阿咪

( =^・^=)<記憶にございません。

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    ニンゲンをためています

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020 月ヲ見上ゲタ

カチカチカチ 僕はPCの操作をしながら旅館のシステムを見ていた。 もともとIT系の仕事をしていた彼のメモリーをもってすれば、大したことなさそうだ。でも、僕自身が何かに興味を持ってしまうと、そこで全部がストップしてしまう。気を付けなければ。 そんなことを考えながら、あれこれ操作していた。西藤さんたちが帰った後のオフィスは静かだ。 そうだ、明日から勤務だ。帰ろう…… 僕は、残って勤務をしているリャンさんに挨拶をするとオフィスを後にした。 外に出ると、辺りは真っ暗だった

    • 019 巨乳の美女

      七林女王の休むことのない攻撃はまだまだ続く。 多田さんは顔を白黒させ、うなづいたり、愛想笑いを浮かべたりを繰り返していた。 同じフロント事務所内とはいえ、こちらと向こう側では2mほど離れている。机も隔てているので、直接的な被害はないはずだった。でも、どういうわけか初体面を果たした二人はおびえているように見えた。 事実私以上に、二人はちらちら多田さんと女王の方をうかがっていた。そんな時、フロント事務所の扉があいた。 「おつかれさまっ!」 元気な声で入ってきたのは、焼津

      • 018 追撃の横で

        「それから…」 広い事務所に女王こと七林部長の声が鳴り響く。 「わたし、あなたに言ったよね。社用車の車点検まとめといてって。どうなった?」 「あ、は、はい、えーっと」 繰り出される女王の攻撃に、多田さんは、それこそただただうなずいたり、愛想笑いしたりしていた。 不謹慎だが、僕はこの様子を興味深く感じていた。どう考えても重要とは思えないことを引っ張ってきては、多田さんに、あーだこーだ言っている女王。これがパワハラと呼ばれるものだと気づくには、僕にはもう少し時間が必要だ

        • 017 女王

          多田さんのノロノロ安全運転で無事高速を降り、それによって発生していた渋滞は解消された。 周りの景色はいわゆるのどかな田園風景。自然が豊かで、多くの人が休日にはリフレッシュに訪れたいと思うようなそんな場所だ。 町と呼べばいいのかはたまた村なのか。 そんな中、車は目的地へと進む。 「わたしねー、今回初めてなんすよー」 多田さんが口を開く。どうやら旅館に来るのは今回が初めてらしい。 「あと、今日は部長いるから、またどやされるんだろうなー。あーめんどくさい」 「部長?」

        020 月ヲ見上ゲタ

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          3本

        記事

          016 たださん

          本社での面接から10日後。僕はあの面接の日の朝立ち寄った駅にいた。 あの面接の後、入社手続きが始まり、この時本社業務課の多田さんと知り合った。彼が入社までの流れともろもろを説明してくれた。そして、10日後、本社近くのあの駅で待ち合わせて、そこから就業先となる旅館へと彼が連れて行ってくれるという話が出たのだった。 僕は今回、この本社近くの駅まで、新幹線を使った。飛行機でも良かったのだけれど、このときまで僕は新幹線に乗ったことが無かった。なので、飛行機なら二時間足らずで来れる

          016 たださん

          015 LINEのあの人

          バス停からそれほど離れていないところに、駅がある。僕はいちもくさんにその駅を目指す。 面接の前に着替える必要があったし、歯を磨いたり、髭をそったりといった一連の朝のルーティンがまだだったからだ。 駅のトイレでそれらを済ませ、僕は面接のある場所へと向かうことにした。 スマートフォンで場所を調べる。歩いていけそうな距離だ。 大通り沿いをひたすら歩く。駅前はやけに高い建物が多かった。でもしばらく歩くと川があり、川沿いにはおしゃれな建物が並んでいた。橋の上でしばらく立ち止まり

          015 LINEのあの人

          014 嫌な胸騒ぎの意味

          深夜。バスターミナル。急ぐように次々に入ってくる車両たち。そしてそれを待つ大勢の人たち。 僕はそこにいた。次の面接地に行くにはやや遠距離を移動しなければならない。 でも、たぶんそこまでの交通費はでない。 それを考えると、安価な移動手段を探す必要があった。そして見つけたのが夜間バスだった。 「198番〜行きのバスが〜乗り場に到着してます。チケットお持ちの方は急いでください〜」 面倒臭そうなアナウンスが流れる中、バスを待つ大勢の人たちは、地べたに座り、ただただ自分の目的

          014 嫌な胸騒ぎの意味

          013 カミサマ ノ イル トコロ

          「すみませんねー。待たせちゃって」 おじいさんはそう言いながら、お茶を出してくれた。 「ありがとうございます」 僕はお礼を言って、早速いただいた。 おいしい…… この時まで食べ物や飲み物を口に運んで、おいしい、と感じることはほとんどなかった。もちろん雰囲気や記憶のかけらのおかげで、なんとなくおいしいのかな、と感じることはあった。 でも、このときの感覚はそれまでのどれとも全く違った。 「ささ、これも食べてみて」 おじいさんは、僕にお菓子を勧めてきた。 僕は、そ

          013 カミサマ ノ イル トコロ

          012 ターニングポイント

          部屋に着くと、自然と体が窓際へと向かう。かといって、何をするわけでもなく、ただぼけっと外を見ているだけ。 ブーッ ブーッ 窓際に立って1,2分経ったタイミングだったと思う。突然スマホが振動しだした。画面を見ると、電話の着信を知らせている。 20時過ぎているし、だれだろうと思いながら電話に出た。 「こんばんはー。xxさん。xx旅館のxxです~。すみません夜分にお電話差し上げて。」 電話の主は、LINE面接の温泉旅館の担当者だった。 「どうですか?その後の就職活動は?

          012 ターニングポイント

          011 黒スーツの正体

          事務所を抜け、先にある小さな部屋に通された。 「お座りください。」 そう言われ、僕は一礼して座った。 「履歴書をお持ちですか?」 封筒に入れてある履歴書を渡す。 面接の回数からいうと、この温泉地のホテルの面接で三回目の経験になる。 初面接は例の温泉旅館、そして次がIT関連の会社。 その時から漠然と、こういうことで人を判断したり、自分たちの組織へ招き入れるかどうかを考えるのが、非常に不思議だった。 いくらだって嘘はつけるし、逆にその人が持っているポテンシャルも全部

          011 黒スーツの正体

          010 黒いスーツの男

          台風が通った後のように、バスの中は静かだった。皆寝たのか、それともあれだけのことがあった後だからなのかわからない。とにかく静かだった。 バスは高速を降りて、山の方へと進んでいく。時間の経過とともに、周りの景色がそれを教えてくれている。 「温泉地に間も無く到着です。」 しばらくすると、運転手さんが温泉地到着を知らせてきた。 「直接ホテルへ行かれる方はこのままご乗車ください」 温泉地の中心部で下車することもできるらしかった。このときは、誰も下車する事なく、バスはそのまま

          010 黒いスーツの男

          009 ワレ、カク タタカへリ

          僕はどこの国の出身だとかで、その人を判断したりしない。それは多分、僕がいままで付き合ってきた人々皆が保証してくれるはずだ。 でも、現実には素行の悪さが目立つ人々の出身国が偏る、というのはどうしてもある。ヨーロッパなんかでは、とあるアジアの国の人々は店に入るななんて当たり前のように書いてあるくらいで、素行の悪い国は、人々がその所業を重ねれば重ねるほど、どんどん行動範囲を狭められていく。 良し悪しは別にして、世の中はこれが当たり前の流れだ。 シャトルバスが高速に入り、一時間

          009 ワレ、カク タタカへリ

          008 ブラック企業

          昨晩あまり眠れなかったせいか、少しウトウトしていた。でも、すぐにそのウトウトはどこかに去っていった。 「そうなんだー、アハハ」 「そうそう。結構大変なんだよねー」 声の主は、僕の席の前方から。若い女性二人組だったと思う。 僕がウトウトし始めた頃は特に話し声は聞こえなかった。途中から会話が弾んだのか? 「休みがさー、ほんと、思うように取れなくって。」 「だよねー。今回もギリギリだったもんね」 「そうなんだよねー。マジ、辞めようか悩んでたりする」 「えー、マジでー

          008 ブラック企業

          007 不健康自慢大会

          座席後部からしゃがれた声が聞こえる。 「あら、……忘れた。あーあ、どうしよ」 「忘れたて、なんばね?」 「薬、薬ばもってこんとならんかった」 「薬て、どこに悪かと?」 「なーん。血圧の薬たい。別に悪かこたなかばってん、先生がやんなはったけん、飲まんといかんだろたい」 「そがんたい。血圧てどのくらいね?」 薬を忘れたという会話が耳に入ってくる。言葉はどこかのエリアの方言のようで、僕はそれが興味深くて書き留めていた。 後で調べたら、どうやら九州地方あたりの方言らし

          007 不健康自慢大会

          006 禿げ上がったGT-R

          「おれわさぁ、ニッサンがなんであーなっちゃったのか、わけわかんねーんだよなぁ」 席の最前列の方から、話し声が聞こえる。だいぶ酒が入っている様子だ。 「ずっとGT-R乗ってきてやったんだけどさあ、今のなんかぜーんぜん買う気しねえよ」 僕は声の主を確かめたくなった。姿勢を変えるふりをして少しだけ座席から身を乗り出す。 禿げ上がった頭と、いかにもなメガネ以外これと言って特徴のない中年の男。それが声の主だった。 「俺を満足させるFRのスポーツカーはもうないんだろうなあー。ガ

          006 禿げ上がったGT-R

          005 BUS STOP

          シャトルバスが到着するという、有名なビルの前。 「遅れてはまずい」 僕はそう思い、一時間ほど前からバスの到着を待っていた。 ここまでの道のりは比較的順調だった。スマートフォンで検索をすれば、間違いなく目的にたどりつける。大体の場所はこのおかげで無事にたどり着けた。 でも、今回はちょっとだけ苦戦をした。というのも、シャトルバスの到着する場所として案内されたところには、バスの停留所らしきものがなかったからだ。 現地に着いたとき、僕は当然バスの停留所を探した。でも、表示板も

          005 BUS STOP