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一緒に戦ってくれるお腹の子と【37週~38週】

臨月に入り、胎児の推定体重は2700gーー。いつ生まれてもおかしくない重さに成長中だ。マタニティクリニックの先生から「子宮口が開き始めているね」と診察を受けて動揺した。自分の内側が準備を進めているのだなと感動しつつ、まだ心の準備ができていなかったことに気がつく。

病院から「バースプランを提出するように」と、A4サイズのアンケート用紙を渡された。質問は至ってシンプル。

1.母親になることや出産についてどんな印象をお持ちですか。
2.どんなお産をしたいと思いますか。何か希望はありますか。
3.今回の妊娠・出産についてパートナーの方と、どのようなお話をしていますか。
4.赤ちゃんの栄養についてどのようにお考えですか。(母乳のみ、ミルクと混合など)
5.退院後はどちらに帰られますか。
6.退院後のお手伝いの主力はどなたですか。

ざっと読んで、「病院側は、妊婦の心持ちや環境を把握したいんだな」と思った。要注意の妊婦だとは思われたくない。「前向きに出産に向き合っているよ」と伝えるべきだと感じた。なので最初の項目は「家族もわたしも、病院を信じてがんばります。母子ともに健康に出産できる最善策でお任せします」と書いた。

その他の回答には、夫が立ち会いを希望していること。状況が許すならカンガルーケアをしたいこと。病院の方針上、自然分娩で進めるのは理解しているが、何か問題があれば帝王切開でも硬膜外麻酔でも進めてほしいことを記入。希望は書くけれど、プロに任せるしかないなぁと思う。

出産について、最悪な状態を想定することも必要だ。夫には「大きな決断を迫られたら、母子の健康を第一に考えてね。でも選択は任せます」と話した。言わないままは、余計に心配だった。

この10カ月間、妊娠に向き合ってきた。まだお腹の子を胎児とも呼べない妊娠初期のメモには、こう書いてあった。

取材帰りの天王寺駅の地下街で、かつ丼を食べてながらお腹をさすった。わたしのヘソ下には、5週目を迎える生命体がいる。妊娠アプリで見たところ、心臓をつなぐ太い血管が作られる段階だという。「一緒に戦ってくれるかい?」と言って、お腹をなでた。

毎朝、トイレに行くのが怖い。大量の血が流れだしたらどうしよう。まだ微量の血が出ることがある。8割以上の妊婦が経験する初期症状のひとつらしいけど、「この血が生命体の最後なのではないか?」と疑ってしまう。においを嗅いでみる。血のにおい。

怖さや不安を乗り越えて、知らなかったことを一つひとつ学んで、母親になる準備をしてきた。きっと十分ではない。正しいかもわからない。というか、正解などないのだろう。

今は、いつ来るかわからない兆しを待っている。あと数日かもしれないし、数週間後になる可能性もある。出産を経験した人から「乗り越えなければならない痛み」の話を聞くと、正直ひよってしまうけれど、助産師や医師のサポートを受けながら、わたしとお腹の子で乗り越えたい。

新生児用の靴下。小さいなぁ。

(記:池田アユリ)



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