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タイガー戦車とぼく

以前もちょこっと触れたが、僕が戦車模型を作り始めた頃にちょうどタミヤのタイガーⅠ型後期生産型が発売された。連結式の履帯が最初からキットに入っており、各パーツの造形や彫刻などは「新世代の模型」に相応しいキットだった。いや、僕は若すぎてそこまで感動を覚える事が出来ず「うわーコーティング無理―」ってなってたわけだが。

僕がまともに「タミヤのタイガー」に向き合えたのはツィンメリットコーティングのいらない初期型が出てからだった。タミヤニュースに踊る悪魔の倒福タイガーの記事が掲載され、それを参考に再現した記憶がある。純正のエッチングパーツの発売も有難かった。当時はショーモデリングぐらいしかなかった時代だし、田舎者としてはそこらで買えるものでもなかったのだ。そうそう、タミヤの塗装指示だとダークイエローとダークグリーンの二色迷彩だったけど模型誌作例では通常の三色迷彩で仕上げられる事が多くて戸惑った記憶も懐かしい。

しかしその後しばらくタイガーからは離れる事になる。その頃にはエッチングパーツだけではなく可動履帯やらアルミ挽物砲身などディテールアップパーツも増えていき、人気車輛であるが故に「考証」という言葉が重く伸し掛かってきた。後期型作るんだったら誘導輪が小型のほうが一般的だとか、履帯のセンターガイドは空いてなきゃねっていうやつ。

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コーティングも実物はローラーを使って施されていたという事実が出てきて従来のラッカーパテ+マイナスドライバーという技法は遥か記憶の彼方に過ぎ去っていき、コーティングブレードやコーティングシート、キットの状態で再現済みなど、色々な技法やアイテムも生まれていく。上の後期型はタミヤ縛りで敢えてコーティングブレードを使っている。ポリパテ分重くなっているのが実物と同様で面白い。

趣味でタイガーを作る事がなくなったが、雑誌作例ではそうはいかない。実は何気にタミヤ製タイガーは作例で3作ほど担当している。上記のポリパテツィンメリットコーティングの後期型と初期型、極初期型の三つだ。勿論ドラゴン製も担当したことがあるのでガルパン版を含めたら雑誌作例で6作ぐらい作ってるな。

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特にこの極初期型は「なるべく実車に近づけてね」という依頼だったので写真が多く残されている121号車を選びつつアフターパーツは極力使わないという不思議な作例となっており、印象深い。個人的には気に入っているタイガー作品なのだ。

そんなこんなで今回久しぶりに趣味でタイガーIを作ってみた。いや、今はティーガーと呼んでる事が多いのでここからはティーガーにする。今ならドラゴンだけではなくライフィールドなどの新興勢力の新ティーガーキットもあるが、やっぱりタミヤのティーガーは好きなんだよなあ。

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第502重戦車大隊の213号車といえばオットー・カリウス。マリナーファの戦いやナルヴァの戦いではないところでカリウス車を作る辺りが「コーティングめんどくさい勢」としての意思表明が強いところではある(謎。まあ、今回はカリウス車を作るんじゃなくてダークイエロー単色のティーガーが作りたかったというのが目的なんだけどね。

今回この初期型を作ってみて改めて「タミヤのティーガーは面白いなあ」と思った。いたずらにパーツ数を増やす事もなく(これは今でも同じスタンスだと思う)、戦車のカタチがすぐに出来る。めんどくさい足周りも実車通りなのは当たり前だが、全て履帯が覆い隠してくれる。初期型は転輪が多いので履帯のセンターガイドがあまり見えないのも嬉しい。大元の後期型は1989年発売なわけだから型式を替えつつも基本設計は当初からは大きく変わっていない。32年前の設計のキットとは思えない。

あとはなんか一回りして大人になったのか、有名車輛だから気合いを入れて作らなきゃいけないぞっていう気負うものが減った気もする。適当でいいとか雑でいいっていうわけじゃなく、キットの味をいい塩梅で生かす事が出来るようになったんじゃないかと思うのだ。

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排気管カバーもフェンダーもエッチングパーツに置き換えたり銅板で自作しなきゃいけないと思っていた頃が懐かしい。OVMクランプだってアベールやパッションモデルズのエッチングパーツや3Dプリントパーツがあるわけだが伸ばしランナーをプライヤーで潰してコの字に曲げた板材で再現する。解像度を上げすぎないのも大切だ。

「ドイツ軍最強のティーガー戦車を作る」んじゃなくて「タミヤのタイガー戦車のプラモデルを作る」っていうスタンスで挑んでいるのが気負わず作れてる事なのかなあとぼんやり思う。まだまだ「タミヤのタイガー」はたくさん作りたいなあ。■

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