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勝敗関係なく“愛されるクラブ” セルジオ越後【前編】H.C.栃木日光アイスバックス シニアディレクター|挑戦のそばに

スポーツはスタンドのためにある。
そこで作られたコミュニティが未来を支える

スポーツに関わる人たちの裏側に迫る『挑戦のそばに』。今回は、セルジオ越後さん。サッカー界のご意見番として歯に衣着せぬ発言で、日本スポーツへの溢れる愛情を示してきたセルジオさん。彼が日本最初のプロアイスホッケーチーム「H.C.栃木日光アイスバックス」のシニアディレクターに就任したのが、2006年8月。以降、広告塔としてイベント出演などの他に、選手やチームに地元とのつながりがどれほど大切か伝え続けてきました。競技を越えて現在の役職についた理由、思い描く未来についてお伺いしました。

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少しずつ一生懸命活動したら、少しずつ周りも応援してくれて15年

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――セルジオ越後さんは2006年8月よりアイスバックスのシニアディレクターを務められています。引き受けられた経緯を教えてください。

知り合いがアイスホッケー好きで、よく見に行っていたんです。ある日、「すごく面白いチームがあるから、一泊二日温泉付きで行かないか」と誘われて。それが一日目が終わったら、「アイスバックスの選手たちと食事をする」と言われてね(笑)。試合を自由席で見たり、募金箱にお金を入れたりしていたら、実はチームがなくなる寸前だと聞いて、何かお手伝いできないかと思ったのがきっかけでした。

――その状況からだと組織の立ち上げなど苦労が絶えなかったのではないですか?

お金もないし、とても大変な状況でしたね。多額の負債を抱えて、中心選手の流出も始まっていました。それでも何人かで会社を立ち上げて動き出すと、支援者も増えてきた。少しずつ一生懸命活動していたら、少しずつ周りも応援してくれるようになって、15年が経ちました。

――PRなど含めて、チームにおけるご自身の役割を教えてください

立場としては、チームにプロ意識を植え付けるのと同時に、精神面も支えなければならないと思っています。広告塔として、スポンサーに賛同してもらったり、地域のための活動も大切。でも、今はマイナス成長期ですから、投資してもらってもあまり宣伝効果はありません。だからこそ、選手やスタッフの意識づけが重要です。利益を目標としない企業スポーツではなく、シビアにクラブチームは利益を出さなければなりません。その分必死さが違うし、試合の工夫や集客方法も他チームと異なる。だから、様々な活動を通して、サポーターに旗を振って応援してもらえるクラブ、子どもたちが憧れるようなクラブを目指そうと言ってきました。

――実際、チームに対してどのように関わっていますか?試合に関してのアドバイスも行うのでしょうか

技術的なことは何も言いません。ヘッドコーチもアシスタントコーチもいるので、トップが口出ししたら組織が崩れるんです。それぞれに責任を分散していて、私は「上手くいっているか」と質問するぐらいで、自分の役割に集中していますが、選手たちの精神的なケアには関わっています。例えば、シーズン前に妻帯者の奥さんたちを集めて食事会をしたり。「これからシーズンが始まって旦那さんは遠征で出ていくから、苦労をかけるけどお願いします」と頭を下げる。そんなチームどこにもないから、すごいと言われますよ(笑)。

――プロ選手の中には練習と普及活動の両立が難しいと主張する選手もいますが、不満など出ませんか?

選手とは契約の段階で、メディアには全て無料出演することを義務付けています。自分を売りに行くのだから、それも仕事の一部だと賛同してもらう。すると、メディアとの距離も縮まる。選手たちは夢を持ってアイスホッケー業界に入ってきてくれるので、周囲を取り巻く環境が充実するとみんなが仕事に面白さを感じて、本当に伸びてくれます。スポンサーやメディア対応もビジネス面ですごく評判が良いので、どこかの企業に引き抜かれないか心配ですね(笑)

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勝っても負けても、“愛されるクラブ”である

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――15年間関わってチーム・地元への思い入れは強くなりましたか?

最初はチームの方向性が定まりませんでしたが、ファンから「チームがなくなったらみんなに会えなくなるから、お願いします」と言われました。そこで初めて、“スポーツはフィールドじゃない”と気付いた。スポーツはスタンドのもので、スタンドのためにスポーツがある。フィールドは選手のため、あるいはきっかけなんです。辞めたら選手によっては町から出ていくけど、スタンドは残る。スタンドで友達になった人が、街に増えていく。それが「地域への貢献」「市民を仲良くさせる」、「憩いの場を作る」ということ。みんな勝ち負けだけを気にするけど違う。スタンドが固まったら、チームは潰れない。それがクラブなんです。

――よく「チームが強くなればファンは来る」と言いますが、最も大切にすべきなのはスタンドでありファンだということですか

“愛される”ということに関して、うちのチームは勝敗関係なく確固たるものがあります。なぜなら、『チームを存続させてファンのみなさんに会う』という理念で活動しているからです。たとえ、負けても一生懸命やっているからこそ、ファンのみなさんは応援してくれる。すると、スタッフも意識が変わって海外に勉強しに行ったり、試合演出も努力する。その結果、お客さんがもっとスタンドに来てくれ、売店の業績もあがる。全てのお客さんが、うちの命。みなさんのおかげで、そういった貢献が地元に対してできていると思っています。

――このアイスバックスというチームのプロジェクトが、今後目指すのは何ですか?

栃木にある複数のスポーツクラブが、全種目ひとつのもとに集まる。みんな同じ色のユニフォームを着て、県民が全種目を応援するような文化が作れると嬉しいですね。今日本にあるのは種目文化で、他のスポーツと一緒にはやらない。企業チームだから他の企業は応援しない。学校でやるけど地域でやらない。あのスポンサーを奪いに来たんじゃないか、とみんなが敵になっている。県のアイデンティティをスポーツが壊す結果になるんです。そうじゃなくて、競技が違っても県民が同じ色のユニフォームを着ていたら、共通の話ができる。栃木県民は餃子とイチゴだけに誇りを持っているって言われるけど、栃木はそれだけじゃない。自分の住むところをよくすれば自分も得する。そのお手伝いをクラブが行う、そんなアイデンティティを確立したいですね。

――地元でコミュニティを作る手伝いをスポーツクラブがするということですね

栃木はいいところがいっぱいあるんですよ、バスケもあるしサッカーもあるし。アイスホッケーも自転車もある。県民の興味が全種目に渡れば、新聞はもっと売れるし、ブランドにもなって、みんなも嬉しい。栃木県が日本で初めてスポーツでひとつにまとまった県になると面白いんじゃないかな。そういう仕組みがスペインのバルセロナにもあるし、それが本当のスポーツクラブだと思う。人口が減っていく高齢化社会においては、スポーツで人と交流する対策が必要だと思っています。

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➡後編に続く

<取材:2019年11月>
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