罪と罰

今日、警察の事情聴取を受けた。

歩いていたら、飛び降り自殺の人が目の前に落ちてきたから。

警察は私がその人の知り合いだと思ったんだろう。

飛び散った血の中に倒れて、虚空を見ているその人を見て、私は話しかけたからだ。

「同じ中学校の同級生だったの?」

警察は聞いた。

私は「はい」とだけ答えた。

「中学校卒業以来、会ってない?」

「私が卒業してすぐに引っ越したので、会っていません。同窓会にも出てません」

「地元に戻ってきたのはいつ?」

「ほんの半年前です」

「そうか」

警察はつぶやく。

「今日はありがとう。帰っていいよ」

しばらくして、私は解放された。
とんだとばっちりを受けた。
せっかくの休日が台無しだ。

「あぁ、君」

警察が呼び止める。

「なんですか?」

「君は彼に何を話しかけたんだい?」

個人的な疑問だろうか。
私は答えた。

「最初はびっくりしたんですが、見てるうちに『生きたかった……』って言っているような気がして。

だから言ったんです。

『生きればよかったのに』って」

私の言葉に警察は露骨に眉をひそめる。

「では失礼します」

私はそう言って、その場を立ち去った。

私は嘘をついた。

彼は『生きたかった……』と言ったわけじゃない。

『こんなはずじゃなかった……』

そう、目が言っていた。

私はおかしくて、思わず話しかけてしまった。

私を弄び、傷つけ、無残に捨てた彼に。

「これは罰だよ」

やっと警察署から離れ、人気の少ない道に出て。

私はずっとずっと堪えていた笑いを漏らした。

笑う声は次第に大きくなり。

薄暗くなった空にいつまでも響いた。

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