中日ドラゴンズにとっての奥川恭伸が外れた時の最適解は?

来る10月17日、「第一回選択希望選手、中日、奥川恭伸、投手、星稜高校」と恐らくコールされるだろう。ただし、交渉権を獲得できる保証は全くない。なぜなら、今ドラフトの目玉である奥川には複数球団、多くて5球団前後の指名が予想されるからだ。150キロを超えるスピードボールに高精度の変化球、安定した制球・・・。文句なしのドラフト1位、いや滅多にお目にかかれない投手だ。投手より野手を揃えるべきという声もあるが、奥川はそれらを打ち消すだけの存在だ。単なる一投手ではなく、チームにとてつもなく大きなプラスをもたらす特別な投手なのだ。ただ、ここでは万が一(クジが当たる確率は20パーセント程度と思われるが)奥川の交渉権を獲得できなかった際のシミュレーションをしたい。

大前提として、奥川の次点の候補には石川昂弥(東邦・内・右打)を挙げたい。お膝元のスラッガー候補の評価は高く、多くのメディアで「奥川→石川」の流れが有力視されている。多くの若手の芽が出始めている投手よりも、大砲不在の野手を補強することは、むしろ理にかなっているとも言える。ドラフト1位が奥川ではなく、他の選手で確定した場合としては以下のパターンになることが考えられる。


①奥川×→石川の場合

②奥川×→石川×→他の選手の場合

③奥川×→他の選手の場合

④石川を最初に入札した場合

⑤石川×→他の選手の場合


①は正に王道パターン。奥川を入札したものの、交渉権を獲得できなかったため石川に切り替えて交渉権を獲得。このパターンなら言うことなしだろう。ナゴヤドームにテラス席設置の報道が出ようと出なかろうと、未来の中軸を打てる選手の指名は願ったり叶ったりだ。

とはいえ、石川の獲得も容易いものではない。この高校球界屈指のスラッガーを欲する球団は多数あるはずだ。1回目の入札では奥川、佐々木朗希(大船渡・投・右投)、森下暢仁(明治大・投・右投)の3名に指名が集中することが予想される。しかし、貧打に悩む阪神や主砲・筒香の次の看板打者を欲するDeNA、主力打者の高齢化が目立つソフトバンク等、石川を1位指名しても不思議ではない球団は多い。したがって、外れ1位でも石川を確保できる保証は全くない。その場合、②のようなパターンになる。もっと言えば、上記の3投手への指名集中を嫌った球団が1回目の入札で石川を選択する③のようなことも十二分に考えられる。

そのようなことを踏まえた結果、④のような結論を導き出すことも決して悪くはない。しかし、「置きに行った」にもかかわらずことが上手く運ばないという最悪の結果も想定することも重要だ。⑤のような事態はなるべく避けたい。

奥川の交渉権を獲得した場合、石川を2位指名することはまず不可能と考えてよい。そのような状況で2位指名(全体の15番目)まで残っている可能性がある、かつ中日が指名しそうな候補は以下のとおりだ。

宮城大弥(興南・投・左投)

立野和明(東海理化・投・右投)

海野隆司(東海大・捕・右打)

佐藤都志也(東洋大・捕・左打)

紅林弘太郎(駿河総合・内・右打)

井上広大(履正社・外・右打)

チーム事情から層の薄い左投手や捕手を指名しておきたいし、右の強打者も欲しい。若手投手に比べると若手野手は明らかに物足りない。それ故に、奥川の交渉権を得ることができなかった場合は石川を確実に抑えたい。しかし、そのような状況であっても、この中で最も欲しいのは野手ではなく宮城だ。先発ではなくリリーフで起用し、左のリリーフエースとしての地位を確立してほしい。ロドリゲスの去就が不透明だし、岡田俊哉や福敬人も絶対的地位を確立できているわけではないからだ。巨人の田口みたく身体的に恵まれているわけではないが、早い段階から頭角を現すことができるだけの投手だ。

それ故に奥川→宮城になったらベストだが、石川→宮城ならば十分に満足できる結果だと考える。とはいえ、宮城も1位指名されても不思議ではない投手ということだ。そうなると、全く異なる選択をする必要がある。なので、奥川を外し、石川を手に入れることができない状況ならば宮城という選択肢が残っていてほしい。

右投手に関しては、奥川以外の投手に関しては優先順位は低くなる。梅津晃大や藤島健人らに割って入るだけの能力を既に持っているかが上位指名をする上での一つの基準と考える。しかし、その基準を満たすだけの投手は少ないため緊急性は高くなくなる。

そのような状況下において、次に考えうるのが捕手の指名だ。今年は大学生捕手が例年に比べて粒ぞろいだ。また、中日は捕手2人に対して戦力外通告をしている。シーズン中にもトレードで1名放出していることから捕手の指名は急務となりそうだ。今シーズンは加藤匠馬が台頭し、高卒ルーキー石橋康太も一軍デビューを果たした。一方で加藤と石橋の間の年齢の捕手が不在だ。そうなると、大学生捕手の指名は十分考えられる。もし、上位で指名することになると海野か佐藤のどちらかになる。ディフェンス面に関しては海野、打撃も含めた総合力ならば佐藤となるが、中日には佐藤の方が合うだろう。海野を指名するよりも他の捕手との差別化ができるからだ。2人とも指名できない場合は中位から下位の順位で柘植世那(Honda鈴鹿・捕・右打)を指名したい。一部報道にある山瀬慎之助(星稜・捕・右打)は石橋と競い合う方針でも、打撃面で劣る山瀬は石橋と競争した場合、埋没しかねない。大学生や社会人捕手を指名する方がベターだろう。

石川以外の野手に関しては、今年の顔触れを鑑みると上位指名をするのは難しいだろう。紅林にしろ、井上にしろ2位指名の可能性は捕手に比べると低いだろう。指名するならば中位以下となるはずだ。もし指名した場合は、球団が相当高く評価しているかドラフトが思い通りの展開ではなくなった場合になった場合だろう。

以上のことから、「奥川くじ」に当選できなかった際の最適解は石川→宮城、次いで石川→佐藤となる。ただし、ドラフトは生き物だ。ちょっとしたボタンの掛け違いで予想外の展開は起こりうる。指名できないと考えていた思わぬ選手が残っていて指名できたりする場合もある。あとは当日の流れ一つだ。そして、本当に最適解かどうかは入団後その選手が活躍するか否かにかかっている。正解かどうか判明するのは何年も先だ。とりあえず10月17日にまずは全精力を注ぎたい。




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