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ひたすら同じ過去問を解けば100点を取れるのは当たり前。性行為での及第点とは?

唐突だけど、元彼は性行為が下手だった。と今なら思う。もちろん当時は知らなかった。


私には最後まで関係を持った男性は元彼と夫の2人しか居なくて、そこを比べることしかできないけど、その数少ない経験を持ってしても、(少なくとも)夫より元彼の方が下手だったと思う。

ちなみに、サイズ感って比べてどうだった?と夫に聞かれたことがあるんだけど、それは本当に同じくらいで「変わらない。同じくらい。」と答えたら不服そうにしていた。正解のある問いだったようだ。

元彼とは中学1年で付き合いはじめたから当然童貞&処女だったので、私は「大人たちの頭を狂わせている性行為とは、こんなものなのか」とか「世の中性欲で色々な事件が起きるほどみんなが取り憑かれる性行為を好きになれないなんて、私の体がおかしいのか」と思いながら、実際に性行為の良さ?みたいなものの核心に触れることが無いまま、とうとう元彼とは10年間付き合った。

ちなみに彼との10年で性行為そのものはあまり好きにはなれなかったものの、元彼の性欲の矛先に10年間選ばれ続けた、というのは私のアイデンティティを形成する上でポイントになったと思う。彼にとっていつでも触れたくなるような、「彼にとっては魅力的な女性のまま過ごせた10年」というあの歳月がなければ、もっと私は卑屈だったと思うから。

思春期前から付き合いはじめて、その後思春期を一緒に越えて大人になってきたというのもあるのだろうけど、元彼は常にやる気満々だった。

ちょっとの時間があればいつでもインスタントに挿入したがったし、ちょっとでもできそうならどこでも求められた。高校くらいになったとき性行為を断って大喧嘩になり、もう一人でどうにかしてよ、と言ったら、彼は恥ずかしそうに「実は自慰行為を覚えるより先に私と性行為をした」のだと言った。だから彼にとっての衝撃の性体験デビューは自身によっての開発ではなく愛のある共同作業で、性欲を一人で発散させるというのは前提としてない。自慰行為はとても寂しくなるから嫌なんだと。

たしかに性行為自体のテクニックは彼にも、そして私にもなかったと今は思う。なにせ教科書や経験のない状態ではじまったままその関係が継続されているものだから、彼がしたくなったらハイ!今!開いて入れて終わり!みたいなかなりスピード感ある内容だったし、私はそれを性行為だと思っていたし。

だけど彼なりにどこからか(きっと動画なんだろうけど)色々と調べては新しい知識を持込み工夫を凝らそうとはしていて、服を変え小物を変え髪型を変え、シチュエーションを変え、ロケーションを変え…。お互い根本的なテクニックが足りないのにもかかわらず、なんやかんやで10年も性行為を同じ間柄で続けることができた。

それは元彼の好奇心とその工夫のおかげだと言えるかもしれない。ちなみになぜかスクール水着+ルーズソックスという組み合わせにえらく興奮していたなぁ。あとバイト先で実際に着ていた本物のナース服。ナース服にもルーズソックス履かされたけど、よく考えるとその組み合わせはさすがに謎である。

おもちゃにも挑戦したいんだと熱く語っていたけど、それだけは怖いからイヤ!と断っているうちに別れた。彼は私と別れたあとおもちゃに挑戦できたのだろうか…

別れたのは22歳、お互い社会人になり、お金の価値観の違いや仕事に対しての考え方などですれ違うことが増えていった。一緒に住もう、一緒に住んだら毎日たくさんエッチしよう、毎日俺が選んだ下着を付けてね、なんて言いながら、次第に顔を合わせてもイライラして喧嘩ばっかりになり、職場での人間関係が楽しくて仕方ない私が外出しないように縛る言葉が増えていった。

職場の仲が良いグループには今の夫もいて、仕事ができてかっこよくて、大人の振る舞いをする夫を好きになった。元彼に別れを切り出した。

夫とは付き合いはじめて2回目のデートでホテルに行った。どうしよう、私大丈夫かなと不安になりながらも、どこか冷静に、なるほど、大人というのは2回目でホテルに行くものなのだな、とよくわからない分析をしていた。多分違う。

そして、私の体を知り尽くした人以外に裸を見せるということは、ものすごく緊張するんだということを知った

ホテルについてしばらくはソファでダラダラと話して、なんとなくいい雰囲気になった時に夫が腕時計を外しガラスのテーブルに置いて、テレビを消した。あーこれから始まるんだなとボケボケしながらもその仕草がめちゃくちゃスマートに見えて目眩がしそうだった。くらくらした。私にとってはその瞬間を今でもたまに夢に見るくらい印象的なシーンだ。

夫は私をお姫様抱っこでベッドまで運んでくれて、恥ずかしかったら真っ暗にすること、嫌だったら別に今日はしなくても良いことなんかを伝えてくれた。

スピード感ある性行為しかしてこなかった・知らなかった私は元彼とホテルに行くなんて本当に数えるほどしかなくて、それも別にまったり性行為をしたというよりはフリータイムの間に何回できるかみたいな彼のギネス記録を更新しにいくようなものだったので(そして私の股が痛くなってもうしたくないと私が泣いてこのチャレンジは終わる)、「この人は今日何回するんだろう?」と呑気に構えていた。
今考えると元彼とホテルに行くのはある意味試合だったよなと思う。

で、夫と実際に行為がはじまって、22年間の常識がひっくり返された。男の人って挿れる前にこんなに女性を丁寧に触るのか、そりゃあ好きな相手にこんなに丁寧に触れられたら、世の中みんなこんなことすきに決まってるよな、とようやく10年来の疑問に合点がいった瞬間だった。

「こんな風に触れられたのははじめてです」と伝えたら、俺は一球入魂タイプだから!と言われて、もしかして一回だけで終わるのかもしれないなと察したりなどした。

はじめては私が緊張しすぎて上手く力を抜くことができずに結果あんまり上手くできなかったんだけど、それでもその一回で終わりだった。(ほんとうに一回で終わった!)と思った。それでもふと時計をみるとかなり時間が経っていて、「休憩2時間」がタイムトライアルじゃなくて本当はどういう意味かを知った

別日のデートでまたホテルに行った時は緊張しすぎることもなくスムーズだった様に思う。やっぱり夫は時計をはずしてテレビを消した。前回よりも少し部屋が明るかった。
彼はワックスコードを編んだネックレスをしていて、脱いでもネックレスは外さないんだなぁと思いながら、自分の顔の上で揺れるネックレスがなんだかめちゃくちゃ色っぽいアイテムに感じた。今でもたまにネックレス付けてくれんかなと思うことがある。

緊張が抜けたからか、この日はかなり実感を持ってして夫との性行為を行っていたので、この丁寧さこれこそが性行為がうまいということなんだなぁと思っていた。

そして、そんな夫と2年付き合って1年同棲して結婚した。結婚してからは1年が経った。

夫の性行為は相変わらず丁寧だけど、同棲してから気づいたのは、彼の行為のパターンは決まっていて、そこにこれ以上良くするには?といった工夫はない。多分元カノたちとも同じ流れてしてたんだろうと想像している。経験何人かは未だに教えてくれないけど。

元彼は前述の通りテクニックはなかったけど、常に新しいことにチャレンジしていた。だから飽きなかった。夫は丁寧で上手かもしれないけど、ワンパターンではある。

元彼は、いつも新しい問題を果敢に持ってきては赤点をとり、それでいて見直しもせずに次の問題に取り掛かるタイプで、夫は同じ問題を何度も解き直して100点を安定して取れるようになっていったのだろうと予想している。

妻的な立場で言うと、まぁ確かに毎回赤点は嫌なんだけど、一つの過去問で何度も100点を取り続けることより、60~70点くらいでいいから何種類も及第点を取れるパターンを持っていてほしいなぁと思う。今日は数A?それとも世界史?英語?と選びたい。このまま死ぬまで同じテストを彼は解き続けるのだろうか…?と不思議な気持ちになったりもする。夫は飽きないのかな…?

以前、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」を買った。パターンに変化がつかないなら私が工夫を持ち込もうと思ってのことだったんだけど、どちらかというと男性へ指南する感じの印象を受ける内容になっていた。(もちろんタメになる情報もたくさんありました!)

女性を絶頂に導く触り方なども載っていたので、ぜひ男性には読んで実践した上でレポートにして提出して欲しい。


夫にそれとなく「こないだ女医が教える本当に気持ちのいいセックスを買ったんだけど、どちらかというと男性向けの内容だったよ、読んでみて~」と言ったのだけど、今の所まだ読んだ形跡はない。

私が付き合って初期に「あなたは本当に上手、こんな風になるのははじめてだ」と伝えまくってしまったせいで彼の向上心は死んだのかもしれない。多分夫は、自分の性欲が弱いことはさておき、内容を改善すべき余地があるなんてことは夢にも思っていないのだろう。

そこまで性欲の強くない夫に寂しさを感じ、元彼の性欲の強さをふと思い出す時、彼とあのまま付き合い続けてたらどんな経験が待ってたんだろうかと思うことがある。おもちゃに挑戦するのも頑なに断っていたけど、一生、当たり障りのない性行為を、夫の少ない性欲が溜まるのを待って続けて行くと思うと、一回くらい経験しておけばよかったかもしれないなと思う。

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