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模型に罪はない。

さて世界は大変な事になってしまった。

僕の趣味は敢えて書かなくても分かると思うんだが「戦争に使われていた兵器の模型」を作っている。冷静に考えなくても因果な趣味だ。これまでは「これは実際にあった戦争や現在進行形で使われている兵器なんだよね。でも模型だし。プラモデルだし」という割り切りをしてきた。

しかし今まさに行われているウクライナの戦いは一概にそんな単純な言葉で切り捨てる事が出来ない。我々ミリタリーモデラーには切っては切れない話なのだ。ウクライナにも模型メーカーはたくさんあり、ロシアにも模型メーカーはある。このまま戦乱が続けばウクライナのメーカーは存続の危機に立たされるだろう。ロシアのメーカーだってそうだ。輸出が出来なくなる可能性も大きい。既に弊害は出ている。

現地から遠く離れた島国で「新しいキットが買えないよー」と嘆いている話をしているのではない。改めて「因果な趣味」であることを自覚しているわけだ。僕のメインジャンルは第二次世界大戦で使われていた兵器なのだが、80年前にナチスドイツに蹂躙されてきた国々の事を常に思って模型を作っているわけではない。とはいえ時々冷静になったりはする。80年前の歴史を知りつつも「Ⅳ号戦車かっこいいなー」と思いながら模型を作っているのは変えようのない事実だ。

では今デジタル迷彩のフランカーで「キエフの亡霊」を作るのかといったら作れない。ハケで大きく「Z」と描かれたロシア軍車輛を作れるかというと作れない。毎日開くTwitterに届けられる彼の地の惨状を見ている以上スメルチカッコイイとか言えない。ムーリヤの模型を持っていたら作ってるかもだが。

80年前の戦争とまさに今現在進行形で行なわれている戦争はモデラー的に見て何が違うか?実はよく理解出来ていない。ナチスドイツの戦車を作るのが良くて現用ロシア軍の戦車がダメなんて事はない。無論「過去の歴史」と「今の話」という大きな違いはあるが、兵器の役割とそれが引き起こしている事案は大きく変わらない筈だ。勿論あまり好きな言葉ではないが「世間体」というものは存在しているし理解はしているつもりだ。あの人戦車のプラモデルばかり作ってる…なんて後ろ指は差された事はないが、平時ならそこまで言われないだろう。ただ今はそうじゃないんだろうなとは思う。

僕はこういう事に関してはそれなりにメンタルが弱い。考え込んでしまって手が止まる事も多い。兵器のプラモデルなんてのは平和だからこそ出来る趣味であるし、産業なんだなと思う。ただ僕らはこの大儀なき戦争が早く終わり、平和が訪れるのを待つしかない。その時に改めてこの戦いの模型を作るかどうか考えたいところだ。模型に罪はない。いつもより意識しながら今日も戦車模型を作る。■

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