湖の乙女〔読み物100〕


剣の名はカリブルヌス。
かつて岩から引き抜かれた。
かねてより、岩の剣を引き抜くことが出来た者はイングランドの王であるといわれていた。
少年は王となった。

王といっても少年である。
やっと青年期に片足を突っ込んだばかり。
あるとき老練なるペリノア王に挑み、一敗地にまみれた。
若い王は敗北を認めたくないあまりペリノア王の武勇を称えず、あろうことかカリブルヌス、王者の剣を抜き放ってしまった。
ところがだ。
私欲によって抜かれた剣は王の剣であることを止め、たった一撃の打ち合いで砕けてしまったのだった。


でもって私はニムエ。
湖底から浮上して、反省したアーサー王に、第二の剣エクスカリバーを捧げなければならない役割だ。
けれど待ってる間に、髪が湖底の藻に絡まってしまった。
小舟はきている。
上がらねば。
上が、
れない、
困った、


湖上では王の舟が待っている。
ただ待っている。

それでも地球は回っている