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組織であること、人と人が対等であること

 久しぶりに安斎さん主宰のサードプレイスラボに参加してきました。テーマは「女性経営者が語る!成功するためのチームビルディング」。ゲストスピーカーは前川弘美さん。前川さんは長岡商事の代表取締役社長として「下町バルながおか屋」などを経営しています。そんな前川さんが捉えているチームビルディングとは?

 長岡商事はいわゆる同族経営会社のようなもので、実は私はこの同族経営(一族経営)のような形態はあまり評価してないです。そういうイメージはいまだに変わらないと言えば変わらないのですが、長岡商事の前川さんは「よくある」一族経営会社の社長というイメージとは真逆です。ファッションデザイナーから出版社編集を経て長岡商事に入社し、店舗経営を経て社長へという経歴で、これだけ見ると同族というだけで異業種から横入りして社長に納まったように見えます。しかし、この経験がない(か経験が薄い)ところへ横入りして組織を率いるのは同族であろうがなかろうが結構大変です。まず組織内の部下から敵視されたりしますしね。

 そこで前川さんがやったことは、挨拶、笑顔、小さなミーティング。極端な話それだけといえばそれだけなのですが、ここでキーになるのは「対等」というワードだと感じました。そう、上司部下や先輩後輩でなく「対等」な人間として接する。こういうスタンスは最新の組織論などでは顔を出すこともありますが、前川さんは徹底していて、組織内だけでなく「店のスタッフと訪れた客」であっても対等に捉えます。物事を推進していく際はしばしば牽引役が必要になるわけですが、社内外、客から取引先まで「対等」というスタンスで捉えていく人はとても少ないと思います。挨拶、笑顔、ミーティングという3点、形式はいくらでも真似できそうなものですが、形式だけ真似ても意味がなく、本質の部分で軸をどこに置いているのか、つまりハートの部分が重要なはずです。それを前川さんは実践されています。人材採用も根本はハートの部分で「お互いに」良い受け取り方ができている状態が重視されているようです。ビジョン、ミッションを共有できる人を採る、ということですね。

 今回のサードプレイスラボには某大学の学生さんも数人参加されていて、ベンチャー企業研究(?)をテーマとした講義を受けている学生さん達なのですが、懇親会の席でいろいろとお話をさせて頂きました。学生といえどいろいろ考えたりしています。変な意識高い系というわけでもなく、仕事という物事に対してのスタンスも様々です。これから社会に出て、あるいは起業をし、あるいはベンチャーに入り、あるいは大手企業で活躍しと多くの選択肢の中から様々な選択をしていくと思います。属する組織はどのような組織が理想なのかということを考える際、前川さんのトークはいろいろ参考になるところが多かったのではないかと思います。

 組織、ビジネスというとテクニカルな話が多くなりがちです。また、ミッションやビジョンだけはやたら高尚で実態がまるで駄目な状態であったりすることもしばしばです。長岡商事という会社がどのような会社かはオフィシャルサイトを見ればある程度わかるのですが、長岡商事(前川さん)の「人を幸せにする」という言葉や「人と人とのつながりを大切に」という言葉もワーディングとしてはいろいろな企業や組織で使われる言葉でもあります。この言葉が文字通りの意味であり基本的に嘘がないと判断できるかは前川さん自身に会えばわかるのですが、会わなくても実はサイトの中にヒントが埋まっていたりします。「バブルが終わった後の大仕掛けな店作りは、遅過ぎたのか、早過ぎたか・・この大きな損失で会社が窮地に。」「全ての店舗の業績が悪くなり、起死回生を狙ってオープン。」「あの頃をもう一度、とあいうえおの名前を使うが、業態的に中途半端に。」この言葉、企業沿革の中にそのまま書かれています。普通は書きませんよ、こういうこと。取引先やこれから入ってくるかもしれない求人希望者、客に対して丸見えである沿革情報にこういうことが書けるということそれ自体、企業としての姿勢、前川さんが掲げている言葉に対する姿勢が見えます。

 チームビルディングというといわゆる組織「論」をイメージしがちですが(実際に私もそうでしたし)、根本のところで人と人が集まって組織という概念が実体化するわけですから、ロジカルな部分だけでなく根本のところでハートが大事だと改めて考えさせられました。人は感情を持っているからこそ疎かにしてはいけない要素です。ティール組織などの本でも組織改善前の状態でいかに自尊心を損なわれていた状態だったかが振り返りの形でいくつも事例として出てくるわけですが、頭でっかちに考えずにまずは感情に寄り添ってみてはどうかと思いました。

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