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EPOCH MAN「オーレリアンの兄妹」

「オーレリアンの兄妹」EPOCH MAN @駅前劇場 平日マチネ公演にも関わらず、満席。 現代版ヘンゼルとグレーテル。 両親に苦しめられ育った兄と妹。 必死の思いで家を出て、辿り着いたのは不思議な小屋。 壁に埋め込まれた四角い箱からは家具や食べ物、洋服が現れる、あたたかな小さな空間。 舞台美術だけでも満腹になれるのは小沢さんの舞台の魅力のひとつ。 初めこそはそのあたたかで不思議な家にはしゃいでいたが、一旦外に出ようと試みた兄のフラッシュバックにより一変。 妹を護るつもり

    • いつかの夜

      夜、病院の地下から聞こえてきたジャズの音色 仕事を終えた先生がレコードを回していたのだろうか

      • 言葉に呪われている

        「若さを売りにしていたら、そのうち使ってもらえなくなる」 以前勤めていた会社の上司に言われたこの言葉に、今でも呪われている。 年齢を売りにしていたわけではないが、それでも歳を重ねていく中で何も手に残っていない自分の姿を改めて見てみると、確かにそうかもしれないと思わざるを得ない。 この先、何度もこの呪いの言葉に足を止められることになるだろう。 それがもし20年後にも続いていたら、カジュアルにスーサイドするかもしれない。 残すものも残さなければいけないものもない私は、案外

        • 某人のようなものについての

          「某」川上弘美 を読んでのメモ 誰でもない者、という者が存在する現世に近い時代。 結局彼らがどのように生まれてきたのか、なぜ存在しているのかという謎は明かされないままだったが、彼らは彼らでただ生きていて、自分たちがどういう存在なのかを静かに考えていた。 何年も、何十年も、姿形を変えて。 愛すべき人に出会い、相手のために生きたいと思う、犠牲になる? という気持ちが芽生えた人だけが変化できなくなる。 そんな彼らに対し、強烈な憎しみをもった人もいる。 その理由も分からずじまいでは

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          ひまわりとトリコロールカラー

          梅雨の時期、じとじとで体はしんどいけれど、暗い雲の下の緑はどんどん濃くなっていって、視覚と嗅覚でオゾンを感じる。 たまの晴れの日にてりてりの深緑を見かけたら、もう夏かと季節の移ろいを感じる。 行きの電車の話 家と家の間の空き地にいた招き猫。 ただまっすぐに目の前を見つめる猫、生茂る緑によく映えていた。 晴れの日はきらきらと輝く。 帰りの電車の話 横浜から東京へ向かう車窓、波形のようなビルたちを目で追う。 それをただぼんやりと、波打ち際で眺めている。 古い原宿駅 夜に電灯

          ひまわりとトリコロールカラー

          水曜日のドロステ

          『セキヤ泥だらけ #13』で紹介した音楽について。 三浦透子「FISHANDCHIPS」 作詞/作曲/編曲:津野米咲(赤い公園) 三浦透子さんを知ったきっかけは、映画「天気の子」。 あの歌声に一瞬で虜になり、映画を観終わってからは何度も脳内でリピートしていました。 そして再び彼女の声と出会ったのが、今年の5月。 1st mini album 【ASTERISK】(アスタリスク) 全7曲、トータルで約30分。 朝の通勤電車でなんとなく再生ボタンを押してみたら、あっという間

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          犬と怪我

          私の右脚には傷跡がある。 薄い、まるで繊月のような形の。 これは昔、一緒に暮らしていた犬の爪が当たって付いた傷だ。 幾つの頃だったか、犬と遊んでいた時に爪が触れて3cmほど綺麗に切れた。 痛みよりも驚きが大きくて、鮮やかな血が自分から流れていることに体が冷えた覚えがある。 傷は問題なく塞がりかさぶたも取れたが、痕はうっすらと残ってしまった。 指で触ってもわからない程度ではあるけれど目には付くので、正直少し嫌だった。 数年後、2013年9月7日。 この日が犬との別れの日と

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          ラジオのことだけ

          書きたいことを適当に。 ーーーーーーーーーーーーーー ・東京でのラジオ生活について ・今年の改編で泣きまくった話 ・ラジオ特有の"縦のつながり" ーーーーーーーーーーーーーー こちらの3本立てでお送りします。 それでは、どうぞ。 【東京でのラジオ生活について】 東京の朝は、J-WAVEで始まる。 リモートワークになり出社が週に1日となった今、毎日がラジオ三昧だ。 職場は環境音とたまの会話のみで、ほぼ無音。 自分の咀嚼音までもが気になるほど静かなので、逆

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          夢の中の住人

          その人とは、数か月に一度くらいしか会うことができない。 夢の中の住人(男の子)は、夢を見ている人(女の子)のことをとても好いているらしく、そのことに彼女も気付いているようだった。 ただ彼女は、彼から想われているほどの気持ちではないよう。 数か月ぶりに再会した2人。 幾度目かの夢の中での逢瀬。 いつもと同じように、薄暗い家でお喋り。 夜明けを気にしながら。 彼は頭の隅で考えていた。 「今夜こそ、あの子を夢の中に閉じ込めてしまおう」 朝が近づき、玄関へと向かう2人。 扉の前に

          夢の中の住人

          キティちゃんと同じ誕生日なのが嫌だった

          小学生の頃、自分の誕生日が誰と一緒かという話題になった。 わたしは自分がキティちゃんと同じ誕生日ということを知っていたけれど、その場で言えなかった。 女の子が好きなキャラクター代表みたいで、なんだか恥ずかしかったからだ。 幼い頃のわたしは、髪も長くてスカートも履いて、いわゆる普通の女の子だった。 変化があったのは、小学1年生のとき。 長かった髪を短く切り、制服以外にはスカートを履かなくなり、男の子になりたいという気持ちがほんのり芽生えた。 「人は好き、だけど、彼氏が欲しい

          キティちゃんと同じ誕生日なのが嫌だった

          ピンク・リバティ「煙を抱く」

          四国の海、民宿、工場の風景が舞台の上にあった。 箱しかないのに、全部が見えた。 なんだか、恩田陸の「月の裏側」のような暗い空気感。 抜け殻になった人が新たに形成されるような。 その地域だけにしかない風習。 感情がいっぱいいっぱいになると、全部が抜けて新しい人に生まれ変わる感じ。 だから喧嘩をしていた奥さんからも、旦那さんの顔の記憶がそっくりそのまま消えてしまったのではないかと。 いらなくなった感情やメーターが振り切った感情は、ごみ処理場でごうごうと焼かれる。 そういう

          ピンク・リバティ「煙を抱く」

          HOSHINO GEN DOME TOUR『POP VIRUS』

          はじめての星野源さんのライブ。 とにかく、愛が詰まりまくっている時間だった。 源さん自身がものすごくライブを楽しんでいて、終始ニコニコして、その姿だけでしあわせな気持ちになった。 自由気ままで痛快なバンドメンバーも最高。 いろんな場所で遊んだり、ダラダラ話したりと、まるで日常風景を見ているようでもあった。 源さんが笑いながら膝から崩れ落ちる姿は、ラジオでひっくり返りそうなくらい反って笑っている姿に重なって、いつも電波の向こう側にいる人が、今、目の前にいるのだと静かによろこ

          HOSHINO GEN DOME TOUR『POP VIRUS』

          みみばしる

          「みみばしる」@下北沢 本多劇場 J-WAVE30周年×劇団ゴジゲン10周年企画公演「みみばしる」 ラジオ番組「JUMP OVER」のリスナーと創る舞台公演 2019年2月に本多劇場ほかで上演する演劇を、リスナーとともに創作を重ねるという企画。 出演者を演技経験不問のオーディションで選出、応募総数は824名。 https://mimibashiru.com/ 「こういうのを待ってたんやー!」と、叫びたくなった。 本当に、本っ当に、いい舞台だった!! ちょっと不安だ

          みみばしる

          月刊「根本宗子」「愛犬ポリーの死、そして家族の話」

          月刊「根本宗子」 「愛犬ポリーの死、そして家族の話」 2018年、3度目のねもしゅー。 そして、2018年観劇納めとなった作品。 4姉妹の末の妹・花の22歳の誕生日。 唯一心を開いていた愛犬ポリーの死をきっかけに、新たな感情と出会い苦しみながらも、花が成長する物語。 生前、ポリーがどこからか拾ってきた鳥井柊一郎という作家の本。 花はその本を飽きることなく何度も読んでいた。 ポリーが死んだ日、Twitterにそのことを書き込むと、なんと鳥井本人からDMが送られてきた

          月刊「根本宗子」「愛犬ポリーの死、そして家族の話」

          柿喰う客「美少年」

          劇団 柿喰う客 新作本公演「美少年」 あらすじ ーーー 昭和最後の年。閑静な住宅街で起きた美少年誘拐事件は、地域住民や教育関係者、マスコミも巻き込む大騒動となったが、少年が無事に保護されたことで被疑者不明のまま解決した。 あれから30年。かつて美少年だった男が新たな誘拐事件を起こし歴史の闇に葬り去られた悲しくもおぞましい事実が露見する。 ーーー 男4人、それだけの舞台。 照明だけが、彼らと“美少年”を照らしていた。 正直言うと、前回公演はわたしには面白く思えなかっ

          柿喰う客「美少年」