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拘りを持ち続けること

今週末で中学生、高校生は終業式になるところも多く、いよいよ夏休みです。僕らのチームでは、毎年夏に中学生向けの体験練習会を実施しています。今年も夏休み期間に計4回の体験練習会を実施しますので、もしお知り合いの中学生で少しでもアメフトをすることや日本一を目指すことに興味がある方がいらっしゃれば、ぜひ、お声がけください。


さて、本日は、チームの勝利に向けて「拘りを持ち続けること」が大切だと感じていることについて書きたいと思います。
他のチームの実態が見えない中で、且つ、定量的にも表し難いため、「拘り」の量を評価するのは難しいと感じています。けれど、試合の日に「●●について、どこのチームよりも俺らが拘ってやってきた」と胸を張れるぐらい準備することで、自信を持って試合に臨め、苦しい場面でも原点を思い出させてくれます。チームを奮起させるのに「拘りを持ち続けること」が凄く大切だなと思っています。


・ベースを突き詰める
・自分たちでゲームの流れを創る為の行動を続ける
・メンバーの集中力を極大化する


・ベースを突き詰める
アメリカンフットボールは戦術を多彩にするため、「フィールドにどの11人が立つか」×「どのようなフォーメーションか」×「11人がどのような役割/動きをするのか」の掛け算が各チームの持っているプレー数になっており、細分化すると優に100種類を超えるプレー数になるチームが少なくありません。このような多くのサインプレーの中から、次はどのようなプレー展開になるのかを予測しジャンケンに勝ちにいくような頭脳戦は間違いなくアメフトの大きな魅力の1つです。


しかし、それよりも大事なこととして、自分達のベースとなるプレーを徹底的に鍛えることが挙げられると思います。
オフェンスで言えば、どんなプレーをするかを相手が分かっていたとしても止められないプレーを創り上げることですし、ディフェンスで言えば、相手がどんなプレーをしてきたとしてもこのサインであれば止められるというプレーの構築です。
当然、相手も研究や対策をしてくるため、このベースプレーだけで闘い続けることは困難ではありますが、このベースプレーが強いことで様々な効用があります。

1つ目は、自分達のベースがどの程度相手に通用するのか、今後の試合運びを考えられるような力試し、相手との比較の種になります。

2つ目は、プレーの展開幅が広がることです。ベースがあるからこそ、それを軸にした横展開が可能になります。ただ単に色々なプレーを準備していることよりも、強いベースがあった上でのプレー展開がある方が効果が高くなると思います。

そして、3つ目は本当に困った場面や苦しい状況において立ち戻れることだと思っています。自分達の強さは何なのか、根幹を鍛え続けていくことで最後には吹っ切れた気持ちで修羅場に立ち向っていけるのだと思います。



・自分たちでゲームの流れを創る為の行動を続ける
私は自チームではヘ主にディフェンスを担当しています。ディフェンスというとどうしても「守り」というイメージになるのですが、私は「攻めるディフェンス」を創りたいと思っています。


サインでは、相手のフォーメーションに合わせた各人のアライン(セット位置)、プレーに合わせたレスポンス(やらなければいけない役割や守り方)は定義していますが、こちらから仕掛けられるように様々な動きをするサインを準備し、同じプレーを止めるにも動きの角度やタックルする選手を変えられるようなバリュエーションを持たせています。


しかし、それ以上に大切にしている事は、

次のプレーの作戦を伝達しフィールドに皆んなが散る瞬間に全員が大きな声を出し一致団結すること=「次のプレーも全員でやり切ろう!」と気合いを入れること、最後までボールを持っている選手を全力で追いかけ続けること、タックル時にボールを持ってる選手からそのボールを奪い取ろうとすること、もしくは、パスが投げられた際にそのボールを奪い取ろうとすること、を徹底的にやり切ることです。


試合では自分達に追い風の展開もあれば、押され気味なムードになることもありますが、僕らはどんな場面でも攻める気持ちを持ち行動を続けることでこれまでに何度も危機から脱するとともに、チームに勢いをつけてきました。

2016年のクリスマスボウルでは前半は劣勢だった中、後半開始早々の相手の攻撃を2回連続でパスを奪い取りオフェンスに良いフィールドポジションでボールを渡し、その2回ともオフェンスが得点に繋げて逆転しました。

昨年のクリスマスボウルでは4Q開始時には19点差で負けていましたが(3回以上の攻撃権で得点しなければ勝てない状況)、1度はタックルをする際に相手からボールを奪い取りオフェンスの得点に繋げ、もう1度は奪い取ったボール自分たちで拾い上げて得点にしました。

決勝戦、しかも劣勢の状況でこのようなプレーができるのは、ゲーム中の雰囲気に合わせるのではなく、常に自分達でゲームの流れを創るための行動を徹底的にやり切っていたからなのだと思います。


・メンバーの集中力を極大化する
僕はメンバーの集中力が高ければ高いほど、プレーにおけるパフォーマンスの発揮度合いや練習での生産性が高くなると思っています。その前提で言えば、選手達が如何に集中力高くプレーできる環境を創出するかが、コーチとして重要な役割だと考えています。


全体を俯瞰する高い視座は身に付けて欲しいですが、実際にプレーする場合には、なるべく余計なことは排除できるよう心掛けています。
アメフトでは、プレー間や攻守交代の間に過去の振り返りや次の展開を議論できる作戦タイムがあり、これを有効活用することで、今に集中できるようにしています。
直前のプレーで大きなミスをしようが次のプレーには全く関係のないこととし、未来の試合展開にはコーチである僕が責任を持ちます。

そのため、選手には「目の前の1プレーに集中し、一歩の角度を追求し、一瞬の判断に意思を込めろ」と常に伝えています。

試合は生物なのでどのような状況になるかは分かりません。1プレー1プレーを丁寧に積み重ね、結果として勝っている状態で試合終了を迎える事が必要です。今、目の前のプレーを無駄にするとそのプレーは返ってくることはありません。そして、次のプレーを先どりすることもできません。だからこそ、目の前のプレーに集中して臨むことが大切です。

また、一歩踏み出す時の足の向きや、判断スピードの違いが、素晴らしいプレーができるか否かを分けます。このちょっとしたことに拘り続けられるかどうかで選手の成長スピードも大きく変わります。だからこそ、選手には「なぜ、その角度に一歩出したのか?」「この場面でどういう意思を持ってこういう判断(動き)をしたのか?」などを練習から問いかけ、目線を擦り合わせるようにしています。


選手の集中力を極大化することは、試合での闘い方を説明する際にサインの狙いや各人の役割などの理解スピードが上がり、試合でミスが起きた時にも修正しやすい状況を創りだせます。そして何より、選手自身が試合において高いパフォーマンスを発揮してくれることに繋がっているのであろうと思っています。