「水島大宙のDaichuショーROOM!」書き下ろし台本〜第二公演「Cooling」〜

第一公演の台本はこちら
BGMも後日公開しますね〜✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。

イベント当日にMCでも大宙さんが話してくださっていましたが、台本完成してしばらくしてから
大宙さん「この人絶対友達のこと好きですよね?」
ひつじ「(確かに...)じゃあそれで!!!」
ってやりとりがあったくらい、余計な計算をせず、力んだ構想をせず、自然に、湧き上がるまま書いていました。

音楽も文章も、身を委ねると面白い方向に広がったりしますね。
皆さんなりの解釈で楽しく読んでみてください♪


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僕がその店に着いた時
僕を呼び出した友人は、いつもの席に、いつもよりさらに項垂れて座っていた
丸まった背中が滑稽で、僕は小さくため息をついた

仕事は繁忙期だと言うのに、この友人は遠慮がない
遠慮なんてされても困るから、まあ、それで良いのだけど

待たせたねと隣に座ると、彼は少しだけ瞳に色を取り戻し、安心したように僕の名前を呼んだ
仕事から真っ直ぐここに来た僕を「お疲れ様」と労う声に
こいつの憎めなさが宿っている

僕の前に飲み物が置かれると、待ち疲れて首を長くしたキリンみたいに
いや、首が長すぎて絡まってしまったろくろ首みたいに混乱しながら
君は今日も同じ話を繰り返す

気持ちはわからなくないけれど
さっさと幸せになってしまえ、とも思うのだ




人は、臆病だ
目の前にある欲しいものにさえ
真っ直ぐに手を伸ばせない

ほんの少しの勇気と
ほんの少しの自信を持って
あとはほんの少しだけ、やけっぱちになればいい

背中を押してくれるのは
いつだって人と人との心が触れ合って生まれる
偶然という名の運命の音だ

人はそれを神だなんて呼ぶけれど
僕は買い被り過ぎなんじゃないかと思う

傷付いても、傷付けても
がむしゃらに手を伸ばし
伸ばされたその手を取るのは
他でもない君なのだから

君が恋する人の話を聞くのは何回目になるのか
記憶の糸を手繰り寄せて
6回目まで数えたところで
僕は考えるのをやめた

恋をすると馬鹿になる

付き合いの長い友達だって
繰り返し続くおんなじ話には呆れてしまう
思考を放棄したくなるほどだ

今の僕がまさにそれだった

『そんなに好きなら、云って仕舞えばいいじゃあないか』
その一言を何度飲み込んだか知れない

もしも本当に運命を操る神様ってやつが居るとするなら
隣で項垂れる友人のことを
どうか救ってやってはくれないだろうか

傷付いても、傷付けても
がむしゃらに手を伸ばし
伸ばされたその手を取るのは
他でもない君なんだ

それなのに、人間は臆病だ
目の前にある欲しいものにさえ
真っ直ぐに手を伸ばせない

僕だってそうだ

『お前ならきっと大丈夫』
『お前は幸せになるべき人間だよ』
そんな格好悪いこと、平気な顔して言えるかよ

だけど
いつだって背中を押してくれるのは
人と人との心がぶつかって生まれる
偶然という名の運命の音だ

もしもそれらを神と呼ぶなら
今この一瞬、僕は神になってやってもいいかも知れない

柄にもなく少し緊張したけれど
精一杯の平然とした顔で
僕はついに言ってやった

言われたそいつはポカンとして見せて
それから唸って俯いた
小さく『ありがとう』なんて言っていたから
おそらく僕はたった今
旧い友人の神になった



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