雨の朝の訃報

あの日から4年9ヶ月。
3月11日に、彼女は空に還った。

訃報を受けた朝は、冷たい雨が降っていた。
一日中、止まずに降っていた。

足が、勝手に動いた。
彼女のいた部署の部屋、彼女のデスク。
動けなくなるギリギリまで、働いていた彼女の、整頓された机。
片付けの引き継ぎのメモ。
「またきます」の文字。

彼女の椅子の背もたれを掴んだ途端、
口がつぶやいていた。

「がんばったね」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?