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声が枯れてしまった

 2023年6月12日

 四半世紀というライブにピンで出させていただいた.

 朝,声が出なくなった.理由はよく分からなくて,出そうと思えば出るが,ガラガラ声なので,とても舞台では持たそうになかった.

 前の日に,UNDER25という25歳以下のお笑い賞レースで,ユニットを組んでいたうさぎマンボが無事に一回戦を通過することが出来た.設定は僕が持っていったもので,ユニットメンバーのめっちゃ最高ズの小畑さんとソルトレイクのはらぼーさんと一緒に作った.自分の考えたものが生きているようで、すごく嬉しかった.

 それゆえに,声が出ないということがすごくショックだった.声は大事で,最近は重要な舞台も多かったので,特に注意していたのに.ライブにピンで出たのは,UNDER25にピンでも出るため,その為のコントをしたかったからだった.しかしながら,これでは,コントをやるどころか,話す事さえ無理そうだった.

 なので,声がなくとも出来そうなネタをやろうと思い,朝ずっと考えていた.思いついたのがフリップネタだった.僕は絵をかくのが好きなので,前々から,絵で笑いが取れないだろうかと考えていたので,ちょうどいいと思い,絵にした.

 ただ,このライブ自体,UNDER25の調整の為のライブだったので,UNDER25に関係ないネタをするのも違うなと思い,もともとピンネタがいくつかあったので,それを一枚の絵と一台詞で表そうと思った.言うなれば,ピンネタの羅列だ.お客さんに見せて,ウケたフリップを,ピンネタにしようと思った.

 作っている途中,観にくいなと感じた.単なるピンネタの羅列だと,観ている側がどう観ればいいか,不明確な気がする.なので,僕のピンネタの中でも,切ないものに絞って,羅列することにした.

 生活の中で,誰も悪くはないけれど,一生懸命なのだけど,報われない瞬間みたいなのがすごくあって,それが面白いなぁと思うので,切なさを感じるコントをやりたかった.でも,作っていく中で,最初の感情とは違う方向に行ってしまうので,難しいなとも思う.


 ライブでは,ホワイトボードにマジックで書いて,喋ることにした.そして,出番を迎えた.何故だか,変なところで,予期せぬよころで笑いが起きる.何故なのか分からなくて,でも必死に,無言でフリップをめくった.

 出番を終えて分かった.僕のフリップの,線が細すぎて何の絵がかいてあるのが全然分からないから,笑いが起きていたのだった.めくれどめくれどほぼ白紙のフリップが登場する.僕は笑わせることが出来なかった.


 声も出ず,やりたかったピンのネタもできず,笑わせることもできず,終わってしまった.何よりも全力を尽くせなかったのが、悔しい。

 とはいえ,いろいろとこうした方がいいなと思えたことも,たくさんあったので,それは収穫だった.出て良かった.いろはラムネとしてはもちろん,一人でも芸人として出来ることはたくさんあるなと思った.


 病院に行くと,喉が炎症していて,風邪やコロナにかかりやすいと言われたので,引き続き,気を付けようと思う.

 ライブで他の出演者にもいろいろ聞いて,このライブでやる予定だったピンネタはボツにしようと思ったので,せっかくだから,この下に台本を載せようと思う.ボツになるとしても,やりたかったな.

 帰り道,道でいくつかの卵が割れていて,でろりんとなっていた.割れた背景を考えると,すごく切なくなった.


タイトル「借り物競争」
下手より登場

「誰か,腕時計ないかな,腕時計持ってる人!僕に貸して!」(きょろきょろしている)
「貸してくれるのか!ありがとう!」(客席方向に相手)
(受け取る)
「あれ,え,あれ,え,これ僕の腕時計だよね」
「この前無くした僕の腕時計だよね,なんで持ってるの?」
「今ミスったって言った?ミスったって言ったよね?ミスったって言ったよね?」
「もうほぼ答えじゃん.」
「…返す?返すって何?借り物競争で返されるって何?まず第一に貸してないぜ.そしてもうミスったって言ってる時点で無理だぜ」
「え,うんうん,分かってる,分かってるけど,ちょっと今ゴールできそうにはない.僕だけ返される物競争になってるから」
(違う人に向けて言う)
「え,盗ったの?ねぇ盗ったの?なんか言ってよ,ねえ盗ったの?」
「うん,ごめん,今,勝つのが白か赤かどうでもいい!今,彼が白か黒かの方が大事だから」
(違う人に向けて言う)
「ねぇ盗ったの?言って,それ聞いたら,もう行くから」
「盗ったの?盗ったの?盗ったの?盗った,盗ったんだ!…盗ったんだ!」
「…じゃあ,もう行くわ,とりあえずゴールしてくるわ」
(はけようとする)
「え,なんで,持ち主に盗ったもの渡しちゃったの?ねぇ」
「普通さ,気を付けない?バレないかな,バレないかなって注意しない?それはとどのつまり,君は盗んだだけで満足していたからじゃない?」
「早くゴールしてときみが言う権利はないと思うよ,今!」
(前のセリフと間髪入れずに)
「…君は今,おもちゃを買ってもらって,すぐ遊ばなくなる子どもとまったくもって同じだよ」
「手に入れて,『うわぁ手に入れたぁ』で満足して,そんで『あれどこに行ったかな』ってなっちゃう」
(動きながら)
「欲しかったものなのに,意識が向かなくなる,だから,あろうことか持ち主に盗んだものを渡しちゃう(地続き)うん僕はもう盗むことよりも盗んだものをほいほい持ち主に渡しちゃうことに怒っている節があるね!」
「じゃあ,もうゴールしてくるから.あ,次の競技始まってた.」

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