父さんの話。2

父さんがバックヤードから出てこない。
暖簾の隙間から見える父さんはなにやら椅子に座り込んだまま携帯を激しく見つめ、必死に文字を打ち込んでいる。

そんなこんなしているうちに、店は予約のお客様が15名ほど来店し、いつもの賑やかさに包まれていった。
満席になった時に父さんはとぼとぼと私の方へやってきて、こう言った。

「俺酔っ払ったし、帰るわぁ。」

この人はいつだって自由である。

父「今ちょっと喧嘩してんねん。」
私「こないだ結婚したいとかゆうてたとこやん、どないしたん?」
父「俺は別れる方向に持っていってるから。(キリッ)」
私「へー、てか、じゃあ付き合ってるんやぁ。」
父「え、、いやーわからへん。」
私「なんなんそれ。」
父「とにかく俺はもう好きすぎて辛い。こんなに辛いなら別れた方がマシや。」

…………青春かよ!!

私「うん、わかったからはよ帰り。」

しかし、69歳にもなって辛くなるほどの好きな人が出来るってすごいわなぁ。

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