商業登記ーT社③
今回は、2019年のT社とTIS社の吸収分割を考えようと思う。
以下のT社の電子公告は投資情報より引用した。
とても、あっさりとした公告である、TIS株式会社は、T社の完全子会社と思われる。
2019年2月27日 吸収分割公告
株主及び債権者各位
TIS株式会社の一部の事業に関する権利義務並びに保有するグループ会社の株式を承継する。
会社法第796条第2項の規定により、株主総会の承認決議を経ずに会社分割を行うことが決定している。
この会社分割に異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から1か月以内にお申し出ください。
なお、最終貸借対照表の開示状況は次の通りです。
今回の吸収分割の手続きで必要なこと
① 吸収分割契約に関する書面等の事前及び事後の備置き
② 株主総会における吸収分割契約の承認
③ 株主への通知等及び買取請求
④ 新株予約権者への通知等及び新株予約権買取請求
⑤ 債権者保護手続き
⑥ 新株予約権証券提供公告
①は 登記申請に関係なし、添付書面として吸収分割契約書
②の 株主総会における吸収分割契約の承認手続きについて
T社-承継会社では・・・第796条第2項簡易組織再編にあたる。
(TIS社分割会社では・・・第784条第1項略式組織再編に当たると思われる)
T社では簡易手続きの為、株主総会の承認決議は経ないで取締役会が吸収分割契約の内容を決定する。
TIS社への対価の種類や、承継する資産の額等がこの公告では不明なため、資本金の額が増えるのか、変わらないのか、わからない。
登記申請の添付書面として
T社の簡易分割に該当することを証する書面
TIS社の略式分割に該当することを証する書面、取締役会議事録または
取締役の過半数の一致を証する書面
③の 株主への通知等及び買取請求について
登記申請に関係なし
T社は株主に対して効力発生日の20日前までに吸収分割をする旨、分割会社の商号、住所を通知する。
株主に分割が進行中であることを知らせるとともに、分割に反対する株主に株式買取請求の機会を与えるためであるが、今回は、T社は簡易分割に当たるので、株主の買取請求はできない。
・・・T社は公開会社の為、株主に個別に通知する代わりに、公告をもって通知に代えることができる。この電子公告が通知の代わりであろう。
・・・TIS社(分割会社)においては③は全く関係なし、なぜならT社が全株式持っているから
④の 新株予約権者への通知等及び新株予約権買取請求について
登記申請に関係なし
新株予約権のことについては分割会社側の問題となるが、100%子会社
なので関係ないのであろう。
⑤の 債権者保護手続きについて
T社の債権者は、1か月を下らない期間内に分割に対して異議を述べることが出来る。債権者保護手続きが必要である。
分割に関する所定事項(貸借対照表等の計算書類含む)を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告するか、または、公告を官報のほか、定款に定めた官報以外の公告方法の二重公告によってする。
この電子公告は債権者保護手続きも兼ねているのだろう。
登記申請の添付書面として
T社では官報及び電子公告にて公告をしたことを証する書面
もし、異議を述べた債権者がいる場合は、弁済し、もしくは相当の担保
を提供し、もしくは相当の財産を信託したこと、または、債権者を害す
るおそれがない事を証する書面
TIS社についての債権者保護手続きの要否は不明
・・・物的分割の場合に当たると思うが、債権者が分割後に分割会社に請求できるのか、それとも承継会社に請求できるのかがわからないから。
人的分割はありえないと思う。株主はT社のみだから。
⑥の 新株予約権証券提供公告について
今回は登記申請に関係なし
TIS社(分割会社)で新株予約権証券が発行されていたとしても、
持っているのは完全親会社のT社だから、提供公告する必要はない。
以下その他の添付書面として
⑦ 資本金の額の計上を証する書面
・・・資本金が増加する場合のみ添付
⑧ 登記事項証明書(分割会社TIS社のもの)
・・・T社とTIS社の本店が同じ登記所の管轄内にあれば不要
⑨ 委任状
以上です。次回は、最後、株式併合を検討したいと思います。
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