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あんころもちこ先生個展2021

あらためて、あんころもちこ先生個展「可愛いを研究するillustration2」に来てくれた皆様、支えてくださった皆様、ありがとうございました。 

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個展DM
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カフェギャラリーきのね 入り口

この記事は、もちこ先生のいまの感情を、文章という名のシャーベットにして、大切に保管してきたいという想いでつづります。 ただの記録みたいなものです。結構長いので、ゆる〜くどうぞ
前半は個展の振り返り、後半は個展までの裏話です。 


ところでなんで個展したんだっけ

まず、個展を終えていちばんに考えたのは、「なんのための個展だったか」。 展覧会にほとんど参加してこなかった私が、ようやく重い腰を上げられた原動力は何だったんだろう。

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1階は研究所風。小物や過去作品・ドローイングを展示

 答えは、綺麗事ではなく、それはもう本気で、「いつも応援してくれる人たちに喜んでもらえる機会と場所を作りたかったから」です。 
なにそれかっこいいよね私…?!好感度上げようとかではないです。(念押し) 

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2階は原画とグッズを中心に展示

本当にこの展覧会で「自分の作品を見て評価してほしい」とか「作品を売り込みたい」気持ちはほぼゼロに近かったです。私の活動はネット中心なので、これを機にリアルイベントで感謝を伝える場所を作りたかったんです。

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天井にまで飾り付け

 
でも結果的に私の方が、来てくれた人に幸せな言葉や元気を頂き、お金を頂きました。貰った言葉は次の制作意欲にお金は次の制作費に繋げて、またみなさんに恩返ししなきゃって思ってます。 


個展中うれしかった小話コーナー

(書き殴ったら自慢話みたいになっちゃいました。心から嬉しかったんです。この気持ちを残すことをどうかお許しください…)

【お手紙いっぱいもらった(いちばんうれしい!)】
私の宝物です見てください!!!!!!
(写ってないお手紙があったらごめんなさい…!)
私以外の人が私の作品をこんなに愛してくれるなんてミラクルですか…?どのお手紙も嬉しくて、胸がキュウってなりました。読むと個展準備の疲労や苦労なんて吹っ飛びました。

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特に「人生の支え」「毎日の生きがい」「ツライ時に助けられた」そんな言葉が綴られている度に、私の作品がだれかの人生の一部になれているような気がして、物凄い偉業を成し遂げた気持ちになりました。
やっぱり差し入れで頂いた物のなかで、お手紙がダントツで嬉しいです。一生の宝物です。本当に、ありがとうございます…!

【こどもが買ってくれた1200円の本】
勤めている絵画教室のこどもたちが何人かきてくれて、それはもう目をキラキラさせて作品をみてくれました。こどもたちにとって、身近な憧れの存在になれたらいいな。一緒におえかきもしました。

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そのなかでも、Aちゃんがお小遣いで本を買ってくれたのが本当に嬉しかったです。
「本ほしいな。せんせい、本いくら?」
「1200円もするの」
「うう、たかいね…」
そだよねぇ小学生低学年にとって1000円超えたら大金よねぇ…!って申し訳なく思ってたら、帰り際にちっちゃいお財布から100円玉と50円玉を数えだして「せんせい、本かうからサインかいてね!」って。私泣いちゃう。

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Aちゃんにとって、この本がきっとどうしても欲しい一冊だったんでしょう。もう、なんて可愛いんでしょうか…。先生、こどもたちのためならまだまだがんばれそうです。

【ごあいさつ文に共感の声】
あまり公言していなかった「可愛い研究というテーマが生まれるまで」の経緯を、今回会場のごあいさつ文として飾ったのですが。(ステートメントっていうらしい。かっけえです)
こちらの反響が意外にも大きく、真剣に読みこんでくれた人が大勢いらっしゃいました。

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タイトルは「可愛いは呪いだった※過去形」。一部抜粋して載せますが、長いです…!

 私が可愛い研究をはじめたのは、忘れもしない小学5年生の冬。当時の私は、今と正反対で男の子みたいでした
友達からは「〇〇君」と呼ばれ、もはや番長的な存在でした。男子にいじめられた女子は私のところへきて「男子をこらしめて」とお願いし、強かった私は男子を言葉で泣かせることも度々ありました。
そんな私にも、好きな男子が出来たのです。今までなかった「女の子らしく扱われたい」という柄にもない感情が芽生えはじめ、私は初めて、スカートを履いて登校しました。
結果は、大大大凶。好きな男子に「男がスカートを履いている!」とからかわれ、その日中、あらゆる男子に仕返しのようにスカートめくりをされ、女子トイレに追い込まれ、泣きました。男の子みたいな自分とは不釣り合いなスカートと女子トイレ、女子特権であったその服とその場所に、心がえぐられるような思いがしました。以降、私にとって「可愛くなりたいと思うことは恥ずかしいこと」という価値観が生まれていました。
 しかし、私は折れませんでした。どうしても女の子らしくなりたかったからです。 こうなったら、自分を変えるチャンスは、中学デビューしかないと思い、地元の人がほとんど行かない遠方の中学を受験することを決心しました。そして残りの小学生の時間、受験勉強以上に、可愛い研究に熱中しはじめたのです。可愛い女の子のしぐさ、言葉、振る舞いを徹底観察しました。次第に人間以外の可愛いものにも興味がでてきて、「どうしてこの文房具が可愛く思えるのか」考えたり、生き物や植物、色やにおいについても可愛いを見いだすようになりました。「可愛い」に敏感になった結果、私の毎日の世界は可愛い発見だらけになりました。
 それ以来、私は可愛い研究に激しく熱中し、中学・高校・大学も誰にも見つからないよう可愛い研究を日課にしていたわけなのですが。
 2016年、イラストレーターとしてデビューする際、人生を捧げてきた「可愛い研究」をテーマに作品発表することを決めます。なぜなら、誰よりも可愛いに対して執着し、向き合い、悩み、答えを出しつづけてきた自信があったからです。そして、「可愛い研究は恥ずかしい」という呪いを、断ち切るときがきたと思ったからです。
(以下略)

ただ可愛いものが好きなだけじゃない」ということを知ってほしかっただけだったのですが、この文章に共感してくれる人がたくさんいてくれて、中には読んで泣いて下さる方もいて…。
ずっと人生で抱えてきたコンプレックスが報われるような気がして、可愛いに苦しめられた思春期も悪くなかったなと強く思えたのでした。照れながら深夜に文章にしてみてよかったです。

【初日で初個展の来場者数を超えた】
あまり数は気にしないようにしてたのですが、4年前に開催した初個展よりたくさん来てもらえたらいいなーって、実はちょっと思ってたんです。でもコロナで少ないだろうなって。

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2階へあがるための階段前


結果、目標はなんと1日で達成しました。これが、憧れの大盛況というやつでしょうか…!?(調子に乗りすぎかもしれません)
感染防止対策はしていたのでご安心下さい。あと人が一斉に2階へ上がりすぎて、古民家なので店長が床が抜けないか心配されてたのには思わず笑っちゃいました。
来てくださった皆様には、会場までわざわざ足を運んでくれるエネルギーを考えると、本当に感謝しかありません …!

予想外の人数すぎて、たくさん用意していたグッズも飛ぶようになくなってしまって、3日目には完売してしまうグッズもありました。会期は9日間でしたので、まだ6日残っている状態でした。

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「このままでは最終日にすっからかんになっちゃう…?!それはせっかく来てくれた人に申し訳ない…!」とめちゃくちゃ焦り、会期中にドローイングを描き足したりしてました。

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あとで数えたら17枚も描き足したみたいです。壁に立て掛けてある大きいのも、会場で描き足した絵です。

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足を運んで来てくれた方が1枚でも沢山見れるように、満足してもらえるように、楽しんでもらえるように。本当にその一心でした。

【階段を何往復もしてくれる人たち】
個展会場は靴を脱いであがる2階もあったのですが、この階段を何往復もして下さる人たちがたくさんいて嬉しかったです。

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きのねのお家みたいな居心地よさと、私の「きてくれた人がたのしめる空間にしたい」という願いで考えた展示の相乗効果で、みなさんの滞在時間が長めな展覧会になりました。2階にあがった人がなかなか降りて来ません。なんと最長滞在時間は2時間。

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階段にもぎゅうぎゅうにラフや過去の作品を貼ったので、見ながら落ちちゃわないか心配してました。(特に自分)
また、2回・3回と、連日リピートして来てくださる方々がいたのも驚きました。この空間がなくなってしまっても、この方たちの心に残るなら寂しくないなと思えました。


※ここからは制作の裏話です。裏なんか知りたくねー!夢こわれるー!って方はここらでまたね。

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「どうしたら楽しんでもらえるか」めちゃくちゃかんがえた

実は最初、ただ壁に絵を飾るだけでたのしんでもらえる、自信がなかったのです。

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キャンバスプリントしたデジタル作品


私は基本、全ての制作過程がデジタルなので、普段の制作に原画という存在はありませんでした。展覧会は原画から作者の筆跡や息を感じられるから興奮するのに・・・!(大声早口)
なのでアナログで数展描き下ろしの作品を制作する他にも、何か工夫をしなければと思いました。

もちこ先生の珍しい描き下ろしアナログイラスト

そこでまず、展示+みんながあそべるコーナーを設けることにしました。

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ひとつめは決まっていました。 初個展に引き続き「可愛い研究報告書」です。来てくれた人たちに「可愛いとはなにか」を考えてもらい、会場に貼って飾ってもらう参加企画です。

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結果、156枚の報告書が集まりました
頂いた報告書も、後日まとめてツイッター等で公開しようと思っています。

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すごい厚み
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壁びっしりの研究報告

主催者ということをいいことに、ご来場くださった作家さん達にもたくさん絵をたくさんいただいてしまいました。役得すぎます。えへへ。(報告書の束を握りしめながら)

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大好きなイラストレーターさんに頂いた報告書

(でも、これだけじゃ、まえと変わらないな…)

つぎに思いついたのが、おみくじでした。ブラインドの缶バッジにおみくじがついてるんです。
これは単純に盛り上がるじゃん!これだこれだ!……と、思いましたが「研究所でなぜおみくじ…?」という疑問が消えませんでした。

名称未設定のアートワーク 107
没になったおみくじ缶バッチ案


これでは表面上だけの楽しさなのではないだろうか。その缶バッジを鞄につけて友達に「その大吉ってなに?」ってきかれたとき、熱く語れる物語がない、ペラペラのグッズになってしまわないだろうか。

そこで練りに練り直したのが「ランダム部署名札」でした。
引いたバッジには可愛い研究所の所属部署が書かれていて、運で配属先が決定してしまうバッジです。

DSC_0540のコピー
部署は5種類

せっかくなら、アタリも用意しました。
辞令(アタリ)が入ってるかも…?!」というキャッチコピーで、アタリを引いた人は、辞令・役職・手描きの役職バッジがもらえちゃうのです。

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係長、部長、課長など…

みんなワクワクしながら銀の袋を開封してくれるのが本当に嬉しかったです。
ただあっという間になくなっちゃったのが、後半来場してくれた方に申し訳なかったです。次はもう少したくさん用意したいです。

 壁に絵を飾るだけじゃない。
「可愛い研究所」という空間をまるごとつくりあげたい!

つぎに私は、壁に作品を飾るだけではなく「会場自体を作品にする」作戦を考えました。

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入り口に置いていた黒板


「個展会場に来た」というより「もちこ先生の可愛い研究所に足を踏み入れちゃった」「もちこ先生の世界に入っちゃった」って気持ちになって欲しかったんです。

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研究所みたいな会場で、来場者は研究員バッジや部署バッジをつけ、報告書を書いて、それを自分で飾り付ける。いつの間にか来場者は研究員となり、報告書は会場の一部となってゆく…。たのしそうじゃないか…。


展覧会って他人事みたいに一歩身を引いて見るけど、私はなるべくこの世界観に没入できる参加型の展覧会にしたい、と考えていました。だから私が普段の作業机に置いている小物や画材、モック(試作品)なんかも飾りつけに使ってみたりしました。

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それと「展覧会の楽しみ方をさぐれる人だけがエンジョイできる」のではなく「だれでも勝手に楽しくなっちゃう空間」にしたかったんです。例えるならユニバとかです。(例えの規模がバカでかい)
行くだけで、受動的に絶対に楽しい気分にしてもらえちゃうあの感覚です。

そこで以上考えてた事をまとめて、きのねの店長、まことさんに提案しました。

・壁に直接描きたいです。
・階段にスケッチを貼りたいです。
・可愛い報告書という企画をやりたいです。
・当たり付きのランダム部署バッジをやりたいです。
・1500円以上買ったら手描きのカードをプレゼントしたいです。

そんな提案をしたときに使った「個展計画図」がコチラ。

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そのお返事が「ぜんぶやっちゃいましょう!!!」でした。
えええ、いいんですか…?!」って感じでした。こんなに寛大なギャラリーは世界中探してもきのねさんだけだと思います。
普段展示していない壁紙部分にマスキングテープを貼ることを許してくれて、まことさんの手間が増える企画を面白いと言ってくれて、やりたいことを全部させてくれました。感謝しかないです。

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きのねだからこそ実現できた研究所

繰り返し来てくださる方たちのために少しでも変化をつけようと、会期中に壁にも文字や絵もどんどん書き足していきました。毎日進化して、充実していく研究所。黒い壁に金色のペンで書いたので、照明でキラキラ色変わりして綺麗でした。

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ツリーみたいになっているのがランダムの部署バッジ

また¥1500以上のお買い上げで、手描きの「可愛い単語カード」をプレゼントしました。これも一応、小さいけどいっちょまえに原画です。

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手描きなので世界に1枚だけのイラストです

きのねは本当に作家を尊重してくれる素敵なギャラリーです。
私以上にお客さんへ私の作品を熱弁して下さっていました。あらためてお礼を申し上げたいです。記念にツーショットも撮ってもらっちゃいました。

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9日間、しあわせな時間をありがとうございました

個展が「終わる」のをさみしがっていたら助手くんが「個展は終わるんじゃなくて、達成だと思うよ」って言ってくれました。そう思考転換するとなんだかすごいものをやり遂げたような満足感があります。

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それと助手くんがもう一言「もちこ先生が最初から最後までお客さんに満面の笑顔で話していてすごかった」って言ってくれて、初めて自分がずーっとニコニコしていた事に気づきました。
この記事でもここまでに繰り返し「嬉しい」と書いてきましたが、本当に嬉しくて幸せで満たされて、自然と笑顔になってたんだと思います。

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来てくれた方々の笑顔、感動して泣いてくれたあの子、憧れの眼差しを向けてくれたこどもたち、もらった言葉、支えてくれた友達とまことさんと助手くん、この「ありがとう」の気持ちは一生忘れません!
つぎは何年後になるかわからないけれど、また必ずみなさんに恩返しできる機会を作りたいと思っています。これからも応援して頂けるようがんばります!
最後にコチラは、きのねにお礼でプレゼントした展覧会会場のドローイングです。

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本当にありがとうございましたっ。
またどこかでお会いましょう〜。

2021.9.20
あんころもちこ先生



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