ボクが漫画を読まない理由

【転載】この記事は、2016年12月30日にnoteにて公開した記事です。2017年2月11日から一旦Mediumに移していたため、投稿日時がズレています。また、文脈を整えるため一部加筆修正を行なっています。内容は当時のものであり、現状と異なる可能性があります。

1. はじめに

12月29日に、コミックマーケット91に一般参加として色々と買い漁りに行った。

コミックマーケットに限らず、こういった即売会は、いくら規模が小さくても、「端から端まで全部1つずつください!」と言えるほどの規模ではない。中には言える人もいるのだろうが、少なくとも私はそんなことできない。

つまり、事前のサークルチェックを行わないと上手くいかないことがほとんどだ。というか、サークルチェックをしていたとしても上手くいかなくなることだって少なくない。

今回C91のサークルチェックには、今年の多忙さもありほとんどと言っていいほど時間がかけられず、それ故終わってから様々なことが思い返された。そのうちの一つ、『僕はなぜ商業漫画を読まないのだろうか?』ということについて考え、発展させてこの記事の結論を導き出した。

2. 前提

僕は基本的に、自発的に漫画を読もうとしない。小学生の頃は、放課後に『学校内学童保育』的なハコにいた。そこでは、エアコンは効いている、本はある、ビデオはある、といった、夏にはオアシスのような環境があった。当時はまだ今のような多忙さはなく、むしろ時間を持て余すような有様だった。置いてある本は、ほとんどが漫画で、そこでは専ら漫画を読む日々だった。

同人界隈は漫画に限らず、学術誌からグッズまで様々だが、ひとまずこの記事で出てくる"同人誌"という単語は、全て漫画作品を指すこととする。

3. 現状

だが、今は特に『漫画を読みたい!』とも思わない。コミケを始めとする即売会(コミケ以外だと僕ラブに1度行った程度だが)では漫画を買うのに。もちろん、商業と同人では体裁が全然異なるという指摘はごもっともだが、私は別のところに理由があると考えている。

ぶっちゃけ、商業作品の方がコスト対クオリティの面では優位だ。立場を変えれば『同人誌はコスパが悪い』。だが私は商業漫画を買ったことは僅かに1度きりだ。言っておくが、その1度がトラウマなわけではない。では、なぜ同人誌は買うのに商業漫画を買わないのだろうか。

4. Answer.

理由はいくつか考えられたので、一つ一つ説明しよう。

まず1つ目。『柵(しがらみ)が無い』。各々が様々な工夫を凝らす。本の商業作品には必ず付いて回る"余計な"縛りが無い。だから自由な工夫を凝らしている。その中には、装いで例えれば紙に色がうっすら付いているもの、表紙がキラキラと輝くものなど、実に様々だ。内容にも表現に工夫を凝らす。僕はこういった自由な工夫の中から、"何かを感じる"ものを探しているのかもしれない。

2つ目。『選択の幅が広い』。即売会では様々なサークルが出展する。当然バリエーションも多い。テーマを1つに絞ったって、シリアス本やギャグ本、あるいはイラスト本など、バリエーションに幅が出てくる。

3つ目。『レアリティ』。商業作品は、それが独自のものとして展開される(アンソロジーとかもあるけど、あれを主流と呼ぶのは難しい気がする)。だが、同人誌は二次創作がかなりの部分を占める。ある原作があって、それを好きな人が、好きなように工夫を凝らし、その人のマスターピースとして出す。その作品は、二次創作である限り世に出回るのは商業作品ほど多くは無い。どんなに優れた作品であっても、だ。ゲーム的に言えば『レア度が高い』。

あくまで即売会でのお話を並べてみたが、これだけでは商業漫画を買わない理由にはならないので、他の理由を探ってみる。

まず、商業漫画は誰もが知っている有名作を含む。つまり『レア度は低い』。リスクヘッジの観点から言えば、読んでおかないと誰かとの会話で話を振られて「えーそんなことも知らないの!?」と言われるかもしれないが。うん、古傷を抉りまくってるから話を進めよう。

つまり、どんな良作であったとしても、普遍的すぎて相対的に高い価値を感じない。無論『凄いなぁ』と思うことはあるが、それがあったとしても商業作品の縛り等が絡んできて、僕にはつまらなく映ってしまう。

また、コスト面の問題もある。先述したように『同人誌はコスパが悪い』が、観点を変えて『商業漫画はコスパが良い』と言えるかどうか。答えは否だと思う。確かに同人誌よりかはコスパが良いのだろうが、そもそも漫画の時点でコスパはかなり悪い。

というのも、漫画は二次元的・グラフィカルに表現するので、文字の行列・リニアに表現する小説や論説本よりもスペースを多く取る。もちろんその分の表現効果は出るのだろうが、問題はスピードだ。漫画はすぐに1冊読み切ってしまうのだ。

つまり、商業漫画で常に新しいものを欲するなら、小説等に比べて莫大な資金が必要になってしまう。また、棚のスペースも作らなくてはならない。空間的にもコスパが悪いのだ。

5. まとめ

同人誌には『自由な工夫』があり、『様々な描かれ方』があり、レア度が高い『1つのマスターピース』である。

対して商業漫画は『相対的価値が高く見えない』、『つまらなく見える』。

また、漫画自体が『資金的・空間的にコスパが悪い』。

これらが、僕が普段漫画を読まない理由だと考えられる。他にも『多忙』とかも関連があるかもしれないが、それは僕の問題であって漫画の要素には絡まないので割愛。

あと、別に商業漫画をdisりたい訳でも無いので悪しからず。

6. リグレット(おまけ)

C89から、比村乳業が超効率化された高速頒布を行なっている。

【動画】YouTubeに投稿された、C90比村乳業の高速頒布の様子(削除済)

この高速頒布は、C90でも同様に実施され、超効率化がなされているのが伺える。C91でも実施されるようだ(リンク)。

だが、これには懐疑的、あるいは批判的な意見も見られた。『即売会の意義を認識していない』といったものだ。

『即売会は作者と交流ができるからこそ意義があるのに』といった意見をどこかで見た気がする。作者間交流は隣とかだったりするとそれなりにできるだろうが、壁サークルなどの人気サークルは、交流に時間を割けるほど暇はない。せいぜい完売後にできるぐらいなのではないだろうか。

もしそれが本来の意義なのであれば、僕自身が既に交流をできていないため、意義に反してしまっていることになる。もちろん、交流ができて、好きなその作品に対して語り合って。そうなれば確かに良いのだろうが、冗談抜きに友人が両手の指の数ほどもいない身にとって、新たに踏み込むのはかなり苦しいのだ。意義に反してしまったのか、それは自由で良いんだとされるのか。どちらにせよ、後悔は消せはしない。

余談だが、大学では社会学部に属しているため、社会問題がよく取り上げられる(自発的に取り上げたりもするが)。この超効率化された高速頒布は、さながら機械化された工場のようで、だが動いているのも動かされているのも、生身の人間だ。そんな観点からも、非常に興味深いと思った。

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