Dans le Brouillard 2

26日に LE 100ECS で踊りました。

今回、本番の出来は悪くなかったような気がするのだけれど、反省点は多々…。

久しぶりに舞台をいちから作ってみて改めて思うことだけれど、音楽も自分が思い描くようなものを同時に当ててゆかないと、微妙な時間や密度の操作ができない。
既存の音楽に合わせるようなことをするともたつくし、それだけで独立して成り立つように作られているため、からだを加えようとすると音の要素が多すぎる。
音や光も舞台上に存在する以上ダンサーの身体と同じく大事な要素だから、できたら音楽家と照明家と一緒にいちから作っていきたいところなのだけれど、けれど実際には、そこまでの潤沢な予算や時間が持てることはまれ。
ついありものの音楽を使い、灯りは本番前に照明家さんにイメージを伝えてざあっと作ってもらうようなことになりがちだ。

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(毎本番後に思うことなので本当に反省しているのか自分でも疑っているのだけれど)ぎりぎりになって追い詰められないと本気が出ないようなところがあって、ほんとうにいけない。
舞台が決まってからずっと考えたり生活の中のふとした瞬間にもからだでイメージを再現したりしているのだけれど、なかなか大筋というか骨組みが建てられない。
本番が差し迫ってやっと「これだ!」という画面が見えてきたり、縦糸と横糸が噛み合ったりする。
共演者をはらはらさせるのはもちろん、自分自身ずーっと長い期間気を揉むことになるし、他のことに手がつかないままなので、もうちょっとなんとかならないものかな…。

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今まで自分が演出した作品はそんなにたくさんはない。
けれど、どういうものを作ることができて、どういうものは作ることができないのかが、だいぶ分かってきたかもしれない。
私の作ってきた作品はとにかく体が強く密度をつくらないと成り立たない、からだの質感でものを言おうとするものばかりだ。
画面全体が劇的に変化するというより、ひとつのことを深掘りして、一緒にそれについてきてもらうような。
しかし、からだで重力や時間操作をするタイプの踊り手がその場にいればいいけれど、いつもそうとは限らない。ふとした拍子に集中をそこまで高められないことがある場合、急に舞台はすかすかになるだろう。
もうちょっと実際の視覚としての画面を作れるように幅を広げられたらな。

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ひとりで踊ることも好きだけれど、やっぱり舞台上に私以外の存在がいるというのはいいものだな。
私ひとりではつくることができない景色を立ち上げることができる。
ひとりでは見ることのできない景色をそこに見ることができる。
私がただの遠景にもなれるし、お客さんの視線(や耳)を他方にあずけているあいだに、もうひとつの感覚をかさね、もうひとつの時間に触れてみることができる。
信頼できる共演者や、音楽や灯りが舞台上にあれば、私だけがしゃかりきに舞台上に存在しなくても良い。
隣で繰り広げられているものごとに委ね、私も体験して、発見して、その場でなにかを生むことができる。
その瞬間を信じて待って、ひつようがあれば返答すればいい。

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今回の劇場は照明も自分たちで全部好きにやって良いよというものだったのでとてもびっくりした。日本だったらこの規模の劇場だとセキュリティ上考えられないんじゃないかな。照明器具はとても重いし、高いところに吊ってあるのでその扱いを間違うと怪我に繋がる。
バトンから照明を外したり移動させたりという作業は怖くてできなかったので、もともと設置されていた照明の首を振ったりスポットを絞ったりしただけで照明を作ってみた。

あんな短時間でオペを覚えてくれたDavidさんには感謝しかない。
私のああでもないこうでもないに付き合って解釈して、時には私の脱線をやんわりと戻してくれ、舞台に一緒にいてくれた共演者の亜美ちゃんにもありがとう。
ほんとにできるのか…と恐ろしくて色んな人に積極的に「来てね」と言えなかったんだけど、もっと色んな人に見てもらえたらよかったな。
※追記:なんだかひとりで作ったような書き方になってしまったけれど今回の作品はふたりが持つイメージとか今問題としていること、関心ごとを出し合ってそれを原案とし、作りました。

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撮って頂いたビデオをvimeoにアップロードしました。
編集せずに全部のせたので46分ととても長いですがお時間のある時にぜひ。

□Dans le Brouillard 2
演出:朝弘佳央理
ダンス・原案:藤原亜美・朝弘佳央理
照明:David BLOCK
映像:實川順也
写真:丹羽史尋

□Dans le Brouillard 2
Mise en scène: Kaori ASAHIRO
Interprétation: Ami FUJIWARA / Kaori ASAHIRO
Lumière: David BLOCK
Tournage: Junya JITSUKAWA
Photo: Fumihiro NIWA

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