詞カードを眺めながらアルバムを通して聴いていただければと思います。

あ、それとわたしのTwitterのフォローもついでにお願いします💕 アニメを作ったり作曲をしたりAfterEffectsで映像制作をしたりしているVTuberです!

ではでは~!

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