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哲学を教えてくれたのはコストコだった

「品質、低価格、清潔で安全な環境を追求し続けていれば、世界中どこでも成功する」

そう豪語するグローバル企業、コストコ ホールセール。

そんなコストコに哲学と使命を信じて進む大切さを学んだ僕が、会員になり応援するまでの話。


こすとこ?のティラミス

初めてコストコを知ったのは、7年前の大学生のときだった。
あるときバイト先のパートさんから
「ホームパーティするから来ない?」と誘われた。
パートさんの友人の家庭教師を引き受けてもらったお礼らしい。
ご飯にありつけるのであれば、金欠の僕はどこまででも行く。
もう一人、バイト仲間も誘われていたようで、
二人でパートさんのホームパーティに参加した。

ホームパーティは楽しかった。
僕が家庭教師として教えている子と打ち解け合う機会にもなったし、
パートさんの旦那さんからは、仕事の話が聞けて今後の就活のためになった。
ホームパーティの終盤、パートさんがデザートを運んできてくれた。

皿にのっていたのはティラミス。

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このティラミスがコストコを知るきっかけとなる。

僕はティラミスを食べたことなかった。
ティラミスて…よう分からんの出で来たぞ。
パートさん、おしゃれすぎかよ。

一口食べると、ほろ苦さが口に広がる。
すぐ後から甘さがどっと追いかけてくる。
うまい。
ティラミス、うまい。

そんでもってコーヒーと合うのなんの。

「このティラミス、『こすとこ』のなんだよ」
パートさんから聞いたことない言葉が出た。

こすとこ?
こすと子?女の子?
頭の中がお花畑の僕は、[こすと子]という子がティラミスを作ったと思った。

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そんな残念な妄想も、
「コストコって京都にできたところ行ったんですか?」
とバイト仲間の言葉によって終わりを迎えた。

てかバイト仲間は知ってるのかよ。
京都にできたということは、有名なお菓子屋さんか。


そうなのそうなの。
少しテンションが上がった話し方で、パートさんは冷蔵庫に歩いていくと、
「これがそのティラミスよ」
パートさんは大きな容器を持って嬉しそうに言った。


年会費を払うスーパーは需要があるのか?

え?でかくね?
お菓子屋さんでもないんかい!

ホールケーキを持ち帰る箱くらいのプラスチック容器にぎっしりとティラミスが入っていた。容器からそのまま出したらただの四角いケーキだ。

「やっぱり大きいですね」と冷静なバイト仲間。
やっぱりこいつ知っているな。
どうやら有名なようだ。

分からない僕は、コストコってなんですか?聞くと出てきたのは、

海外のスーパー。
スーパーというより倉庫かな。
全ての商品が大きい、だ。

説明されたが、
全くイメージできん。
たぶん業務用スーパーの上位互換なんだろな。

自分の分かる範囲で理解しようとする。
そして話の最後に言われたのが、
会員制だということだ。

会員にならないと入れない。
年会費は4400円(税抜き)

年会費払ってまで入るスーパーってどんなんだよ。
パートさん、わりとセレブじゃねーか。
年会費を払うスーパーは需要があるのか?
そんな疑問が沸いてきた。
まあ学生の僕には無縁の場所だろう。

しばらくか、最後か分からないコストコのティラミスを味わった。


帰り際、パートさんに「ティラミス持って帰りなよ」言われたが、
僕は食べきれないので断った。
バイト仲間は容器ごと持ち帰った。
半分以上残っているので、さすがに賞味期限切れになるだろう。

そんな心配はいらなかったようで、
次の日バイト仲間に会うと、昨日の夜に全部食べたそうだ。

まじかよ。。。


ホームパーティでコストコを知った。
大きい商品を売る、会員制の倉庫。
そんなイメージで、それから全く関わりがなく、
5年の月日が経った。


コストコに熱狂する何かがある

ティラミスから5年が経ち、
僕は苦さと甘さを少し体験した社会人となっていた。
あのときのティラミスのように、、(何言ってんだ。)

実家に帰ったとき、特にやることもないのでテレビをつけた。
観たいのもなかったので、両親が録画しているのを観ようと録画チューナーに切り替える。
録画してあるなかで、気になったもの。
【カンブリア宮殿 コストコ特集】だ。
カンブリア宮殿という番組は、毎週一つの企業をピックアップするドキュメンタリー番組である。
番組冒頭、長蛇の列。
500人以上並ぶ列は屋上駐車場まで伸びていた。
いつから並んでいるのですか?カメラマンが、並んでいる女性に聞く。

昨日の夜8時から。

一番の前の男性は、一昨日から、と。

新型iPhoneの発売日かよ!
そう突っ込みたくなる番組の始まりだった。

コストコの新規オープン。
それに並ぶ人々。

コストコには、これほどまでに熱狂的なファンがいるのだ。
僕が興味が沸いた。


番組を視聴後、
僕は、村上龍さんと同じく、
コストコという会社はすごい会社だと思った。
思わず息を呑む番組だった。
視聴後、深くゆっくり息を吸い、高鳴る鼓動を抑えながら決めたこと。
それは「近いうちにコストコに行く」だった。


年会費のシステムの理由

コストコに行きたい。
カンブリア宮殿を観て想いが強くなった。
行きたいとは思うが、会員になるのはどうも渋る自分がいる。
僕は石橋を8ビートで叩いて渡るほど、慎重なタイプだ。
そこで、まずは友人が会員かどうか聞くことにした。

驚いた。
友人らに聞くと返ってくるのは、
「会員ではないけど、コストコには行ったことある」だった。

待て待て。
なんでそんなことあるんだよ。


聞くと、
知り合いが会員だった。
奥さんのお母さんが会員だ、などなど。

とりあえず分かったのは、行ったことないのは僕だけだった。
そんなことある?

友人の一人が、
「さすがに年会費払ってまで行きたいとは思わないよ」と言う。

僕もそう思っていた。カンブリア宮殿を観るまでは。

コストコは会員制の卸売りを採用している。
会員制がコストコの特徴の一つだ。
年会費4400円(税抜き)がコストコの主な利益で、商品の利益率はほとんどないという。
会員制にする理由は安心して商売をするため。
企業が悩む一つとして代金の回収がある。

例えばTシャツを作って販売するとする。
100円で作って、1000円で売るとしたら、
1000‐100=900 
900円の利益だ。(その他の人件費などは割愛)

しかし利益は売れた場合。
売れなければ、どんどん赤字になる。


一方、年会費で4400円先にもらっておいたらどうだろうか?
利益が4400円でてからのスタートになる。
年会費で利益がでているから、
Tシャツを200円で売って100円の利益しか出なくても商売を続けられる。

先払いのビジネスはこうした強みがある。
近年クラウドファンディングが盛り上がるのも理由の一つだろう。


なーんて友人に熱く話すと、
「とりあえずコストコに行きたい気持ちは分かった」
そう言いながら僕をなだめてくる。

こんな感じにしばらく僕の中で、#コストコ はトレンド1位をキープ。
人に会うたび会うたび、プレゼンを続けたのだった。

コストコ初出店における障壁

僕のコストコプレゼンは、会社でも開催した。
上司と盛り上がる話と言えば、苦悩、苦難を乗り越えたストーリーが一番だろう。

コストコは日本の最初の1号店を東京にする予定だった。
しかし、コストコの1号店は福岡になった。
なぜ、1号店が東京でなくなったのか。
それは、メーカーが直接取引を嫌がったからだ。
コストコはメーカーとの直接取引によるコスト削減を全世界で行っている。
コストコの低価格を実現するためにも直接取引はマストである。

メーカーが嫌がる理由は3つ。
コストコだけ特別扱いできない。
長年の卸売業者との関係もある。
直接取引によって大きいサイズの商品(コストコサイズ)の開発設備を作らなくてはならない。設備投資するほど直接取引の必要性を感じない。

メーカーが難色を示しても、コストコのバイヤーは粘り強く交渉を続ける。
交渉を続けるなか、あるきっかけで風向きが変わる。
コストコの特徴である大容量サイズの商品だ。
大容量サイズが売れたら気づいていない新しいニーズを発掘できるかもしれない。
そんな考えを持つメーカーが現れたのだ。

1999年、日本1号店をオープン。
このとき直接取引のメーカーは7割を超えた。

場所は福岡。
福岡なら直接取引をしてもいいと仲卸業者がメーカーに言ったそうだ。
すぐに撤退するだろう。
仲卸業者の考えは外れた。

郷に入れば郷に従わず

自分たちのやり方を貫いたのは、コストコの哲学が背景にある。

コストコジャパンの社長ケン・テリオさんは、
「【高品質な商品を安く提供して買い物が楽しくなる店を作る】
このコストコの哲学を信じてきたからこそ貫き通すことができたのだ」
と言っていた。

哲学は行動指針になっているのか。
メーカーに反対され続けたら、自分たちのやり方を変えてしまいそうなものだ。
信じるものがあるというのは、強いのだと学んだ。


「そんな背景があったんだな。そういや、うちの会社の経営理念すら忘れてしまったよ」


「長すぎて忘れてしまいますよね」

僕と上司は笑う。

「げんま(僕)、コストコ詳しいな。行ったことあるの?」


「・・・いえ、ないです」


「行ったことないのに、よくそんなに話せるな」


そりゃあカンブリア宮殿を何回も観たから。
話すのは記憶の定着にもなりますし。


それからしばらくの間。

コストコの話題を振られる。
僕が答える。

「げんま(僕)はコストコ行ったことあるんだっけ?」

「いえ、ないです」

こんなやり取りが続いた。


僕が叩き続けた石橋は、もうバキバキだろう。
そろそろ渡りたいところだ。渡っても大丈夫かな。壊れないかな。


願いが届いたのか、僕はコストコに行くことが決まった。


安さの理由

ついにコストコに来た。
友人の一人が「奥さんが会員だから今度一緒に行く?」と誘ってくれたのだ。

机上の空論
百聞は一見に如かず

実際に体験しないといけないよね。


僕と友人と友人の奥さんでコストコの倉庫に入る。

倉庫内は広い、そして寒い。


来ただけでテンションが上がるのは不思議だ。

3人で倉庫内を歩くと6年ぶりのティラミスに出会う。
なんとも懐かしい。
よし!隣にあるケーキを買おう。(なんでだよ)

倉庫内で生地から手作りしているというディナーロールを買おう。


カンブリア宮殿で紹介されたものと思い出をベースに買っていった。

そんななか僕が一番見ておきたかったもの。
それは、パレットだ。

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コストコへ行ったら誰しもパレットは見ておきたいはずだ。


商品を載せる縦122㎝横120㎝のコストコサイズ専用に開発された台。
通称パレット。
フォークリフトを使って運ぶ台だ。

パレットがコストコの安さの理由。

メーカーとの直接取引、つまり仲卸を飛ばして中間マージンを省くのは前に説明した。

安さの理由はもう一つある。
パレットのサイズに合うように、メーカーに専用の商品トレイを開発してもらっている。
物流センターから運ばれてきたパレットをフォークリフトで運ぶ。
パレットごと倉庫内に出す。
あとは商品に被っていた袋をはがしたら、陳列完了。

大きさが統一されることで物流コストが、
パレットごと陳列することで陳列コストが下がるというわけだ。

僕はコンビニでバイトをしていたから、陳列の大変さがよくわかる。

大量の段ボールが来て、運ぶ。
段ボールを空ける。
商品の大きさを確認、棚の仕切りを変更して出していく。
段ボールを潰して片付ける。
この作業がないのは、素晴らしい。

テンションが上がりすぎて倉庫内で語ってしまった。
友人はというと、僕の話を右から左に受け流している顔だ。
僕の話より、大容量のポテチをどうやったら奥さんに買ってもらえるか悩んでいる。


友人の奥さんは、「下の台でテンション上がっている人初めて見た」と笑う。

違う。
笑う場面ではない。
笑ってくれたのは嬉しい。
複雑な心境。

それと初めて見たと言うが、
僕もパレットでテンションが上がったのは、これが初めてだ。

試食と返品サービスがある理由

コストコで絶対に買いたいものに寿司があった。
日本1号店の際に、日本の寿司がどういうものか徹底的に調べて開発したと言っていた。

そこまで自信があるなら食べるしかない。
厳しくいかせてもらうよ。
ミスター味っ子の味王様ごとく。

鮮魚コーナーに近づくと、何やら人が並んでいる。

試食をやっているようだ。

コストコの試食はかなり大盤振る舞いだ。
会員に安心して買ってもらうため。
コストコジャパンの社長ケン・テリオさんが
「安くて品質がいい。そして店が清潔で楽しく買い物ができる
それがコストコの価値観」

それが試食という形に反映されているのだ。

試食はサーモン。
お弁当に入っているヒラヒラのカップにゴロゴロの大きなサーモンがのっている。

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試食のサーモンを食べる。
目を見開く。
うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!!!!!!


なんじゃこれ。
脂のってて、プリプリやん。

待て待て、これが寿司に使われてんのかい?

うまいに決まってるやん。


コストコでは、たくさん試食が行われている。

これなら確かに安心して買える。

もう一つ安心して買える理由に、返品サービスがある。

食品や飲料、飲みかけ食べかけでも返品できる。
海外の商品も多いから、買うのにためらいそうなる。
返品できるならと気軽に買える。
返品サービスは買うハードルを下げてくれるのだ。

返品サービスは、会員が気に入る商品を買っていただくって言う考えのもと存在している。
コストコジャパン社長ケン・テリオさんは
「返品は品質の向上に反映され、結果的に品質の高い品揃えにつながるという。
商品には自信がある。
しかし全ての会員が満足するわけではないため、必ず会員ために返品サービスは必要だ。」と言っていた。


ほえ~頭が上がりませんな。


倉庫内は様々なものが楽しかったし、学びも大きい日になった。

寿司はもちろん買った。
案の定、最高にうまかった。

友人は、
案の定、ポテチが買えなかった。


会員になる

初コストコから、会員になることを決めた。
会員になるからには、しっかり利用していきたい。
現在、僕は二人暮らし。
朝ご飯はご飯派。
ご飯、卵焼き、味噌汁、焼き魚。

まずは、魚に注目した。
近くのスーパーで冷凍の量の多い鯖と鮭を買っていた。
これをコストコで買ってみよう。

それからは朝食のグレードが上がった。

なんといっても魚の生臭さが全然なくなった。
そこから、色んなものをコストコで買うようになった。

味噌、鯖缶、コーン缶、タオル、トイレットペーパーなどなど。


僕は今まで買っていたものをコストコに切り替えるのを、
コストコシフトと呼んでいる。
正直ここらへんはどうでもいいか。

ここまでが、
僕がコストコに会員になるまでの話。

終わりに

ケン・テリオさんがカンブリア宮殿で話した哲学は、現在コストコのHPにて
使命、missionとして書かれています。

【会員様に高品質の商品とサービスを、 できる限り低価格で提供し続けること。】

低価格で提供するために、メーカーの直接取引があり、統一パレットがあり、年会費というシステムがある。
高品質の商品とサービスのために、返品サービスや試食がある。

こんなところでしょうか。
使命や哲学に基づいて、様々なものが形を成していくのですね。

僕は哲学や使命を大切さをコストコで初めて学びました。

会員であり続けるというのは、共感し応援することだと思います。

これからもコストコの倉庫に足を運び体感して、応援していきます。

以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。



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