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商業登記ーT社④

T社は2015年に不正会計が発覚する等、経営危機に陥った後、アクティビスト(物言う株主)とされる海外投資ファンドとの関係づくりに苦慮する。
JIP株式会社の完全子会社であるTBJH社は、T社が安定株主基盤を作り、安定的な経営体制の構築と運営を目指せるよう、T社の株式の非公開化を目的として、T社の普通株式の全てを対象とする公開買付けを開始した。
結果、公開買付者(TBJH社)が所有するT社の議決権の合計数がT社の総株主の議決権の90%以上を保有するに至らなかったため、T社の株主を公開買付者のみとするため、T社株式9,300万株を1株に併合する株式併合が2023年11月22日の株主総会で決議された。
公開買付けに参加しなかった株主は、株式の併合によって(スクイーズアウト手続き=少数株主の締め出し)、強制的に株式の現金化が図られる。
以下は株式併合の電子公告、投資情報より引用した。


22023 年 11 月 22 日 株式併合に関する公告
株主及び登録株式質権者各位
2023 年 11 月 22 日開催の臨時株主総会において、当社普通株式の併合(以下「本株式併合」といいます。)を行うことを決議いたしましたので、下記のとおり公告いたします

  1. 併合の割合
    当社の普通株式について、93,000,000 株を 1 株に併合いたします。

  2. 株式の併合がその効力を生ずる日(効力発生日
    2023 年 12 月 22 日

  3. 効力発生日における発行可能株式総数
    16 株

なお、本株式併合に伴い、会社法第 182 条の 4 第 1 項に基づき、本株式併合に係る株式買取請求権を行使される株主の皆様は、効力発生日の 20 日前の日から効力発生日の前日までの間に、当社に対して、株式買取請求権を行使する旨並びに買取請求者の氏名又は名称、住所、株式買取請求に係る株式の数を書面によりご通知ください。


なお、株式併合ともに単元株式数の定めの廃止等も承認決議がされている。

1株未満の端数が生じる場合の処理の方法
本株式併合により、公開買付者以外の株主の所有するT社株式の数は、1株に満たない端数となる予定。 本株式併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、会社法第235条その他の関係法令の定める手続に従い、当該端数の合計数(合計した数に1株に満たない端数がある場合には、当該端数は切り捨てられる。)に相当する当社株式(以下「端数相当株式」という。)を売却し、その売却により得られた代金を株主に対して、その端数に応じて交付する。


1. 株式併合についての手続き

① 株主総会の特別決議によって次に掲げる事項を定めなければならない。
  1.併合の割合 ・・・・・・93,000,000株を1株の割合で併合する
  2.効力発生日 ・・・・・・2023 年 12 月 22 日
  3.種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
         ・・・普通株式
  4.効力発生日における発行可能株式総数 ・・・16株
(公開会社は効力発生日における発行済株式の総数の4倍
を超えることはできない)

② 取締役は①の株主総会で株式の併合をする理由を説明しなければならな い。 ・・・T社の株式の非公開化が目的

③ 単元株式数(100株)が廃止されたので会社法第182条の2から第182条の6の規定の適用がある。
  株式の併合をやめることの請求・・・法令、定款に違反する場合において株主が不利益を受ける恐れがあるときは差し止め請求ができる。
  反対株主の買取請求・・・株式の併合することによって株式の数に1株に満たない端数が生じる場合には、反対株主は1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
  ・・・2023年11月22日の電子公告

④ 株主及び登録株式質権者に①の株式併合に関する決議事項を効力発生日(12月22日)の20日前までに通知しなければならない。
 通知は公告をもってこれに代えることができる。
  ・・・2023年11月22日の電子公告

⑤ 株券提供公告・・・株券は発行していないと思われるので関係なし。
⑥ 効力発生日にその日の前日に有する株式の数に株式併合の割合を乗じて得た数の株主となる。
⑦ 効力発生日における発行可能株式総数についての定めに従い、当該事項にかかる定款の変更をしたものとみなす。
  ・・・定款変更の擬制
⑧ 株式の併合に関する書面等の事前事後の備置き

登記申請の添付書面は、株主総会議事録、株主リスト、委任状

以上、T社の上場廃止までの大雑把な変遷を、登記手続きの観点から考えてみました。
なぜ、T社が気になっていたかといいますと、父が電気工事士で、我が家の家電はほとんどがT社製だったのです。昭和の時代のT社の製品は、壊れにくいという理由で父のお気に入りでした。その影響を私も受けていて、以後、私も仕事でT社の工場の担当になったりして、T社には良い印象しかなかったのです。
ですから、家電事業部が売却されたときは、ちょっとショックでした。時代や社会情勢でしょうがないといえばそれまでですが。
そして、東日本大震災による原発事故、原子力事業は縮小化かと思えば、逆に、米の原発企業を買収したときは???どうして、そうなるの?と不思議に思いました。よく知らないが外野の浅はかな考えではありますが。
ですが、T社のファンであることには変わりないのです。非公開会社になって、リセットして、また復活を願っております。

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