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そっと、確かに、響かせる #01:オーディオ入門本がわからない

硬派すぎる入門と軟派すぎる入門

僕は音楽マニアにはなりましたが、オーディオマニアにはなりませんでした。皆さんはいかがでしょう。

音楽を聴いて楽しむ人はおおまかに、音質=ハード(オーディオ機器)にお金をかける人と、音質は二の次で音楽=ソフト(CD、レコード)にお金をかける人とに分かれると思っています。前者は今ならハイレゾ*や中古高級オーディオなどに嵌る人。音響重視のSACDや、LPならオリジナル盤のファーストプレスを探す人*、など。後者はレコード屋巡りが日課になっている人だったり、Apple MusicやSpotifyなどの定額制のストリーミングサービスに歓喜しているような人。

*ハイレゾ ハイレゾリューションオーディオ (High-Resolution Audio) とは、CDの限られた規格よりも広範囲の音質を実現しているオーディオソースを指します。主にダウンロードで音源をゲットします。この手の話は長くなるのでいずれ詳しく説明します。
*LPやCDにおける音質の違い、という話もまた後日の投稿で。

僕自身はよりたくさんの種類の音楽を聴きたかったのでCDを買うことにお金をかけていました。どこにお金を注ぐか、というのが分かれ目です。みなさんはどちらですか。どちらでもない、という人も多いはず。僕はそれでもオーディオ本を好んで読んでいましたが、その内容の多くは結局今の自分にとってそんなに役立っていないなぁと感じています。自分が求める情報以外の記事が大半だったからです。さて今日の本題。オーディオ入門本の話です。

ここに2冊のオーディオ入門本があります。1冊はオーディオ関連の老舗出版社から出ている正統派の「オーディオ入門本」。発行は2012年です。

開きます。

いきなり60万円のCDプレイヤーやアンプ*が写真付きで載っています。

*アンプ 正式にはアンプリファイヤー。わかりやすく言えばCDプレイヤーなどから出る微弱な音を拡張してスピーカーから大きい音として出すための出力増幅装置。スピーカー(ヘッドフォン含む)から音を出すために必ず必要な機器です。アンプは機材として独立していなくとも、スピーカーを内蔵して音を出せる音響機器ならどれにも入っています。例えばiPhoneにもごく小型のデジタルアンプが入っているはず。

…買えますか?

個人的に、音の良し悪しの違いは、まずスピーカーだと思っています。スピーカーを変えるだけでも劇的な音の変化があるのです。スピーカーのページを開いてみます。

スピーカーの歴史と構造の話から入っています。

…読みますか?

「そっと、確かに、響かせる」連載第一回目、ちょっと攻撃的な文章で始まっていますが、世にあるオーディオ本というのは大体がこういうものというのを知ってほしいと思いこんな書き出しになりました。オーディオ本の世界は好きな人は好きな話。しかし、あるひとつの事柄の中身が100としたら100すべて書かなくてはいけないような内容になっていて、ある程度の知識が無い人にとっては初っ端から「?」が続きます。全然詳しくないけどオーディオに興味を持ち始めたという人が読み始めるとするなら、これでいいとは思えませんし、少なくとも本のタイトルに入門を謳うべきではないと僕は思います。もっと言えば、60万円のCDプレイヤーを楽に買える財力がある人が頑張って読んで実践したとしても、自分自身の耳の音に対する意識が成長していかなければ知識だけが増え宝の持ち腐れになるのではないかと危惧します。

もう1冊です。

こちらは最近増えてきた「アナログレコード入門本」です。女子にもウケそうなデザインです(ごめんなさい皮肉入ってます)。LPレコードの「LP」の意味からレコード盤の持ち方なんて記事もあります。馬鹿にしちゃいけません、これ大事なことです。知り合いにレコード好きがいなければわからないことだらけだからです。でも、こちらの本は本当に入り口のことしか書いてありません。買ったり再生したりすることに関した内容だけ、と言えます。ファッションとしてのオーディオ趣味という捉え方。それはそれでとても良いんですが、趣味としてその先に続かせるためにはもうちょっと掘り下げた内容が必要になってくるはず。…手ごろなターンテーブル*を買ってレコードを数枚買って終わり、というのが目に浮かんでしまいます。

*ターンテーブルとはレコードプレイヤーの別称です。英語圏ではターンテーブルという呼び方が定着しているのではないでしょうか。レコードプレイヤーの呼び方は厳密には音響メーカー各社様々です。

僕はこの2冊を悪く言うつもりはありません。この2冊の中間に位置する、硬派でも軟派でもないオーディオ入門のためのテキストがあったら素敵じゃないかと思っているのです。また同じようにそれが必要だと思っている人も多いのではと感じます。100あるうちの全部を説明する必要はないのです。しかし、世の中にちょうどいいと思えるオーディオ入門本がありません(お金にならないからでしょうか?)。なのでその手本となるような連載をこのnoteで続けていきたいと思っています。硬派でも軟派でもない、あるいは硬派でも軟派でもある、という立ち位置は、CDという音楽作品を紹介する=語る上でも同じように重要だと感じていましたし、僕が「雨と休日」というお店でこれまでやってきていることと繋がります。釣りの本だったら釣りをしている時間の過ごし方について語る本があっていいし、車の本だったら速く走るだけでない、快適に走るための本があって然るべき、と。

連載の流れとしては下記の予定を組んでいます。ひとつのテーマについても中身を詰め過ぎず何回かに分けて掲載していきますし、必ずしもこのタイトルどおりに進むとは限りません。

高い音、低い音
スピーカーの向きで全てが変わる
音響的に良い音=心に良い音ではない
共鳴(置き場所編)
共鳴(部屋/建物編)
CDとかmp3とか圧縮した音
季節感、湿度感
音楽のリズムと身体のリズム
隣の家から隣の部屋から 
どの時間に何を聴く

(閑話)
高いオーディオはなぜ音が良いのか
オーディオメーカーの性格付け
Bluetooth~ワイヤレススピーカーの可能性
ヘッドホンあれこれ
オーディオ機器の大小
オーディオはデザインで選んでよし

時々、後半のような具体的なオーディオ選びについての小ネタを挟みつつ、オーディオのセッティングをベースにあれこれと書いていきたいです。ヘッドフォンに関してはスピーカーで音楽を聴くことと全く別物になるので、それは調整しつつ…。まずは次回、スピーカーの位置を動かしてみる、というこの連載の根幹をなす本題から入ります。毎月15/30日更新です。次回をお楽しみに。

【お知らせ】今後、当連載に沿った内容で実践を伴ったイベントを企画していきたいと思っております。雨と休日ツイッターをフォローしていただけましたら幸いです。https://twitter.com/ametokyujitsu
雨と休日というお店を知ってもらうためにも毎回1枚ずつCD作品を紹介していきたいと思います。
【冬の1枚】
Tobias Wilden / Artifacts/Scenes - Piano Works
http://shop.ameto.biz/?pid=98703265


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