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1日10本!New York Fashion Weekのキャスティング

海外で初めてランウェイを歩いたのはニューヨーク。今回はそんなニューヨークファッションウィーク(以下NYFW)出演をかけて行われる”キャスティング”(海外での呼び方はオーディションではなくキャスティング)に焦点を当てたいと思います。
日本とは全く違う仕組みや開催される規模の大きさ、人数の多さなど、全てに驚かされます。

キャスティングはショー開催時期の約2週間前から始まり、そこからほぼ毎日行われます。私の場合、日本の東京ファッションウィークでは多くても1日に4〜5本でしたが、ニューヨークでは1日10本行くなんてことも…!さらに多い子では15本というモデルもいました。

◆スケジュールを自分で組む

前日に、翌日のキャスティング情報としてブランド名、受付時間、キャスティング会社(ディレクターの名前)、住所などが事務所からメールで送られてきます。

事務所からは特に行く順番を指定してこないため、自分で詳細を見ながら、その日1日どうやってキャスティングを回るか、ある程度の順番決めをします。時間帯がかぶっていたり場所が遠いものもあるので、携帯のアプリに住所を打ち込んで、所要時間を確認。慣れないうちはスケジュールを組むのに時間がかかります。
おまけに、前日に上手く組んでいたとしても、当日になって追加キャスティングの連絡があったり、いますぐここに向かってほしいという緊急の連絡も入ってくるため、気がついたらご飯も食べずに走り回っていた、なんてことも。。。

こちらは当時私がスケジュールを書いていたメモ帳。回る順番や、どのくらいの近さなのかを書き込んでおいたり、追加されたキャスィングを随時右上に(無理やり笑)足しています。

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これは何回かファッションウィークをこなしてから気づいたのですが、1つのキャスティングは数日間に渡ってやっていることが多く、その日に行かなくても、別日にまた行けることがあります。だからどうしてもスケジュール的に組むのが難しい時は、先にどのキャスティングを優先した方がいいかを事務所に聞きます。そうすると、事務所としても”ここは絶対に外して欲しくない”というキャステイングや、”ここは別日に行けるから心配しなくていいよ”という情報をくれます。

先に教えてくれたらいいのに…とも思いますが、この時期のマネージャーは忙殺されているため、細かい配慮までは中々できない様子(事務所に行くといつも疲れ切っていたな…)。
加えてニューヨークでは基本、聞けば教えてくれる、聞かなければ”大丈夫”だと思われる。こんなこと…と思うことでもとにかく聞いちゃうのが正解です。ただしこれは私の所属する事務所の場合なので、他事務所はまた違うかもしれませんが。

◆プレキャスティング

ここが日本と違うところ!と強く感じたのがこれ。
NYFWでは、各ブランドのキャスティングを受ける前に、キャスティングディレクターが行うプレキャスティングがあります。1人のディレクターは大抵何本かのショーを抱えている、もしくは有名どころのショーはほとんどこの人が手掛けている!なんて事もあるので、彼らの目に止まらなければショーには出演できません。
ここで通過したモデルだけが、デザイナーたちが見る通常の”キャスティング”に行けます。逆を言えば、ここですごく気に入られたモデルは、ディレクター自らが各ブランドに推薦してくれるため、この後のキャステングもスムーズに進みます。

そんなプレキャスティングでもやはり事件が発生するのがニューヨーク。今回はその中でも鮮明に記憶に残っている2つのエピソードをお話しします!

①キャスティングから帰される(泣)

数々のプレキャスティングが終わり、徐々に各ブランドのキャスティングが始まった頃。その夜も翌日のキャスティング情報が送られてきました。見ると、私が普段から好きなブランドの名前が載っている…!まさか自分がキャスティングを受けることになるとは!と、緊張がありながらも嬉しく、翌日は気合を入れてキャスティング会場に向かいました。

入り口でいつも通りサインイン(受付)し、廊下に並べられたパイプ椅子に座って他のモデルと順番を待っていた時、中から知っている顔の女性がやってきました。
彼女はキャスティングディレクター。先日プレキャスティングで顔を合わせたばかりでした。なにやら怪訝な顔をしていましたが、私が挨拶をすると一言、

”この前プレキャスティングで会いましたよね?だったら大丈夫。あなたのことはもう見たから。もう行っていいわよ。”

と言われました。一瞬何を言われているか理解できなかったのですが、”You can leave.”と言われたことに体が即座に反応し、その場をすぐに立ち去りました。
上記の言葉はつまり、”(この前のプレキャスティングで通過してないから)このブランドのキャスティングにあなたのことは呼んでない”、という意味でした。
帰り道に事務所に確認すると、マネージャーからはそのキャスティング会社から送られてきたメールが添付されてきました。
今回のキャスティングに以下のモデルを呼びますと書かれた下に、確かに私の名前が入っている…。数時間後に再びきたメールには、うちの事務所から6人ほど呼ばれた中で、Amiともう1人帰されたモデルがいたとのこと。これは明らかにあちらのミスでした。

実はこういうことは、珍しいことではありません。他にも何回か経験しています。ですが、この時の唯一の救いは、所属事務所がこの事態を重く受け止め、キャスティング会社にしっかりと対応してくれたこと。他のモデルにとってはどうかなとも思いましたが、”ここのブランドにはうちの事務所からは誰1人モデルを出さない”という決断をしてくれました。

②受付人数300人超え

NYFW中は、何百人というモデルがキャスティングを回っています。その中でも始めに開催されるプレキャスティングにはほとんどのモデルが行くため、待ち時間も尋常じゃない。

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初めてそれを体験したのは、会場に着いていつものようにサインインしたら自分の順番が200番台だった時…!!その後も増えに増えて300人は越していました。そしてその全員が一つのビルの中に待機…廊下は待ちぼうけのモデルで溢れかえってました。

私もその日、その後のキャスティングがほとんどなかったため待ちましたが、あれは辛かった…2時間以上待ちました。それでもまだまだ待ちそうだな〜と疲れ果てていた時、事務所からメールが。

”Go to fitting"

え…?フィッティングの予定なんて入ってなかったけど、急に…?疑問に思って返信すると、どうやら元々ショーとは別に、広告撮影のフィッティングが入っていたところ、マネージャーがスケジュールを送り忘れていたとのこと。せっかく待った2時間でしたが、キャスティングを受けずにすぐさまフィッティング会場へ。

会場に着くと、当初予定されていた時間からだいぶ遅れていたため、私は遅れたことを謝りました。

が、謝らなければ良かった!!

マネージャーは自分のミスだということをクライアントに伝えていないので、現場の担当者にはただただ私が遅刻してきたと解釈されました。
そういうのって日本人からしたら、え?普通マネージャーが謝るよね?って思うかもしれませんが(私は思った!笑)、彼らは簡単には非を認めません。ちなみに(スケジュールを送り忘れていたことを)私にも謝りません。本当にアメリカでは滅多に人に謝罪しないんだな、とその時は腹が立ちましたが、その後も向こうで生活してみて、逆に日本人は謝りすぎだなと自分自身を省みることになりました。
それにしても”Go to fitting"は酷い言い方だなとは思うけどね笑

ちなみに2時間待った例のキャスティングには、翌日もう一度行き、わずか30分の待ち時間で受けることができました!キャスティング自体は、挨拶して1〜2往復歩くくらいなので、所要時間は1分くらい。この1分のために何時間も待つって、今思うと本当にシビアな世界…でもこれを勝ち抜いて出演できた時は、本当に嬉しいです!


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